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記者が教える広報PRの方法

広報PR情報No.1サイト 元読売新聞記者 坂本宗之祐

メディアリレーションとは?元読売新聞記者が語る、関係構築3つのポイント


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メディアリレーションとは、企業や団体が報道機関の記者や編集者らと関係をつくり、企業や製品、サービスの情報をメディアで取り上げてもらうことを目的としたPR活動の一つです。

今や、多くの企業や団体がメディア掲載によって知名度と信頼性を高める目的で、メディアリレーションを行っています。

メディアリレーションには、報道機関への情報提供や、取材対応などが含まれます。

これらによって、わが社のニュースや商品情報などが広めることができます。また、企業や団体の信頼性が向上することも期待できます。

記者から「この会社は信頼できる」と思ってもらえれば、長い目でみて広報活動で大きな成果を出せるようになります。

ですが、メディアリレーションには、報道機関との関係性やコミュニケーションの方法、情報提供のタイミングや内容など、様々なポイントが存在します。

このため、適切なメディアリレーションを行うためには、正しい知識と手法が必要です。

あなたにはぜひメディアと良い関係を築いてほしい、と願っています。

この記事では、元新聞記者の立場からメディアリレーションについて基礎から応用まで、詳しく解説していきますので、ぜひ最後までじっくりお読みください

 

※この記事は2017年2月17日にアップしましたが、2023年3月9日にリライトして再度アップしました

 

メディアリレーションとは?

メディアリレーションとは、企業や団体が報道機関との関係を築き、企業や製品、サービスなどをメディアに掲載してもらうことを目的としたPR活動の一つです。

報道機関との関係性を築くことで、世の中に広く知られるようになり、企業や団体のイメージアップにつながります。

 

メディアリレーションの種類

メディアリレーションには、大きく分けて2つの種類があります。

 

①積極的なメディアリレーション

企業や団体が、自ら積極的に情報提供を行い、メディアに掲載してもらう手法です。

企業や団体が、メディアが求めている情報を自ら提供することで、メディアでポジティブに報道してもらえれば、読者や視聴者からのイメージアップにつながることが期待できます。

 

②受動的なメディアリレーション

企業や団体が、メディアからの問い合わせに対して迅速に回答し、情報提供を行う手法です。

事件や事故、不祥事などの発生時は、この対応が特に重要です。

企業や団体が、問題発生時などにスムーズに対応することで、信頼性の向上につながることが期待できます。

 

メディアリレーションの目的

メディアリレーションを行う目的は、以下のようなものがあります。

・企業や団体の知名度アップ

・製品やサービスのPR

・信頼性の向上

・クライアントや顧客の獲得

・リスクマネジメント

 

メディアリレーションの効果

メディアリレーションによる効果は、以下の通りです。

・広く知られることができる

・信頼性の向上

・販売促進効果が期待できる

・リスクマネジメントにつながる

 

メディアの人も、あなたと仲良くなりたい

私は新聞記者でしたが、メディア側としても、「取材対象と信頼関係が築けるか?」は、仕事で成果をあげる大きなポイントでした。

というのも、メディアにとって良い情報を得られるかどうか?が、記事や番組の質に大きく関わってくるからです。

特に記者は、自社だけの「特ダネ」が欲しいです。

その意味でも、取材対象と信頼関係ができていれば、「あなたにだけこの情報を教えます」と言ってもらえるわけです。

だから、あなたが記者らと「良い関係を築きたい」と思っているのと同じように、記者らもあなたと「良い関係を築きたい」と考えているのです。

 

メディアと広報の間で、すれ違いが生じる原因

ただ問題は、記者やディレクターらは「営利企業のあからさまな宣伝はしない」という点にあります。

メディアは特定の企業を取り上げたいのではなく、「社会の課題」について取り上げたい。

ここに、メディアと広報の間で、コミュニケーションの行き違いが生じる大きな原因があります。

あなたは「メディアを使って宣伝したい」と思っているかもしれません。

しかし、メディアは「宣伝には使われたくない」と考えます。

ですが、根本的にはメディアもあなたと良い関係を築きたいと思っています。

そして、「社会にとって役に立つ記事や番組を作りたい」と考えています。

そのことを心に留めておきましょう。

 

ポイント1:マスメディアの理念を理解しておこう

ではここから、具体的にあなたがメディアリレーションを築くポイントをお伝えしていきます。

まず、ぜひマスメディアの理念を知っておいてください。

そこを理解しておけば、記者たちがどういう情報をニュースとして取り上げるべきだと考えているか、手に取るように分かるようになるはずです。

では、順番に説明していきましょう。

 

 1−1 マスメディアは社会を良くしたいと考えている

報道マスコミは、一言で言えば、「社会をより良くする」ことを目指して、日々の報道活動を行なっています。

日本新聞協会の倫理綱領には、次のような文言があります。

豊かで平和な未来のために力を尽くす

 

次に、朝日新聞綱領を引用します。

一、不偏不党の地に立って言論の自由を貫き、民主国家の完成と世界平和の確立に寄与す。

一、正義人道に基いて国民の幸福に献身し、一切の不法と暴力を排して腐敗と闘う。

(以下略)

 

報道機関にはいまだ正義を志向する文化が根強く残っています。

KADOKAWA・DWANGO代表取締役社長の川上量生さんは次のように語っています。

「日本にいろんな組織がありますけど、新聞業界ほど営利企業らしからぬ、いいことをやるっていう文化が残っている組織はないんですよ」

(※ニューズピックス記事 2015/4/22より)

 

 1−2 現場の記者は社会の役に立つ活動を評価する

特に、現場の若い記者の多くは、利潤の追求とはかけ離れた価値観で日々の仕事に取り組んでいます。

つまり、ジャーナリストとして「社会のために役立つ記事を書く」というのが彼らの動機付けとなっています。

一般の営利企業の方々には信じられないかもしれませんが、マスコミの記者たちに「稼ぐ」「儲かる」という発想はほぼ一切ありません。

だから、記者が取材するかどうかの判断は、それを記事にすることで社会の役に立つかどうか?という点にかかってくるのです。

 

 1−3 記者は利にさとい企業を嫌う

上記のように記者たちには、一般企業では当たり前の「稼ぐ」思考が一切欠落しています。むしろそうした利益追求の考え方を「卑しい」ものとして、低く見る傾向があります。

彼らには「武士は食わねど高楊枝」というプライドがあります。そして、形而上的な思考を好む傾向があります。

だから、企業の「稼ぐ」思考が露骨ににじみ出た広報やPR会社の担当者とは、話が全く噛み合わないことが起きてしまうのです。

 

ポイント2:マスメディアが取材する仕組みを知ろう

では次に、記者たちが情報をキャッチし、取材し、記事になるまでの流れを知っておきましょう。

 

 2−1 情報のキャッチ

新聞社やテレビ局が情報をキャッチするのは、概ね次のようなルートがあります。

 ・プレスリリース: 郵便、ファクス、メール等で情報が届く

 ・電話: 電話で情報提供を受ける

 ・記者クラブへの情報提供: 記者クラブで情報の提供を受ける

 ・記者個人の情報網からのキャッチ: それぞれの記者が自らの情報網から端緒を掴む

 

 2−2 取材

上記の各ルートから届けられた情報について、記者各人がそのニュース価値を見極め、取材するかどうかを判断します。

現場の記者がその判断に迷った場合、上司であるデスクにその判断を仰ぐことになります。

記者は、自分が手にした情報が、次の2つのどちらかに該当するかどうかに強い関心があります。

 その1:特ダネ(スクープ記事)

ライバル各社を出し抜いて、自社のみの独占記事として放たれる記事。これを書くことを多くの記者は目指しています。

上記の情報経路で言えば、多くは「自分独自の情報ネットワーク」から、この特ダネはもたらされます。

だから記者は、自分の独自の情報網を構築したいと考えています。

「タレコミ」と呼ばれる情報提供が特ダネになることもあります。これは電話やメール、郵便などで会社に寄せられるものです。

特ダネを連発していると、その社にはタレコミが増えます。「あの社に持ち込めば記事に仕上げてくれるのでは」と期待する人が増えるからです(週刊文春のスクープ連発は、まさにこの現象です)。

一方で、記者クラブへの情報提供(投げ込みと呼ばれます)や、各社一斉配信のファクスが届くと、記者は「他社もみんな知っている情報だろうな」と判断します。

この場合、スクープ記事をものにしよう、というほどのインセンティブ(動機付け)は記者に起きにくいわけです。

 

 その2 特オチ

記者たちは特ダネをものにしたいと考える一方、特オチに対して強い恐怖を抱きます。

特オチとは、特ダネの逆で、ある記事が「自社にだけ載っていない」という状態のことを指します。

特ダネ記事を書くのは難しく、並大抵ではありません。大勢の同業他社のライバル記者を出し抜く必要があるからです。

だから、特ダネ記事が書けないだけで、その記者の評価が大きく損なわれることは少ないと思います。

ですが、特オチは話が別です。「よその記者はみんな知っているのに、お前だけ知らないとは何事だ!」と、上司から記者としての能力が疑われてしまうのです。

その結果、人事評価を大きく下げてしまいます。だから記者は、特オチを非常に恐れます。

 

 2−3 記事掲載の権限を握る「デスク」によるチェック

さて、特ダネにせよ、各社横並びの記事にせよ、記者が書いた原稿は、最初に「デスク」と呼ばれるベテラン記者がそれをチェックします。

デスクは概ね現場で15年以上の経験を積んだベテラン記者で、40代が多いです。現場の若手記者が書いた原稿がニュースとして世の中に知らせるに値するものか?をチェックする役割です。

デスクはただ単に原稿を添削する存在ではありません。現場の記者に指示を飛ばす司令塔でもあります。取材の不足を感じれば、再取材を命じることもあります。

また、原稿を全く異なる切り口から再構成し、着眼の違う記事に作り変えてしまうこともあります。

だから、いくら現場の記者が「良いネタだ」と考えて原稿にしても、デスクがその原稿を通さなかったら、永遠にそれが記事として掲載されることはないのです。

 

 2−4 部長クラス、編集局幹部によるチェック

デスクを通った原稿は、9割方はそのままニュースとして世の中に届けられます。

だが、稀に「待った」がかかることがあります。デスクよりも高い役職にある部長クラスや編集局幹部が、その記事について注文をつけるケースが稀にあります。

その場合は、現場の記者に再取材・書き直しが命じられたり、場合によっては掲載が見送られたりすることもあります。

ただ、よほどセンシティブな案件の原稿でもない限り、この段階で掲載がストップされるに至ることは滅多にありません。

ポイント3:メディアリレーションを築く3つの行動

報道機関の仕組みを理解することで、どう取り組めばメディアリレーションを築けるか、が見えてくるのではないでしょうか。

具体的にやるべきことは、次の3つ。

 1 社会性のある情報をデザインする

自社利益のことしか考えない広報は、確実に記者たちに嫌われ、いずれ行き詰まります。

ジャーナリストのように自社を客観視し、社会の一員として発信しましょう。

商品サービスについてもストレートな宣伝ではなく、その社会的な価値が伝わるよう情報の加工を行う必要があります。

 

 2 プレスリリースを継続的に発信する

あなたの会社がトヨタのような超有名企業でもない限り、自ら情報を発信していかなればマスコミから目を向けてもらえません。

だからプレスリリースは必ず送るべきです。それも、メールによる一斉配信の外部サービスではなく、粘り強く自社配信を継続することです。

情報として価値のあるリリースをコツコツ継続すれば、いずれ記者の目にとまる日が来ます。

 

 3 記者との個人的な関係を築く

記者は、前述の通り自分だけの特ダネを書きたいと考えています。そのために独自の人脈を築きたい、と考えています。

だから、あなたは記者と個人的な関係を築けばいいのです。そして、わが社の話に限らず、その記者にとって役立つ情報提供を続ければ、記者は必ずあなたを大事にしてくれます。

 

言うまでもなく、最も重要なのは1「社会性のある情報のデザイン」です。

自社が言いたいことありきで発信を続けていては、マスコミに関心を持ってもらえる可能性は限りなく低いです。

まずは、ニュース価値のある情報をつくることです。

その上で、報道機関・記者との接触を地道に続けていけば、あなたの会社はその他大勢の会社から一歩も二歩も抜け出せるでしょう。

 

メディアリレーションを築くための注意点

メディアと信頼関係を築く、と言っても、単に「仲良くなる」だけを目指すわけではありません。

いくら仲が良くても、提供いただける情報にニュース価値がなければ、取り上げようがありません。

私の場合、以前からの友達がある組織の広報担当になり、「友達だから記事にして当然でしょ」と言わんばかりの対応をされたことがあります。

「友情を人質に取られた」ように感じて、苦しさを感じました。

正直に言って、友達なのでできる限り記事にはしたい、と思いました。

ですが、そもそものニュースバリューが、自社の媒体の基準に達していないものは、どうしても取りあげようがないのです。それが現実。

だから、社会性、ニュース価値がある情報提供をしていただきたいのです。

それが分からなければ、率直にメディアの人に「この素材は、どうしたら報道価値が出るでしょう?」と尋ねてみてもいいでしょう。

価値のあるネタを持っている、その上で、気持ちよく付き合える人柄の人物であれば、記者にとって最高のパートナーになれます。

 

記者が付き合いたい広報担当者とは?

(1)質問したら、それにすぐ対応してくれる

記者にとって、取材で質問を投げかけたら、すぐに答えてくれる方は貴重です。

自社のことは知らないことだらけ…という人が広報担当だと、記者はとても困ります。

記者の突っ込んだ質問にもある程度、すぐ答えられる知識と能力のある方が広報を担当すべきです。

もしすぐに答えられないことがあっても、すぐに社内に手配して回答を速やかに出そうという誠意ある姿勢があれば、記者は評価してくれます。

メディアの人とは、誠実に、正直に付き合ってください。

 

(2)顔が広い、人脈を紹介してもらえる

メディアの人にとって、情報こそが飯のタネです。だから、価値ある情報をノドから手が出るほど欲しいです。

そうした価値あるレアな情報ほど、ネットではなく、人を直接介してもたらされます。

だから、記者は多くの人脈を持っていて、そうした人脈を紹介してくれる人を好みます。

「自分には大した人脈はない」と嘆く必要はありません。今あなたが持っている人脈を、記者に提供しよう、という姿勢を示すだけでも、記者にはとてもありがたく感じてくれます。

 

(3)記者の立場に寄り添ってくれる

広報担当の方は、社会と自社の間をつなぐ窓口のようなものです。両者の視点を持っておくことが望ましいでしょう。

自社の利益代弁ばかり主張して、記者の声に耳を貸さない広報担当者は、記者から真っ先に嫌われます。(実際こういう方が多数派なのですが…)

その逆に、記者からの要望があった時、社内に投げ返して対応を求める度量のある広報担当者を、記者は信頼するようになります。

 

まとめ:メディアリレーションは、記者へのリスペクトなくして成立しない

マスコミ・報道機関は、世の中をより良くするために、読者・視聴者に有益な情報を届けたいと考えています。

そのために、記者たちは心身に強いストレスを受けながら、取材の現場を日々駆け回り、歯を食いしばっています。一般の人が思っているよりもはるかに泥臭い仕事なのです。

広報を「お金がかからない宣伝」と安易に考えていると、痛い目を見ますよ。

もちろん、営利企業であるからこそ、自社の宣伝をしたい気持ちは痛いほどよくわかります。

しかし、「記者たちは宣伝はしない」「その代わり社会について取り上げる」という根本を理解しておいてください。

「社会の役に立とう」という姿勢さえ崩さなければ、あなたはマスメディア記者ときっと良い関係を築けて、世の中に良い影響を広げていけるでしょう。

それから、広報と記者は、どちらが上でどちらが下、ということはありません。お互いにそれぞれの役割があって、対等な立場です。

お互いの仕事を理解しあって、良い関係を築ける記者と広報の方が増えてほしい、と心から願っています。

 

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