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前澤友作さん館山市20億円寄付報道の考察。なぜサンスポのスクープなのか?


ネット衣料通販「ZOZO」創業者の前澤友作さんが、台風で大きな被害を受けた千葉県館山市になんと20億円を寄付したと、25日から各メディアで報じられました。

これは本当にすごいですね、非常に感銘を受けました。なかなかできることではないですよね。

このニュース、館山市役所が発表して記事になったのかな、と最初は思いました。

ところが、きっかけは「サンケイスポーツ」25日朝刊のスクープ記事だったんですね。

地元・千葉にいる記者ではなく、在京のスポーツ記者が書いちゃう。

地方記者の経験も長かった私としては、「これは地元記者はたまらんな」と少し驚きました。

新聞記者時代、上司のデスクは「記者が(自分の担当で)知らないのは犯罪」と言ってましたから。

そこで今回の報道について、少し考察してみます。

 

「前澤さん館山市へ20億円」報道、12月25日の時系列

まずは報道や発表の流れをざっとみておきましょう。

・12月25日付朝刊 サンケイスポーツ裏一面にスクープ記事が掲載

・午前5時 サンスポドットコムが「前澤友作サンタ20億円」記事をアップ

・午前中 東スポ、日刊スポーツ、デイリーなどがネットニュースで追報

・午前11時ごろ 朝日、共同などがニュース配信

・午前11:59 前澤さん、ツイッターで寄付について公表

・正午前後 館山市役所フェイスブックで公表(前澤さんツイートとほぼ同時)

・12時19分 千葉日報オンラインで配信

 

サンスポの見事なスクープでした。

新聞の朝刊スクープ記事を、午前5時ごろにネットに出すのはよくあるパターンですね。

記事を見たライバル社の記者たちは、慌てて追っかけ取材に走らされたことでしょう。

そして正午ごろ、前澤さんはツイッターでサンスポドットコムの記事を引用する形で公表しました。

 

他のメディアと比べ対照的なのが、千葉日報。地元ネタなのに、記事配信が遅いです。

夕刊発行している新聞なら動きが早いのですが、朝刊のみの地方紙はのんびりしているんです。

 

なぜサンスポがスクープ?想定される3つのケース

このスクープ記事にショックを受けた同業他社は、2種類あります。

・ライバルのスポーツ紙

・千葉の新聞テレビ

これはね、地元の新聞テレビ記者にとっては屈辱的です。

地元・館山市にまつわる大きな動きを、地元記者が事前にキャッチできなかったのは、痛いですね。

「前澤さんなんて知りませんよ」と言っても、ただの言い訳になってしまいます。

今回のサンスポ記事、情報源が前澤さんであることははっきりしています。館山市ではない。

どうしてサンスポにだけ情報が流れたのか?以下3つのケースが想定されます。

 

①前澤氏からの意図的なリーク

前澤さんが、何らかの意図を持って、サンスポにこっそり「20億円、館山に寄付するよ」とリークした、という可能性です。

ただ、このケースでは「なんでわざわざサンスポなの?」という疑問がわくんですよね。

産経グループは比較的、ネットニュースに力を入れていますから、「ネットで話題にしてくれそう」と考えたか。

とは言っても、他社もそう大して変わらないと思うんですよね。

大企業が、日経新聞ファーストでリークすることはよくある話。これはビジネス界における影響力が他のメディアと差があるからです。

でも今回、意図的にサンスポにリークする理由が見当たりません。

 

②サンスポ記者の取材努力の賜物

もしかしたら、サンスポの記者が前々から前澤さんを積極的に取材し、深い関係を築けていたのかもしれません。

それで、前澤さんから「この人なら」という信頼を得ていたため、事前に教えてもらえたというケース。

これは考えられるかもしれません。

あるいは、サンスポ記者が、

「前澤さんはお正月に1億円お年玉企画をツイッターでやった。クリスマスにもプレゼント企画があるのではないか?」

という仮説を立て、前澤さん側に取材でアタックを試みた。

すると聞かれた前澤さんは、隠す必要もないから「こんなプレゼントするよ」と回答した、というパターン。

これも記者として立派な取材努力ですね。

 

③たまたま偶然

たまたま偶然、今回の寄付をサンスポ記者が知ってしまった、というパターン。

例えば、24日にサンスポ記者が前澤さんにたまたま接触した。

その際、たまたま前澤さんは何の気なしに「こんな寄付したよ」とぽろっと話をした。

こういう運の強い記者っているものです。

まあ、運も実力のうちというやつでしょうか。

 

地方自治体から報道各社への情報提供の流れ

館山市役所には早朝から、報道各社から問い合わせが殺到したことでしょう。

そして館山市役所は25日午前、「報道各社に一斉ファクスした」とされています。

・・・報道各社とはどこか?

基本的には、「その市役所の記者クラブに籍を置く新聞社・テレビ局」です。

市役所の広報は、常に地元のマスコミ記者と接点を持っています。これは全国どの市役所でも同様です。

では、館山市にはどれくらいの新聞社・テレビ局が存在するのか?調べてみました。

iタウンページによると、館山市内に拠点を置く新聞社は4件のみ。

・朝日新聞社/館山支局

・千葉日報社館山・鴨川支局

・読売新聞社/館山通信部

・房州日日新聞社

(ちなみに、スポーツ新聞が地方都市の記者クラブに籍を置くことはまずありません)

そして、館山市の放送局(テレビ・ラジオ)を調べてみましたが、「ゼロ」という結果でした!

地元に記者がいない市町村は多数あります。館山市には朝日や読売の記者がいますから、まだ良い方です。

では、館山市役所が連絡をしたのは、上記4社だけだったのか?というと違います。

この場合、考えられるのは

・近隣の拠点都市(木更津?)にいる記者に連絡をした

・県庁所在地(千葉市)の記者に連絡をした

のいずれかです。

市役所から発表がある時、どこに連絡をするか?については、各報道機関と事前に取り決めがされています。

県庁所在地にしか基本、記者を置かない

・共同通信

・時事通信

・日本経済新聞

は、千葉市にいる記者がファクスを受けたはずです。

その他、NHKや産経新聞あたりも、千葉市の記者が連絡を受けた可能性が高そうです。

上記以外の千葉に拠点を置かないメディア(スポーツ紙やネットニュースなど)は、まず電話で市役所に問い合わせ。

そして「発表文をファクスでください!」と頼み、送ってもらったはずです。

 

館山市の報道発表全文

館山市が12月25日午前、各社にファクスした全文は以下の通りです。

 昨日(令和元年12月24日)、(株)スタートトゥデイ代表取締役社長の前澤友作氏から館山市へふるさと納税により多額のご寄附をいただきました。

 ご寄附いただいた金額は20億円です。

 前澤氏からは、令和元年9月30日に台風15号により被災した館山市含め周辺3市1町に対し、台風災害の復旧・復興に向け各自治体1,000万円のご寄附をいただいておりましたが、今回さらにふるさと納税により館山市にご寄附をいただきました。

 前澤氏は「館山市は地域資源が豊富で高いポテンシャルがあると感じております。館山市の地域活性に向け、ふるさと納税を活用し応援したいです。」とコメントを頂きました。

 館山市長は「館山市の今後の地域振興のために大変ありがたい。今後、有効活用を検討していきたい」と感謝しています。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191225-00000003-tospoweb-ent
より引用

 

今回の事案が大きなニュースになった理由

地方では、たまに地元の資産家が地元の市役所などに1億円を寄付するといったニュースはあるにはあります。

しかし、今回の前澤さんの20億円は全国の新聞テレビで報道される大ニュースとなりました。

その理由は以下の2点にあります。

 

①台風被害の支援という大義名分

これが大きいです。新聞テレビといった一般メディアでも大きなニュースとして扱いました。

今年1月、前澤さんはツイッターでフォローした人に対して100万円を配る、というお年玉企画を実施しました。

これはネットの中では大きな話題となりました。しかし、新聞テレビの報道で取り上げられることは今回ほどなかったと思います。

その行為には、社会性が乏しかったからです。

しかし今回は、台風被害への支援という、大義名分があります。これには大きな社会的な意義があります。

だから、新聞テレビも報道で取り上げる必然性が生まれたのです。

 

②20億円という金額のインパクト

台風被害の支援という大義名分は素晴らしいですが、「20億」という金額は前代未聞でした。

私も記者時代からたくさんの寄付案件を記事にしたことがありますが、こんな額の寄付は聞いたことがありません。

だから、20億円というだけでも、大きなニュースバリューがあります。

 

③前澤さんのネームバリュー

いうまでもなく、前澤さんのネームバリューが大きかったのは間違いありません。

事業家としての実績はもちろん、女優と交際するなどして芸能メディアに度々話題を提供していました。

ネームバリューのある人物が、何か行動を起こせば、知名度の低い人が同じ行動を起こした時よりも、大きく報道されやすいです。

ただ今回は、「①台風被害の支援」「②20億円」という事実そのものに社会的インパクトがありました。

①②の大きさの方が、報道的な観点からすれば、前澤さんのネームバリューすらも凌駕していた感があります。

もちろん、20億もポンと出せたのは前澤さんだからこそなんですけどね。

 

まとめ

サンスポが地方ネタのスクープを書くという珍しい発端のニュースでしたが、いずれにしても前澤さんの寄付は素晴らしいですね。

地元館山の方々はもちろん、多くの方に元気を与えたのではないでしょうか。

こういう明るいニュースが世の中に増えると良いですね。

地元の記者にとっては、せっかくの全国的な大きなニュースを真っ先に報じるチャンスをサンスポに奪われる結果となりました。

しかし、災害復旧のニュース報道はこれからも必要なことですから、地元を元気にできるようにこれからも頑張って欲しいですね。

 

 

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