プレスリリースから取材後、記者にお礼を言うのは失礼なのか?
坂本宗之祐です。マスコミ向け広報を知る人の間には、「記事が掲載されたら、記者にお礼を言うのは失礼だ」という認識があるようです。
というのも、ジャーナリストは、あなたのために記事を書くのではなく、「世の中の利益のために記事を書く」人たちだから。
「あなたから感謝される筋合いはない」というわけです。
これは、「記者は世の中のために記事を書く」のはその通りで、正しいです。
でも、「記者にお礼を言ってはいけない」という考え方には、何だかもやもやーっとした違和感を覚えたんです。
かたくなに「記者にお礼を言っちゃダメなんだ!」と萎縮している人がいるようなので、記者の気持ちをここで紹介します。
目次
あなたが良いことを広めようとしているのなら、堂々とお礼を言うのが自然
結論から言うと、あなたが良いことを広めようとしているのなら、「堂々とお礼を言うのが自然」です。
満面の笑みで、記者に「ありがとう!」と言っていただいて大丈夫です(笑)
正直、僕はこの「記者にお礼を言うのは失礼」と言う話を聞いた時に、「え?なんでお礼を言うのが失礼なの?」と思ったんですね。
これをよくよく考えてみると、「お礼を言っちゃいけない」という思考の裏には、
向こう側の記者と、こちら側の事業者を、そもそも「対立する存在」としている前提があると感じたんですね。
そして、広報とは、「わが社の利益を最大化するための存在」という前提があるんじゃないでしょうか?
「エゴ的な活動をしている」ことへの、やましさが心の中にあるんじゃないでしょうか?
広報担当は、わが社のため。
ジャーナリストは、世の中のため。
こういう切り取り方だと、そりゃー目指すところが違うので、どこかで衝突するようになりますよね。
僕は、ここがそもそも間違っていると思うのです。
「あなたのために書いたのではない」という記者の心理
ある広報担当者が、記者にお礼を言ったら、「あなたのために書いたのではない」と怒られたという話がありました。
この記者の心理はとてもよく分かります。
この時の記事は、その「会社の活動そのもの」を取り上げる記事ではなく、「ある社会的なテーマ」を扱う記事だったはずです。
料理に例えると、メーンディッシュのお肉ではなく、副菜のピーマンとしてお皿にのっていただけ。
「僕は、このお肉という崇高なテーマについて記事にしたんだ、ピーマンの部分を褒められたかったんじゃない。バカにするな!」
という気持ちになったのでしょう。
これって記者にとって悲しいし、屈辱ですよ。
だから、お礼を言うかどうか?は、記事の全体像をきちんと読み込んだ上で、「うちがお礼を言う文脈かどうか?」は普通に考えれば、誰だってわかると思うんです。
もちろん、記事によっては、ストレートに「会社の活動そのもの」が取り上げられることがあります。
その場合は、あなたは堂々と記者に対して、記事の感想をフィードバックしましょう。
記者は、書いた相手の反応が、正直怖い
記者にもよるのでしょうけど、正直言って僕の場合は、書いた相手の反応はすごく気になりました。
まず、「事実関係を間違っていないか?」。これがすごく怖い。
新聞記者は、「間違うこと」を異常に恐れます。間違っていたら、活字になっているので、言い逃れのしようがないのです。
(テレビの場合、放送は流れてしまいますので、証拠が残らない。テレビ記者は、はたから見ていて新聞記者との緊張度はかなり違う印象があります)
そして、新聞記者にとって、「訂正を出す」ことは、この上ない不名誉です。だからすごく怖い。
なので、記事が載った後、取材対象者から電話があると、「クレームではないか?」と身構えます。
それが単純にお礼の電話だと、ホッとするのです。
もちろん、相手を批判する論調の記事に対してクレームを言われても、事実関係の誤りがない限り、
「見解の相違ですね」と言って記者は毅然と突っぱねます。
記者と広報は、同じ方向を向くべき
さて、序盤にお伝えした「あなたが良いことを広めようとしているのなら、堂々とお礼を言うのが自然」という話に戻ります。
僕は、記者と企業・広報担当は、もはや対立する存在ではないと思うんです。
会社そのものも、利己的な活動によって存続できるような時代じゃなくなっています。
CSR(企業の社会的責任)の重要性は、多くの企業で認識されています。
確かにこれまでは、利己的な企業があり、一方で批判ありきのマスコミの態度もあったと思います。
ですが、これからお互い目指すべきは、社会的・公共的な利益という点で、一致していくはずなのです。
良いことをやりましょう。そして、それを堂々と記者にお伝えし、
「困った人を助けるために」
「世の中を良くするために」
記事にしてください、と頼むのです。
であれば、記者もあなたも、同じベクトルの方向を向くことになります。
つまり“同志”になるのです。
広報にジャーナリスティックな視点を
これからの時代、ますます企業そのものがメディア化していくはずです。
すると、社会性、ジャーナリスティックな観点から発信できる企業が、記者はもちろん、一般消費者の信頼も勝ち得ていきます。
それは、ジャーナリズム広報、のようなものになっていくと考えています。
売り込む、押し込む、読ませる、そうした記者をコントロールしようとする発想は捨てましょう。
マスコミの人に歓迎されるような、共感・共鳴されて、喜ばれる情報として、お届けしていく。
そういう考え方をしていただきたいのです。
ジャーナリストと、同じ方向を向くこと。同志になること。
ウェブにおいても、新聞テレビにおいても、この考え方がこれから広まっていくと僕は考えています。
つまり、“ジャーナリズムと経営を融合させる”ということ。
世の中に向けて、価値ある情報を発信させながら、経営を成り立たせていく。
これが、これからの経営のスタンダードになるはずです。
なので、最初に戻りますが、「記者にお礼を言うべきか否か」で、もんもんと悩むのって、すごく不毛だと思うんです。
あなたが良い人であれば、記者はあなたの味方です。
そして同じ人間なのです。
お互い尊重・尊敬しあって、「ありがとう」と言い合って、「良いこと」を世の中に広めていきましょう!
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