メディアトレーニングとは?元社会部記者がメリットと基本内容、費用から効果的な実施方法まで徹底解説
メディアトレーニングは広報、危機管理で必須!
メディアトレーニングは、企業の広報担当者や経営陣はぜひ受けておきたい訓練です。
記者たちは取材のプロです。何も準備せず、ぶっつけ本番でメディア対応に臨んでしまうと、メディア側からいいようにコントロールされてしまうからです。
私は元読売新聞の社会部記者として多くの企業団体を取材。その後は電通PRなどで複数グローバル企業のメディアトレーニングを行ったことがあります。
御社もインタビューや記者会見、個別取材の場で、企業の信頼を高めるメッセージを発信できるように、ぜひ事前にメディアトレーニングを受けておきましょう。
この記事では、メディアトレーニングの基本とそのメリット、かかる費用や注意点などを網羅的に説明します。ぜひ最後までお読みください。
目次
メディアトレーニングとは?
メディアトレーニングとは、企業の広報担当者や経営陣が、メディアに対して効果的に自社や製品、サービスについてメッセージを伝えるスキルを身につけるトレーニングです。
特にテレビ、新聞、ネットメディアからのインタビューや、記者会見の場で、企業の信頼性やブランドイメージを守りながら、適切な対応を行うための技術を学びます。
メディアとの対話を甘く考え、危機的に陥った企業のケースはとても多いです。
例えば、2023年のビッグモーターなどは典型例です。ずさんなメディア対応を繰り返すと、社会の信用を失います。
特にSNSが発達した現代では、言葉の選び方ひとつで誤解や炎上を引き起こすリスクが高まっています。
こうしたリスクを未然に防ぎ、メディアを通じて企業のメッセージを最大限効果的に伝えるために、メディアトレーニングは非常に重要です。
具体的なトレーニングの中身
多くのトレーニングでは、座学で記者からの質問に対する答え方、難しい状況での対応方法、などを学んだ後、実際の「ロールプレイ」を行います。
「○月○日○時、○○で工場火災が発生」など具体的なシナリオを用意し、本番のような緊張感の中、模擬インタビューや模擬の記者会見を行います。
記者役から厳しい追及を受けながら、限られた時間の中で記者たちに伝えるべき要点を整理し、応答するスキルを学びます。
また、話の内容だけでなく、見た目や話し方、ボディランゲージといった非言語コミュニケーションについても、細かな指導を受けます。
こうしたトレーニングを受けることで、企業の代表者や広報担当者は、本番のインタビューや記者会見の場で落ち着いて自信を持って話ができるようになります。
メディアトレーニング3つのメリット
メディアトレーニングを受けるメリットは、広報担当者や企業の代表者にとって大きいです。中でも特に重要な3つのメリットを紹介します。
1、インタビューやコメント発信の際の自信向上
メディアトレーニングを受けることで、インタビューへの対応やコメントを発信する自信が大きく高まります。
記者やメディアとのやり取りでは、予期しない質問を受けてミスを犯しがちです。ですがトレーニングを受けて事前に緊張感を味わっておけば、本番でも冷静に対応できるようになります。
例えば、ある食品会社の担当者が新製品発表イベントに臨んだ際、メディアトレーニングを事前に受けていたおかげで、記者からの厳しい質問にも自信を持って対応できました。
その結果、発表内容がメディアに伝わり、好意的な記事が多く掲載され、商品は順調に市場に浸透しました。
自信を持ってインタビューに臨むことで、企業メッセージが正確に伝わり、メディアの信頼も得やすくなります。
2、危機的状況における迅速な対応力の向上
メディアトレーニングは、企業が危機に陥った際の迅速かつ的確な対応力を高めます。
企業が不祥事やトラブルに巻き込まれたとき、適切な対応をしないと、事態が悪化し、企業の信用を損なってしまうリスクがあります。
トレーニングでは、危機対応のシミュレーションを行い、最悪のシナリオに備えたロールプレイを通じて、迅速な行動が取れるようになります。
例えば、あるインフラ企業が事故を起こした際、事前に危機対応のメディアトレーニングを受けていたことで、広報チームはすぐに公式声明を準備でき、メディアや顧客に対して迅速かつ誠実な対応が取れました。
その結果、企業への信頼が保たれ、危機を乗り切ることができました。
3、ブランドイメージの保護と向上
メディアトレーニングを受けることで、企業のブランドイメージを保護し、さらに向上させることができます。
広報活動は企業の顔とも言えるものであり、一貫性のあるメッセージを発信することで、信頼性が高まり、ブランドの価値を向上させることができます。
たとえば、ベンチャー企業が新サービスの発表会を行う際、社長や広報担当者がメディアトレーニングを受けておくことで、ブランドの強みを効果的にアピールできます。
新興企業ほど、メディアを通じたブランドイメージの発信は、ビジネスの成長にとって大きな役割を果たします。
メディアトレーニングで鍛える5つの基本内容
ここから、メディアトレーニングで鍛えるべき5つの基本的な内容について詳しく解説します。
①メディアとのコミュニケーションスキル
メディアとのコミュニケーションは、単なる情報のやり取りではなく、信頼関係の構築がカギになります。
トレーニングでは、記者やメディア関係者との関係を円滑にするためのスキルを磨きます。具体的には、相手が何を求めているかを理解し、適切なタイミングで的確な情報を提供する、といった技術です。
これにより、メディアからの評価が高まり、より良い報道をしてもらいやすくなります。
例えば、広報担当者が新製品発表の際に記者たちとスムーズにコミュニケーションを取ることで、企業に好感が持たれ、メッセージも正確に伝わり、積極的な報道が期待できます。
②インタビュー時の話し方と態度
インタビューの際、話し方や態度は受け手の印象を大きく左右します。メディアトレーニングでは、話し方のリズム、声のトーン、言葉の選び方などを練習します。
また、表情やジェスチャーといった非言語コミュニケーションも重要です。リラックスした態度で自信を持って話すことで、相手に信頼感を与え、誤解を防ぐことができます。
たとえば、企業のCEOがメディアトレーニングで学んだ話し方や態度を、インタビューやプレゼンテーションで実践している事例は数多くあります。
③質問への効果的な回答方法
記者からの質問は時に鋭く、準備していない質問が飛んでくることもあります。メディアトレーニングでは、こうした予想外の質問にも的確に対応するスキルを学びます。
効果的な回答方法とは、短く、明確で、かつメッセージを一貫させることです。また、難しい質問には事実に基づいて誠実に答えることで、信頼を築くことができます。
具体的には、「Yes/No」だけではなく、背景や理由を簡潔に付け加えることで、より相手に納得感を与えられる回答が理想です。
④記者会見のシミュレーション
メディアトレーニングの中でも、記者会見のシミュレーションは非常に実践的で効果的なトレーニングです。
実際の記者会見の場を再現し、緊張感の中で発言する練習を行います。これにより、会見時に発生しがちなミスや不安を軽減し、冷静かつ自信を持って対応できるようになります。シミュレーションを繰り返すことで、本番の会見に落ち着いて臨むことができます。
例えば、ある大手企業が新製品のリコールを発表した際、事前のシミュレーショントレーニングをしていたことで、冷静で一貫したメッセージを記者に伝えることができました。
⑤危機管理対応のロールプレイ
企業が突発的なトラブルや危機に直面した場合、迅速かつ的確に対応することが求められます。
危機管理対応のロールプレイは、企業が危機的状況にどう対処するかをシミュレーションし、効果的な対応策を学ぶトレーニングです。
メディアの質問攻めに遭った場合でも、冷静に対応することができ、企業のブランドイメージを守るためのスキルを習得します。
こうした危機は突然やってきます。危機が起きてから対応を考えても限界があります。
だから平時からトレーニングで備えておくことが重要です。
メディアトレーニングの費用
メディアトレーニングの費用は、提供されるトレーニングの内容や時間、対象となる人数によって異なります。
(1)グループトレーニング
グループでのトレーニングは、数人から数十人の参加者が一度に受ける形式です。
基本的に1日(6〜8時間)かけて行われ、各自のスキルをバランス良く向上させることが目的です。
・費用の目安:1日あたり約20万〜40万円
・具体的な内容:全体の講義、実践的なロールプレイ、シミュレーション、グループディスカッション
(2)個別トレーニング(1対1コーチング)
個別のトレーニングは、経営者やスポークスパーソンを対象にした、より集中的な内容です。特定の課題にフォーカスし、個別のメディア対応スキルを磨きます。時間は通常半日から1日です。
・費用の目安:1セッション(半日〜1日)で約30万円〜
・具体的な内容:インタビューや記者会見のロールプレイ、ビデオ録画とフィードバック、危機管理対応の詳細な指導
(3)継続的なトレーニングプログラム
大企業や頻繁にメディア対応する経営者には、数ヶ月にわたる継続的なトレーニングプログラムもあります。この場合、個別セッションやチーム向けセッションを組み合わせ、定期的にスキルをチェック・強化していきます。
・費用の目安:3〜6ヶ月のプログラムで約100万〜300万円
・具体的な内容:定期的なフィードバックセッション、危機対応シナリオのアップデート、実際のメディア対応後の分析
最近は、日本でも多くの企業がこうしたトレーニングを導入しています。費用は決して安くはありませんが、メディア対応が企業のブランドイメージや信頼性を大きく左右することを考えれば、必要な投資と言えると思います。
メディアトレーニングの効果を高める3つの注意点
メディアトレーニングは漫然と行っても効果を最大限引き出すことはできません。
せっかくトレーニングをやるなら最大限の効果を得られるように、以下3つに注意してください。
1. リアルなシミュレーションを繰り返す
メディアトレーニングで重要なのは、リアリティです。本番さながらの雰囲気をいかに再現できるか?にかかっています。
実際の記者会見やインタビューでは、必ず予期せぬ質問や突発的な状況が発生します。トレーニングでも、そうしたリアルな状況に近いシミュレーションを行うことで、冷静かつ効果的に対応できるスキルを磨くことができます。
むしろ、トレーニングでは本番よりもシビアな環境で行うことがおすすめです。より深刻なシナリオを設定し、記者からより厳しい質問を受ける、などです。
ですので、記者役にもプロの記者経験者を起用すべきです。
甲子園に出場する高校球児も、厳しい練習を積みます。彼らは異口同音に「本番の試合は練習より楽」だと言います。
こうした厳しいトレーニングを繰り返すことで、どんな状況でも冷静に対応できる自信と技術が身につきます。
特にカメラの前での表情や身振り手振りなど、非言語コミュニケーションも含めて実践的に訓練することが重要です。
2. 継続的にトレーニングを行う
メディア対応のスキルは一回のトレーニングで全て身につくものではありません。継続的にトレーニングを行うことで、スキルが定着し、実際のメディア対応で効果を発揮します。
企業の状況やメディア環境、社会はどんどん変化します。その変化に対応できる柔軟性を持つためにも、トレーニングは定期的に行いたいです。
例えば、四半期ごとにトレーニングを実施する企業は、社会トレンドや新しいメディアの動きをその時々に取り入れて、トレーニングを実施しています。
継続的なトレーニングは、担当者の自信を高め、メディアとの関係構築にも有効です。
3. 自社の危機管理シナリオに基づいたトレーニング
メディアトレーニングは、一般的な対応スキルを学ぶだけではなく、自社の具体的な危機管理シナリオに基づいて行うとより効果的です。
企業によって想定されるリスクや問題は異なります。ですので、トレーニングもそれに合わせてカスタマイズしましょう。
自社の特性に応じたシナリオをもとにトレーニングを行うことで、実際に危機が発生した時も、素早く的確な対応ができるようになります。
例えば、全国に大きな工場をいくつも抱える企業は、事故などを想定したシナリオ、あるいは製品のリコールが発生する可能性がある企業では、そのシナリオに基づいてメディア対応を練習しておきたいです。
トレーニング中に、どのように事態を把握し、メッセージを伝え、顧客やメディアに安心感を与えるか?をロールプレイで徹底的に学んでおけば、実際にクライシス事案が発生した時も、素早く行動できる体制が整います。
まとめ:メディアトレーニングは企業全体のブランド価値向上につながる!
メディアトレーニングは単なるスキル向上の場ではなく、企業が信頼性を高め、危機管理意識を強化し、ブランド価値を守るための重要な取り組みです。
このトレーニングを行うことで、広報PR意識や危機管理意識が社内に浸透し、企業全体のブランド価値向上につながります。
さらには、社内の一体感やチームワークの向上にもつながるメリットもあります。
メディア対応は、企業のイメージに直接影響を与える重要なテーマです。
ぜひ、あなたの会社でも一度、メディアトレーニングに取り組んでみてはいかがでしょうか?
この記事で、メディアトレーニングの必要性と効果について理解を深めていただき、今後の広報活動にお役立ていただければ幸いです。
私、坂本宗之祐も企業・団体におけるメディアトレーニングのお手伝いをしています。
ご要望に応じた内容で実施いたしますので、お気軽にご相談ください。