続きを読む

記者が教える広報PRの方法

広報PR情報No.1サイト 元読売新聞記者 坂本宗之祐

アナと雪の女王2の広報PR戦略を考察する


広報・メディアコンサルタントの坂本宗之祐です。

ウォルト・ディズニー・ジャパンが11月22日に公開した映画「アナと雪の女王2」が大きな話題になっており、興行収入も好調なようです。

私も前作に関して、2014年にヤフーニュースでこのような記事を書きました。

・映画館に再び活気? 『アナと雪の女王』が与える影響

今回、この続編となるアナ雪2の広報PR戦略について、考察してみたいと思います。

ウォルト・ディズニー・ジャパンのニュースリリース

ウォルト・ディズニー・ジャパンのこれまでのアナ雪2に関する情報発信をみてみると、公開に向けた周到な準備と熱の入れようがうかがえます。

様々な切り口、あらゆる機会を捉えてリリースを発信し、メディアに情報を提供しているのがわかります。

一番最初の発表は、

2019.02.20 『アナと雪の女王2』11月22日(金)日米同時公開決定!

次のリリースまでは、3か月以上も空きました。

2019.06.04 『アナと雪の女王2』世界に先駆け解禁!日本限定ビジュアルポスター

2019.06.18 『アナと雪の女王2』日本版特報解禁!隠された秘密をめぐる物語がついに動き出す!

というように、小出しの情報発信が始まります。

 

そして公開を4日月後に控えた7月、

・2019.07.11 『アナと雪の女王2』松たか子さん、神田沙也加さんが日本版キャスト続投決定!日本版吹替特報、解禁

一般の高い関心を集めるであろう、日本語版の声優が発表されました。

以降、アナ雪2に関するニュースリリースは

8月 :1回

9月 :5回(前売り券の発売決定、メイン楽曲「イントゥ・ジ・アンノウン」解禁など)

10月 :7回(母親役の日本版声優に吉田羊さん決定など)

11月 :9回(※11/28現在まで)

と尻上がりに増加していきます。

 

小ネタと勝負ネタの緩急をつけている

こうしたリリースの中には、些細とも思えるリリースもあります。

・グッズ付き前売券、セブンネットショッピングで予約受付中

・メイン楽曲の邦題決定

・公開記念 イントゥ・ジ・アンノウン気になるキャンペーン

・豪華賞品をプレゼント

・日本オリジナルポスターが解禁

などです。

しかし、情報を小出しにすることで、アナ雪2への関心をつなぎとめるとともに、情報への飢餓感を募らせる効果があったものと推察されます。

小さな情報でも、メディアにとっては格好のネタとなったことでしょう。

もちろん、小ネタばかりではなく、要所要所に関心度の高いニュースを発表しています。

映画公開前日の11月21日には、

監督との再会に日本のアナ・神田沙也加さんが感涙!『アナと雪の女王2』スペシャルイベントを実施!

という、メディア的に画になるイベントを打ち込んでくるあたり、「うまいな」と感じ入りました。

 

発信の頻度はさすが

広報活動を行うにあたって、こうした情報発信の頻度は、最低限必要なことです。

逆にいうと、極めて認知度の高いアナ雪ですら、ここまで高い頻度で情報発信をやっている、ということです。

大した発信もせずに「商品サービスが広まらない」と嘆いている事業者の方々は、この事実を直視するべきでしょう。

 

※(参考)ウォルト・ディズニー・ジャパン公式サイト

 

公開2か月前から集中的な情報発信を開始した背景

アナ雪2に関して、ウォルト・ディズニー・ジャパンは1年近く前に公開日を発表したものの、その後数か月は沈黙を保ちました。

6月から小出しに情報を出し、公開を2か月後に控えた9月下旬から集中的に情報発信を始めたのです。

今の時代は、人々の興味関心を引きつけるエンタメコンテンツが劇的に増えています。

このため、あまりに早い段階から情報を出しても忘れられてしまうリスクが高くなっているからだと思われます

ハリウッドのトップマーケッターの一人、マイケル・モーゼス(ユニバーサル・ピクチャーズ)も次のように語っています。

消費者を1年かけて取り込んでいく時代は終わりました。いろいろなことがNetflixの作品や宣伝活動のサイクルに影響を受けています。

今日、消費者の関心を惹き、確保して、維持することは難しいため、宣伝期間を短縮するようになりました。

重要な宣伝を圧縮して展開することで、強い印象を残すのです。

※GEM Partners社「クリエイティブなメディア戦略の必要性~マスなのかデジタルなのかの二元論を超えて~」より引用

 

アナ雪2のメディア露出(主にテレビ)

上記の公式発表をもとに、映画関連などエンタメメディア(ウェブ、雑誌)を中心に、大量の紹介記事が露出していきます。

特に、大きなインパクトを与える地上波テレビでの紹介状況を見ていきます。

把握できたものだけでも、以下の通り。

11月18日 めざましテレビ(フジテレビ)

11月17日 シューイチ(日本テレビ)

11月16日 王様のブランチ(TBS)

11月16日 めざましどようび(フジテレビ)

11月16日 まるっと!サタデー(TBS)

11月15日 ZIP!(日本テレビ)

11月15日 金曜ロードSHOW! (日本テレビ)

11月14日 ZIP!(日本テレビ)

11月14日 バゲット(日本テレビ)

11月14日 Oha!4 NEWS LIVE(日本テレビ)

11月14日 めざましテレビ全部見せ(フジテレビ)

11月11日 スッキリ(日本テレビ)

11月8日 ZIP!(日本テレビ)

10月31日 ZIP!(日本テレビ)

10月25日 はやドキ!(TBS)

10月25日 ZIP!(日本テレビ)

10月10日 ZIP!(日本テレビ)

10月5日 王様のブランチ(TBS)

10月1日 めざましテレビ全部見せ(フジテレビ)

10月1日 めざましテレビ(フジテレビ)

10月1日 Live News it!(フジテレビ)

9月24日 あさチャン!(TBS) 

9月24日 はやドキ! (TBS)

 

公開1週間前にピークを持ってきた

上記、アナ雪2に関するニュースリリースの発行頻度と符号を合わせるように、9月→10月→11月と、尻上がりにテレビ露出が激増しています。

特に、公開1週間前には集中的に各テレビ番組で紹介されています。

家族づれが週末の予定を決めてしまう前にアナ雪2の公開日をリマインドし、「そうだった、アナ雪2を観に行こう」と促す意図があったものと思われます。

テレビ局側としても、アナ雪2の情報なら視聴率アップが見込めるため、双方の思惑が一致した現れと言えるでしょう。

 

戦略的な関連コラボ商品の発売

そして目を引いたのは、映画公開を間近に控えた2019年10月からのアナ雪のコラボ商品展開です。

明らかに映画公開前を狙いすましたタイミング。消費者の関心を引きつけるために10月から集中的に投下しているのが見て取れます。

私が確認できたものだけでも、おもちゃや生活雑貨など13件に上ります。

・ジーユー、スペシャルコレクション発売 2019/11/15

・イオン、イオン限定オリジナル商品27品目発売 2019/11/07

・ヤクルト、「ジョア 贅沢オレンジ」発売 2019/11/01

・タカラトミー、スマートフォン型おもちゃなど発売 2019/10/29

・アシックス、子ども靴を発売 2019/10/23

・日本製紙クレシア、「クリネックス」発売 2019/10/18

・クラシエホームプロダクツ、ボディウォッシュ発売 2019/10/16

・ナカバヤシ、アルバムシリーズ発売 2019/10/07

・オリエンタルランド、オリジナルグッズ発売 2019/10/04

・シチズン時計、レディースウオッチ発売 2019/10/04

・ライオン、「クリニカKid’s」発売 2019/10/04

・タカラトミーアーツ、ぬいぐるみ発売

・資生堂、化粧品を発売

 

生活に身近な商品が多いですね。こうして人々の生活のなかに入り込み、アナ雪2との接触頻度を高める効果を狙ったものとみられます。

もちろん、ウォルト・ディズニー・ジャパンにはこれら企業から権利収入まで得られるはずですから、まさに一石二鳥というわけです。

 

コラボCMの展開

ウォルト・ディズニー・ジャパン単体によるアナ雪2のテレビCMは確認できません。

しかし、企業とコラボしたCMのオンエアが最近、複数で始まりました。

 

・【資生堂】アナと雪の女王2タイアップ

 

・【三井ホーム】「アナと雪の女王2」

 

ここまで来ると、ため息しか出ません。他社のテレビCMで自らの映画を宣伝してもらうとは・・・。

抜け目がなく、かつ周到ですね。

 

(結論)圧倒的なコンテンツ力が勝因

アナ雪という、圧倒的なコンテンツ力がすべての勝因と言って良いでしょう。

メディア露出に関していえば、情報を出しさえすればメディアが取り上げてくれる。まさに入れ食い状態です。

それも、コンテンツ自体に魅力があるから。前作のアナ雪1が築き上げたブランドの賜物です。

これが広報の理想形。メディアから頭を下げて「取り上げさせてください」と来てもらうことが一番です。

ただ、ウォルト・ディズニー・ジャパンはそのコンテンツ力にあぐらをかくことなく、周到かつ緻密、そして徹底的に情報を発信しています。

今後は、今作品アナ雪2そのものの評価が問われてくるでしょう。

私も映画館に足を運び、鑑賞してきたいと思います。

 

広報PRを成功させたい企業の方々は、このアナ雪2の広報PRの展開から学ぶべきです。

①コンテンツ力を高める

②発信の頻度を高め、接触頻度と機会を増やす

この基本に立ち返り、広報活動を頑張ってください!

 

 

無料電子ブック

「経営者・個人事業主のための“広告費ゼロ”PR戦略
〜新聞テレビWEBを活用して売上を高める方法〜
(全50ページ)


効果的な情報発信のやり方を調べているけれども、「どうしたら良いのか分からない」と悩んでいませんか?

この冊子では、

・マスメディアに登場する圧倒的メリット
・成功するPR戦略の全体像
・自らのニュース価値(強み・特徴)を掘り起こす方法
・記者が取材したくなる4つの切り口

など、具体的なPRの取り組み等を50ページにわたって詳しく説明しています。

ぜひあなたの情報を広めるためにお役立てください。

無料ダウンロード(期間限定)

「国内メディアリスト(新聞社・テレビ局・雑誌)
(計803)

 media-list-imageこのリストでは

・全国のテレビ局(185)
・全国の新聞社(135)
・雑誌(209)
・ラジオ局、CATVなど(274)

これらの媒体名、所在地をエクセルで一覧にまとめています。

ぜひあなたの情報発信にお役立てください。