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記者が教える広報PRの方法

広報PR情報No.1サイト 元読売新聞記者 坂本宗之祐

プレスリリース配信サービス比較|PR TIMES・@Press・ValuePressを元記者が徹底解説


「プレスリリースを出してみたいけれど、どこの配信サービスを使えばいいのか分からない」──。

これは、広報初心者から企業の広報担当者、個人事業主の方まで、私が日々受ける相談の中で最も多いテーマのひとつです。

私は読売新聞記者(社会部)として11年間、毎日大量のプレスリリースを受け取る側にいました。

その後、広報PRの専門家として独立・起業し、これまで12年以上にわたって全国で3000人以上の経営者・広報担当者に広報PRの指導をしてきました。

その経験から率直にお伝えすると、

「どの配信サービスを選んだから取材される、という話ではない」

ということです。

とはいえ、配信サービスをうまく使えば、メディアに情報を届ける入口を効率よく作ることができるのも事実です。

この記事では、国内で利用者の多いプレスリリース配信サービスである

・PR TIMES(PR TIMES)
・@Press(アットプレス)
・ValuePress(バリュープレス)

の3つを中心に、

・そもそも配信サービスとは何か?

・代表的なサービスの違い

・どんな会社・状況に向いているか

・「配信したのに反応がない」パターンを避けるコツ

…まで、元新聞記者の視点からていねいに解説します。

最後に、配信だけに頼らず取材につなげるための「配信+個別アプローチ」の考え方もまとめますので、配信サービス選びの指針としてお役立てください。

 


プレスリリース配信サービスとは?

まずは、配信サービスの役割を整理しておきましょう。

プレスリリース配信サービスとは、企業や団体が作成したリリースを、

・配信サービス自社サイト(ニュースページ)

・提携しているニュースメディア・ポータルサイト

・登録されている新聞社・テレビ局・雑誌・WEBメディアなどへのメール

…といったルートを通じて、一括で広く届けてくれる代行サービスです。

自社でメディアリスト(送り先リスト)を持っていなくても、契約して設定さえすれば、

「テレビ局や新聞社、WEBメディアにまとめて情報を届けられる」

ことが大きなメリットです。

ただし、ここで大事なのが次のポイントです。

配信サービスは「情報を届ける仕組み」であって、「取材を保証する仕組み」ではないということです。

私自身、現役記者時代に配信サービス経由のリリースを毎日のように受け取っていましたが、その多くは

「情報としては受け取るが、取材までは至らない」

という扱いになっていました。

つまり配信サービスは、

ゼロから自前でメディアリストを作るよりも早く、「とりあえず情報が届く状態」を作ってくれるツール

と捉えると、イメージが近いと思います。

 


代表的なプレスリリース配信サービスの特徴

ここからは、代表的な3つの配信サービスについて、概要と元記者としての本音コメントを書いていきます。

料金や細かな仕様は変更されることがあるため、実際に利用する際は必ず各社の公式サイトで最新情報をご確認ください。

 

PR TIMES(ピーアールタイムズ)

PR TIMES は、上場企業の多くが利用している国内最大手の配信サービスです。特徴的なのは次の3点です。

①PR TIMESサイト上での掲載
配信したプレスリリースは、PR TIMES の自社サイト上にニュース記事として掲載されます。

②パートナーメディアへの転載
提携しているニュースサイト・ポータルサイトに、リリース全文や一部が転載される仕組みがあります。

③メディアへのメール一斉配信
登録されているメディアの中から、業界・地域などを選んでメール配信することができます。

 

この結果、うまくハマると、

・検索で「社名+サービス名」を調べたときに PR TIMES の記事が上位表示される

・ポータル系ニュースサイトに転載され、想定外の読者に届く

といった効果が期待できます。

 

【元記者のコメント】
PR TIMES 経由のリリースは、ニュースサイトやポータルに転載されることで、一般ユーザー向けの露出を確保しやすい点が強みです。

一方、新聞社やテレビ局の記者から見ると、「毎日大量に届くリリースのうちの一つ」であることも事実です。

社会性や公共性の高いテーマであれば、転載からさらに「取材」に進むこともありますが、単なる商品紹介レベルだと埋もれやすい印象があります。

 


@Press(アットプレス)

@Press は、配信だけでなく、原稿チェックやメディア対応などのサポートが手厚いサービスとして知られています。

・新聞・テレビ・雑誌・ラジオ・WEBメディアなど、幅広い媒体に対応

・単発配信プランが中心で、必要なときだけ利用しやすい

・原稿の添削・サポートなど、広報初心者向けの支援が充実している

 

【元記者のコメント】
「プレスリリースを書いたことがなくて不安」「どんなタイトルにすればいいか分からない」といった方には、@Press のようなサポート重視型サービスは使いやすいと思います。

ただし、これはどのサービスにも共通しますが、サポートを受けて整った文章になったとしても、「ネタのニュース価値」がなければ取材にはつながりません。

「文章の体裁を整える」ことと「記者が取材したくなるネタに仕上げる」ことは、まったく別物だという点は意識しておきましょう。

 


ValuePress(バリュープレス)

ValuePress は、比較的リーズナブルな料金で、継続的に本数を出しやすい配信サービスです。

月額・年額の定額プランもあり、「回数を出してPDCAを回したい」という企業に使われています。

・メディアをいくつかのジャンルに分類し、ジャンルごとに一斉配信するスタイル

・単発配信だけでなく、定額配信プランもある

・配信実績をCSVでダウンロードして確認できる

 

【元記者のコメント】
「スタートアップでとにかく露出のチャンスを増やしたい」「月に何本も出して反応を見たい」といった場合には、ValuePress のような定額制サービスは相性が良いと思います。

一方で、ジャンルごとの一斉配信が前提になっているため、

「この新聞社の、この記者の机に、確実に届けてほしい」

というニーズにはやや不向きです。広く撒きつつ、当たればラッキーというイメージで使うのが現実的です。

 


どの配信サービスを選ぶべきか?

ここまで見てきた3サービスは、いずれも

・一定の配信実績

・豊富な配信先メディア

・Web上での掲載・効果測定

といった基本機能は揃っています。

そのうえで、どのサービスが自社に合うかは、「何を優先したいか」によって変わります。

 

◯検索露出・認知拡大を重視したい場合

→ 第一候補は PR TIMES

・PR TIMES 自社サイトのPVが大きく、検索から見つけられやすい

・ニュースサイトやポータルへの転載により、一般ユーザーに届きやすい

「ニュースとして大ヒットするかどうかは分からないが、まずは情報を広く置いておきたい」という目的であれば、PR TIMES は非常に使いやすいサービスです。

 

◯初めての配信で、手厚いサポートが欲しい場合

→ @Press を検討

・原稿のチェックや配信設定のサポートが充実している

・広報経験が少ない企業でも、一定レベルの文章と配信設定に乗せやすい

「社内に広報担当がいない」「書き方も送り方もゼロから教えてほしい」といったケースでは、@Press のようなサービスを一度使ってみる価値はあると思います。

 

◯予算を抑えつつ、本数を出して反応を見たい場合

→ ValuePress が向きやすい

・月額・年額の定額プランで、複数本を出しやすい

・スタートアップや中小企業でも利用しやすい価格帯が用意されている

「1本あたりの勝負というより、複数のネタを試しながら反応を見たい」という場合に適しています。

 


配信サービスだけに頼ると失敗するパターン

ここからは、元記者として、そして広報PRの専門家としての“本音”の部分をお伝えします。

これまでに多くの企業から、

「配信サービスでお金をかけて出したのに、まったく取材が来なかった」

という相談を受けてきました。そうしたケースには、いくつかの共通点があります。

 

❶配信した時点で「広報の仕事が終わった」と思ってしまう

配信サービスは、本来

「メディアに情報が届く状態を作る入口」

にすぎません。

ところが、配信ボタンを押した瞬間に、

「これで広報の仕事は完了した」と感じてしまう方が少なくありません。

その結果、

・配信後にメディアの反応をチェックしない

・本命の記者に個別フォローをしない

という状態に陥り、せっかくの配信が“出しっぱなし”で終わってしまいます。

 

❷リリースが「売り込み目線」になっている

配信サービスのサイトでは、

・提携メディア数の多さ

・掲載実績

・取材につながった事例

などが強調されています。

しかし、現場の記者が見ているのは、

・その情報が読者にとってニュースかどうか?

・社会的な意味やタイミングがあるか?

・他の候補より優先して取材する理由があるか?

という点です。

「自社の商品・サービスを紹介したいだけ」のリリースは、どんな配信サービスを使っても、ほぼ間違いなく埋もれます。

 

❸「誰に届けたいか」が決まっていない

配信サービスの管理画面では、

・業種

・ジャンル

・エリア

といった項目を選んで配信先を設定します。

しかしその前に、

「どんな読者に届けたいのか」「その読者はどのメディアを読んでいるのか」

といった設計ができていないと、単なる「数撃ちゃ当たる」のばらまきで終わってしまいます。

 


本気で取材を狙うなら「配信+個別アプローチ」の併用を

では、どうすればいいのか。

元記者としておすすめしたいのは、

「配信サービスは広く知らせるためのベース」
「個別アプローチは、本命メディアに刺すための勝負手」

という役割分担です。

 

配信サービスの役割

・自社の公式情報をネット上に残す(一次情報の置き場を作る)

・検索やSNSからの偶発的な露出を増やす

・興味を持った記者が、後から情報を検索できるようにしておく

この意味では、PR TIMES や ValuePress のサイト上にリリースが掲載されることには価値があります。

記者は、気になった企業名をあとから検索して調べることが多いからです。

 

個別アプローチの役割

「本当に載ってほしい媒体」「取り上げてほしいコーナー」を決める

その媒体の紙面・番組内容を研究し、ネタを最適化する

記者クラブや支局、担当記者に向けて、個別にリリースを送付・連絡する

 

配信サービスを使うと、「送り先を考えなくていい」という錯覚に陥りがちです。

しかし、実際に取材につながるかどうかを決めているのは、最後は「送り先」と「ネタの作り方」です。

送り先リストの作り方や、記者への具体的なアプローチ方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。

プレスリリースの送り先・配信先一覧|取材される出し方と新聞・テレビの反応率を元記者が解説

 


まとめ:配信サービスは「ゴール」ではなく「スタートライン」

最後に、本記事のポイントを整理します。

◎プレスリリース配信サービスは、メディアに情報を届けるための「入り口」を作るツール

◎PR TIMES・@Press・ValuePress にはそれぞれ得意分野があり、自社の目的に合わせて選ぶことが大切

◎どんな配信サービスを選んでも、ネタのニュース価値と送り先設計が弱いと取材にはつながらない

◎本気で取材を狙うなら、配信サービス+個別アプローチの併用が最も現実的な戦略

 

元記者としての実感を一言でいえば、

「どの配信サービスを使うか」以上に、「何を、誰に、どう届けるか」が結果を左右する

ということです。

配信サービスは、あなたの広報戦略を支えるインフラです。この記事が、サービス選びと今後のPR戦略を見直すきっかけになれば嬉しく思います。

 

(こちらの記事もご参考ください)

・広報戦略8つの手順と3フレームワーク。戦略立案から実行、測定まで徹底解説

・マスコミ取材お願いする依頼文の書き方と例文。元読売新聞記者がプレスリリース徹底解説します

 

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