記者クラブに投げ込み(プレスリリース)する方法と注意点を、元読売新聞記者が解説します
あなたは、記者クラブへの投げ込みについて調べているものの、「私なんかが記者クラブを利用できるのだろうか…」と半信半疑ではありませんか?
私は、読売新聞記者として10以上の記者クラブに所属して、数多くのプレスリリース投げ込みを受けてきました。
基本的に、記者クラブへのプレスリリース提供(これを業界用語で“投げ込み”と言います)は、誰でもできるので、安心してください。
しかし、記者クラブには独特のルールやマナーがあり、それを知らずに記者から嫌われる企業の担当者が多数いるのもまた事実です。
中には、「迷惑業者」として記者たちにインプットされ、ブラックリスト入りしてしまうケースすらあります。
とはいえ、記者クラブを上手に活用すれば、テレビや新聞各社がこぞってあなたのビジネスを報道してくれる可能性があります。
あなたには、記者クラブを正しく利用していただき、ぜひメディア記者と良い関係を築いてほしいと願っています。
この記事では、私の記者経験をもとに、正しい投げ込みの手続きと手順について紹介していきますので、ぜひ最後までじっくりお読みください。
※この記事は2017年11月23日に公開しましたが、2021年8月18日にリライトして再度公開しました
目次
東京の記者クラブの種類
まず、記者クラブの具体例を紹介しよう。東京には最も多くの記者クラブが存在している。そのごく一部を下記に紹介しよう。
記者クラブ名 | 所在地 |
---|---|
・司法記者クラブ | 東京高等裁判所内 |
・文部科学省記者会 | 文部科学省内 |
・厚生労働記者会 | 厚生労働省内 |
・農政クラブ | 農林水産省内 |
・経済産業記者会 | 経済産業省内 |
・国土交通記者会 | 国土交通省内 |
・総務省記者クラブ | 総務省内 |
・環境省記者クラブ | 環境省内 |
・東京都庁記者クラブ | 東京都庁内 |
だが正直に言って、東京のこれらの記者クラブに対して、一般の事業者が投げ込みをしてもほとんど取材につながらないので、あまりおすすめしない。
そもそも、外部からのプレスリリースを受けていないところもある。
こうした官庁にプレスリリースの投げ込みをして良いのは、その官庁の政策とダイレクトに関わりのあるケースくらいだろう。
なぜなら、これらの記者クラブに所属している記者は、所在している官庁(国交省記者会なら国交省)の動きにしか基本的に興味がないからだ。
例えば、日本最大の記者クラブと言われる国土交通省の記者クラブ。ここに以前行ったことがあるが、ひっきりなしに報道発表のアナウンスが流れていて驚いた。
つまり、記者たちは省内に多数ある部課から発表されるプレスリリースの処理に追われまくっている。
「こんなに発表に追われていたら、外に取材にも出られないじゃないか…」と、クラブに所属する記者を気の毒に感じたのをよく覚えている。
また、別の省庁の記者クラブでは、企業の宣伝担当者と思しき人たちが3人ほど入ってきた様子を覚えている。
緊張した様子でソワソワしながら記者に接触を試みている姿を見て、「記者クラブで宣伝活動をするなんて…」と苦々しく思った記憶がある。
このように、霞ヶ関の官庁にある記者クラブで売り込みをしても、記者から煙たがられるのがオチだ。
だから、これらの記者クラブに外部の企業がプレスリリース投げ込みをしても、余程のネタでない限り取材されない。
また、民間の組織団体にも記者クラブもあるが、こちらも事情は同じようなものだ。
東京商工会議所内の記者クラブには、たとえ同会議所の会員企業であっても無条件で投げ込みできるわけではない。
会員企業のうち投げ込みが許可されているのは一部の大手企業のみ、という。なので当然、会員外の企業は当然、投げ込みできない。
地方の記者クラブの種類
一方で、地方の記者クラブはかなり状況が異なってくる。
記者クラブは、東京だけでなく全国にある。まず、すべての道府県庁に存在する。さらに、県庁所在地の市役所には、必ず記者クラブがある。
その他の地方拠点都市の市役所にも、記者クラブがある。
これらの記者クラブは東京のそれと比べ、届けられるプレスリリースの絶対数が少ない。ゆえに、記者から目を向けてもらいやすい。
下記にほんの一部をご紹介しよう。
記者クラブ名 | 所在地 |
---|---|
・大阪府政記者会 | 大阪府庁内 |
・大阪市政記者クラブ | 大阪市役所内 |
・兵庫県政記者クラブ | 兵庫県庁内 |
・愛知県政記者クラブ | 愛知県庁内 |
・札幌市政記者クラブ | 札幌市役所内 |
・福岡県政記者室 | 福岡県庁内 |
これらの地方の記者クラブは、プレスリリースを持ち込むのに適している。
多くのクラブで、外部からのプレスリリース持ち込みを受けている。
記者クラブへの投げ込みの申し入れ手順
1 記者クラブに電話する
まず、記者クラブに電話をかけよう。
電話のかけ方は簡単。上記の役所の代表番号に電話をする。そして受付の職員に「記者クラブをお願いします」と頼めばいい。すると電話を記者クラブに回してくれる。
記者クラブの人が電話に出たら、「プレスリリースを提供したい」旨を説明しよう。
場合によっては、プレスリリースの内容を聞かれることがある。単なる宣伝チラシだと判断されれば、持ち込みを断られる。気をつけよう。
プレスリリースの書き方は、この記事を読んでおいてほしい。
2 必要部数と訪問時間を確認する
記者クラブの人と話をすれば、プレスリリース投げ込みの段取りを教えてもらえる。
記者クラブによって、それぞれローカルルールが異なる。
最低限、聞いておくべきなのは、プレスリリースの必要部数、それから持参できる時間だろう(当日午後4時まで、48時間以降、など)。
その他、記者クラブによってルールが異なることはよくあるので、事前に確認しておこう。
3 プレスリリースを記者クラブに持参する
必要部数と日時を確認したら、実際に記者クラブに足を運ぼう。
どの記者クラブも、ドアを開けると入り口付近に大きな受付ボックスの棚がある。それぞれ、A4サイズの紙がちょうど入るくらいのサイズ。
その棚は、新聞、テレビ、ラジオ各社ごとに分かれている。そのボックスそれぞれにプレスリリースを投函していくので、「投げ込み」と呼ばれる。
ただ、記者クラブに入っていきなりプレスリリースの投げ込みを勝手に始めてはいけない。
必ず、受付の職員か、記者クラブ幹事の許可を得てからプレスリリースの投げ込みをしよう。
多くの記者クラブでは、職員がプレスリリース一式を引き取り、「あとはこちらで各社にお配りしておきます」と言われることが多い。
記者クラブ投げ込みでの注意点
1 宣伝チラシを持ち込まない
記者クラブは、宣伝PRをするための機関ではない。ここは念を押しておきたい。
あたかも記者クラブを「無料で宣伝できるところ」という言い方をする人がいる。そういう認識で記者クラブにアプローチすると、確実に記者に嫌われる。
記者は、業者が宣伝しにやってくることを毛嫌いしている。
ではどうしたらいいか?
記者たちは「自分たちは世の中に必要な情報を届けるのが役目だ」と考えている。
だから、記者クラブに持ち込むプレスリリースには、「社会性」が必要だということだ。
つまり、「世の中にとって必要としている人がいる情報なので、力を貸してください」というスタンス。
営利事業の宣伝行為はやってはいけない。これは最も大事なことだ。
下記の記事で、正しいプレスリリースの書き方を説明している。ぜひ読んでおいてほしい。
2 メディア各社に公平に情報を提供する
「新聞社はいいので、とりあえずテレビ各社にだけプレスリリースを配りたい」
などという人が、ごくたまにいる。これはNG。
記者クラブは、メディア各社が公平に情報をキャッチすることが基本的なルールになっている。
もちろん、マスメディア各社は、自社独自の報道(特ダネ、スクープ)を狙って日々、取材活動をしている。
だが、記者クラブにおいてはお互い抜け駆けせず、ルールに則って行動することを申し合わせている。
だから記者クラブへの情報提供は、加盟各社に同時・一斉に配布することが原則だ。
もしあなたが、特定のメディア・報道機関にだけ情報提供をしたいのなら、記者クラブではなく、直接そのメディアに持ち込んでほしい。
3 勝手に「解禁日時」などを設定しない
たまに一般企業のプレスリリースで、一方的に「このプレスリリースの報道は、・月・日・・時以降に解禁します」などと書いているものがある。
これは非常に失礼なプレスリリースで、確実に記者たちのひんしゅくを買う。
解禁付きのプレスリリースとは、発表主体とマスメディア各社との間で「報道協定」が結ばれた場合だけ認められる、特別なものだ。
だから、発表する側が記者たちに対して「いついつまでに報道するな」と一方的に通告することは、ルールとマナーを逸脱している。
もし、ある特定の日時まで報道を控えてほしい理由があるのなら、それは事前に記者クラブの幹事社の記者に相談してほしい。
納得できる理由があるのなら、記者側もきちんと耳を傾けてくれる。
記者クラブに投げ込みできるプレスリリースの種類
単なる商品やサービスのお知らせでは、記者クラブ側は投げ込みに「それはちょっと…」と難色を示すことがある。
営利企業の宣伝を、記者はとても嫌う。
だから、記者クラブにプレスリリースを持ち込むのなら、例えば次のような内容であることが望ましい。
・社会貢献性のあるイベント (社会性)
・地域活動のお知らせ (地域性)
・地域の特産品を用いた商品開発 (地域性)
・困っている人を助ける活動 (社会性)
・今までにないユニークな活動 (特異性)
プレスリリースはどういう時に出せるのか?その種類はこの記事でより詳細に説明しているので参考にしてほしい。
記者クラブ投げ込みのタイミングは?
記者クラブによって、持ち込みが可能な日時のタイミングは異なるので、事前に電話をかけて確認してほしい。
一般的に、午後2〜3時頃は、記者たちは比較的落ち着いている。新聞社は夕刊の締め切りが終わり、ランチを終えて一息つくからだ。
(とはいえ、その日によって状況は全然変わるので一概にはいえないが)
また、金曜日は役所の発表ものが多い傾向がある。だから金曜日は記者は忙しいことが多い。
「イベントのお知らせ」の場合、イベント開催の1か月前にはプレスリリース投げ込みをしておきたい。
新聞各紙の地方面には毎週1回、イベント・行事の掲載コーナーがある(ここのは比較的、載りやすい)。ここに載せてもらうには、早めに届ける必要があるからだ。
ちなみに、以下の記事ではプレスリリース全般の適切なタイミングについてまとめている。チェックしておいてほしい。
記者クラブはどういう様子なのか?
役所の建物の中に、記者クラブの1室がある。なぜかどこも「市長室」「知事室」と同じフロアにあるケースが大半だ。
役所のホームページや、庁舎フロア1階などに掲げてある「庁舎案内」をじっくり見てみてほしい。「・・県政記者室」「・・市政記者室」という名称の部屋が見つかるだろう。
それがいわゆる記者クラブの部屋だ。
入り口のドアを開けると、どの記者室も入ってすぐの入り口付近に、プレスリリース投げ込み用の大きな棚があるはずだ。
その棚は、記者クラブ加盟の新聞テレビラジオ各社ごとに区切られており、そこにプレスリリースが投げ込まれる。
一定規模の記者クラブには、その棚の前に受付の職員が座っている(女性が多い)。その役所の臨時職員で、記者クラブにまつわる事務を取り仕切っている。
(※小規模自治体の記者クラブには、常駐職員はいない。記者もいないことが大半だ)
見知らぬ人がやってきたら、その職員が声をかけてくれる。プレスリリース持参した旨を伝えれば、慣れているのでスムーズに対応してくれるだろう。
部屋の奥を見てみると、机がいくつも並んでいるのが見えるはずだ。それらは、メディア各社ごとの机となっている。
取材で記者たちが出払っていることもあれば、記者が何人も在室していることもある。
記者クラブの部屋内は平時は穏やかだが、突発ニュースが発生したりすると、殺気立った雰囲気になることがよくある。
そんな時は邪魔にならないように静かに退室するなど、記者クラブ内の雰囲気を読み取って行動してほしい。
記者クラブを訪問したらやるべきこと
記者クラブに入ったら、まずは受付の職員さんにあいさつしよう。そして、自分が何者で、何の用件で来たか?を簡潔に伝えること。
そして後は、基本的に受付の職員さんの指示に従ってほしい。
場合によっては、幹事社の記者にあいさつし、名刺交換ができそうなら名刺交換をするといい。
記者クラブごとに微妙に異なるルールなどがある。ルールとマナーを守って、記者クラブを活用しよう。
用件が済んだら、速やかに退室しよう。物珍しそうにジロジロ見たり、室内を勝手に歩き回ったりしてはいけない。
記者クラブ投げ込みにかかる費用
プレスリリースを記者クラブに投げ込むには、費用はかかるのか?
これはもちろん一切かからない。記者クラブ側から費用を請求されることはない。
強いて言えば、プレスリリースの印刷にかかる費用と、記者クラブに足を運ぶのにかかる交通費くらいだ。
ただ、だからと言って、「記者クラブを無料で宣伝できる場所」と勘違いしないでほしい。
記者クラブへ宣伝しにやってくる儲け主義の企業がこれ以上増えると、ますます記者クラブへの門戸が閉ざされるようになってしまう可能性がある。
これを読んでいるあなたの行動が、あなたの後に続いて記者クラブを訪問する人たちに影響する。
世の中の人々に役に立つ情報として、あなたのプレスリリースを届けてほしい。
記者クラブを使わずに、プレスリリースを出す方法
これまで、記者クラブへのプレスリリース投げ込み方法について説明してきた。
が、もちろんプレスリリースを出せるルートは、記者クラブだけではない。
プレスリリースは、あなたから直接、新聞社やテレビ局に届けることができる。これももちろん無料でできる。
下記の記事で、プレスリリースを直接メディアに届けるやり方を説明している。参考にしてほしい。
各新聞社・NHKへの具体的な送り方は、以下の記事で説明している。
記者クラブを使わず、自社独自のメディアリストを作成する方法
記者クラブからアプローチできるのは、新聞テレビの報道記者のみだ。それ以外のメディア関係者にアプローチするには、あなたが独自にメディアに接触していくしかない。
メディアリストの作り方を以下の記事、動画で詳しく説明している。参考にしてほしい。
メディアリストの作り方。デキる広報が行う作成と管理7つの手順
まとめ
記者クラブには、「宣伝チラシ」を決して持って行ってはいけない。
そんなことをすれば、「迷惑業者」として記者たちにインプットされる。ますますメディア掲載が遠ざかるだけだ。
記者クラブは基本的に、「社会性」のある情報しか受け付けない。
そして、結局は人間関係だ。
記者と信頼関係を築き、本音で話ができる関係を築いてほしい。
メディアの人と人間関係が築けない広報担当者は、存在価値がない。いずれAIやロボットに取って代わられるだろう。
「広報の仕事には将来性がある」とされるのは、人間同士のコミュニケーションが必要な仕事だからだ。
だから、「記者クラブに行ってみよう」と検討しているあなたは、とても正しい。
記者のもとへ足を運び、実際に会って、あなたが世の中に投げかけたい思いをしっかり伝えてほしい。
それができれば、机に座って外に出ず、プレスリリース配信サービスだけで情報をばら撒こうとしている人よりも、10倍以上の成果を出せるようになるはずだ。
ぜひ記者に会って、彼らと話をしてみてほしい。
そして、世の中に有益な情報をぜひ届けていってほしい。
以下の動画でも解説しているのでぜひご参考ください。
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