続きを読む

記者が教える広報PRの方法

広報PR情報No.1サイト 元読売新聞記者 坂本宗之祐

ゴーンが会見で見せた広報力。日本人の広報力の拙さが浮き彫りに


日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告が、逃亡先のレバノンで2020年1月8日に記者会見しました。

この会見とゴーン氏の広報ぶりについて今回触れたいと思います。

記者目線で見れば、「中身のない」会見であり、フラストレーションが溜まるものでした。

しかし、世界の市民目線でショーとしてみれば、よくできたものだったのではないでしょうか?

今回の会見で、広報における最も大事なことを改めて思い知らされました。

それは、当事者の熱=パッションです。「伝えたい!」という熱い思いです。

ゴーン氏からは熱がほとばしっていました。

それに対して、日本政府のメッセージには、この「熱」が全くなかった。

言葉に熱を込めて発する!ここですね。

今回の出来事を通じ、日本人の広報力に課題を突きつけられた、と感じました。

 

カルロスゴーン氏、レバノン記者会見場の概観

レジス・アルノー・仏フィガロ東京特派員の記事「単なるショーだった「逃亡ゴーン会見」の舞台裏」から引用します。

「記者会見場に約100席用意された席は、主にフランス、レバノン、アメリカメディアで埋まっていた」

「ゴーン氏は英語、フランス語、アラビア語、ポルトガル語という4つの言語で対応」

「会見に出席できた100人に及ぶジャーナリストのほとんどはフランス人、レバノン人、そしてアメリカ人で、日本のメディアはほぼ参加が許されなかった」

「会場には、ゴーン氏の家族や友人のためにも2列の「関係者席」が用意されていた」

「フランスメディアの反応はおおよそ肯定的だ。筆者が話した記者のほとんどが、ゴーン氏のショーマンとしてのパフォーマンスに感心していた」

 

ゴーン氏の広報力の本質は「パッション」

ゴーン氏の広報力は、多くの人の認めるところでしょう。

表面的には、事前に準備したテクニックのような様子はうかがえました。

・オーバーな身振り手振り

・「家族」を会見に同席→感情に訴える

・自信に溢れた立ち居振る舞い

上記アルノー特派員の記事によると、ゴーン氏は広報会社と契約しているそうです。

逮捕直後から、フランスの危機管理広報会社「イマージュ7」と契約。

また、アメリカや日本向けにも、広報担当企業を何度か替えながら広報を試みています。

地域ごとに広報戦略を展開しているとは、すさまじいですね。

世界を知っている人間ほど、情報発信の重要性を理解しています。

ですが、ゴーン氏の広報力の本質はそこではない。

本人の内側から溢れ出る「パッション」です。

同じ言葉でも、それを語る人物にパッションがあるかどうか?で全く受け手の印象が変わります。

ゴーン氏の発信には、強烈な当事者意識がありましたし、「伝えたい!」熱い思いがありました。

力強い。良くも悪くもバイタリティがすごいですね。

普通、日本人が逮捕されたなら、しょげかえりますよね。

 

日本政府の広報が拙い理由

ゴーン氏の会見直後、日本の法務大臣が記者会見して反論しました。素早く対応したのは素晴らしいことです。

ただ、語り手の法務大臣が、用意された紙を棒読みするようなメッセージの発信だったのが気になりました。

そこには、人の胸を打つものが何もないんですよ。

日本人の広報の多くがそうです。

大きな組織を背負うほど、広報担当者に「当事者意識」が希薄になりがちです。

「自分ごと」として、情熱を持って語れないんです。

役割として任された、仕方ない、とりあえず言葉を伝えておこう。

みたいなやっつけ仕事感がにじみ出るんですよね。

もはやこれからの日本人は、こんな広報力では国際社会で生き残れないのではないでしょうか?

言葉の意味が通じないからこそ、発信者の様子立ち居振る舞いから、「パッション」のあるなしがすぐ伝わります。

「メラビアンの法則」で、人が情報を判断する要素は、

・話の内容などの言語情報が7%
・口調や話の早さなどの聴覚情報が38%
・見た目などの視覚情報が55%

つまり、非言語コミュニケーションが93%も占めます。

日本人は、言葉の瑣末な「てにをは」にこだわります。

でもそんなの、7%以下に過ぎないんですよ。そこじゃないだろう!と。木を見て森を見ていないんですよね。

 

情報をわざと開示せず。中身は薄い会見

予想はしていましたが、具体的な中身は乏しい会見になりました。

証拠を示すことなく、一方的に「自分は無実だ」と主張するばかりだったからです。

日本の司法制度を批判した一方、自らの罪については認めませんでした。

「罪の根拠はなく、日産から支出された資金は正当なもの」「日産と検察が共謀して私を陥れた」などと話したのみで、裏付けとなる証拠は提示されず。

※東洋経済オンライン「ゴーン会見に日本人が納得できない4つの理由」より

それどころか、関心の高かった日本からのプライベートジェットを使った逃亡劇の詳細も何ら語りませんでした。

 

想定通りの切り返し

日本からの逃亡の違法性を指摘する質問にも

「私が日本を出国したことは明らかに法律違反でそれは問題ですけれども、日本の検察が10件の法律違反を犯している」

と回答。これは事前に準備していた想定通りの切り返しであることは明らかですね。

記者会見時間も気になりました。

日本時間8日午後10時から開始。この時間の会見を好き好んで見ようとする人はそう多くなかったでしょう。

しかもこの時間は、日本の新聞の早い締め切り版に間に合わない時間です(最終盤にはかろうじて載っていましたが)。

ゴーン氏は日本人にこの会見を積極的に見せたいとは考えなかったからこそ、この時間に設定したと思われます。

 

メディアを選別

「メディアの選別」は、メディアにいた人間としては憤りを感じます。

「自分に都合の良いメディアにしか取材を許さない」。これも情報コントロールの一環でしょう。

しかし自分の公正さを主張するのなら、分け隔てなく受け入れるべきだったでしょう。

今の時代、ウェブですぐに会見の様子は伝わりますから、入れなかったメディアもすぐ報道します。

しかも、「否定的」な報道になるのは必然です。

会見でネガティブな「質問」をされたくなかったのでしょうけど、この判断は疑問です。

 

それでもゴーンは所期の目的を達成した

語られる内容は具体性が乏しく、中身の薄い会見でした。

法曹関係者や伝統的なジャーナリストは、ロジックやファクトを重視します。

その点、ゴーン氏の会見にはロジックもファクトもありませんでした。

ただ、恐らくゴーン氏の今回の会見目的は一つ。

「犯罪者」イメージから、「辣腕リーダーいまだ健在」というイメージへの転化を図る。

自らの健在ぶりを世界に印象付けたかった。これに尽きるのではないでしょうか?

自尊心の高いゴーン氏が、世の中から「もう終わった人間」と見なされるのは我慢ならなかったのでしょう。

自分への注目を高める。辣腕リーダーとしての健在ぶりを見せつける。国際世論に訴え、同情を集める。

その目的に鑑みれば、一定の成果は得たと言えるでしょう。

 

まとめ:パッションのある人間は強い

私も日本人の一人としては、ゴーン氏が違法に日本から逃亡したことに強い憤りを覚えました。

気持ちとしては、きちんと裁判を受けて、司法の場で自己の主張を展開してほしい。

今回の記者会見からはいくつもの教訓を学びました。

「正しい」「正しくない」とは別に、メッセージの発信力のある人間は強い、ということが一つ。

それがまかり通る世の中であってはいけないんですけどね。

そして一番は、「パッション」です。

自らに自負を持ち、その信念を熱く語ること。

日本人は集団で動きがちなので、1人1人の当事者意識が薄くなり、感情をあらわにすることが少ないですよね。

しかし、これから日本人は自立して、1人1人が個として確立し、当事者意識を持つべきです。

日本人も、自らの信念をパッションとともに熱く語るべきですね。

 

 

 

無料電子ブック

「経営者・個人事業主のための“広告費ゼロ”PR戦略
〜新聞テレビWEBを活用して売上を高める方法〜
(全50ページ)


効果的な情報発信のやり方を調べているけれども、「どうしたら良いのか分からない」と悩んでいませんか?

この冊子では、

・マスメディアに登場する圧倒的メリット
・成功するPR戦略の全体像
・自らのニュース価値(強み・特徴)を掘り起こす方法
・記者が取材したくなる4つの切り口

など、具体的なPRの取り組み等を50ページにわたって詳しく説明しています。

ぜひあなたの情報を広めるためにお役立てください。