自治体広報のメディア戦略!地域の魅力を世の中に広めるPR戦略5つのステップと具体的3事例
自治体の広報はとても重要です。なぜなら自治体の運営には、住民との相互理解が不可欠だからです。
私は読売新聞の記者として、県庁や市役所など数多くの自治体を取材し、たくさんの記事を書いてきました。
病院の建設・移転問題、新幹線の建設問題…などなど、住民の意見を二分するようなシビアな自治体案件をたくさん記事にしました。
私からみて、多くの自治体の広報はまだまだ手探りで、腰が定まっていないように感じるところが多いです。
これからは人口が減り、地域間の競争が激しさを増していく時代になります。
だからどの自治体も、地域の魅力やビジョン、将来展望を住民に知ってもらえるよう、しっかり広報していかなければなりません。
この記事では、人々から選ばれる自治体ブランドを築き、地域社会を発展させていくために、自治体広報のメディア戦略について紹介していきます。
※この記事は2022年12月15日にアップしましたが、2024年3月31日リライトして再度公開しました
目次
自治体がやるべき3つの広報戦略
私は新聞記者時代から、数多くの自治体を見てきました。
その中には、素晴らしい事業、取り組みをしているところがたくさんあります。
しかし、せっかく良い取り組みをしていても、それが十分に住民や他の地域の人々に伝わっていないケースがたくさんあります。それでは本当にもったいないのです。
自治体がやるべき広報戦略は、大きく言って以下の3つがあります。
⑴地域住民への情報提供(住民満足度の向上)
まず第一には、その地域で暮らす住民に対する正しい情報の提供です。
自治体には、その土地で暮らす住民の命と財産を守る責任があります。
台風や地震などの災害、コロナのような疫病、といった命に関わる情報を伝えることは特に大切です。
このほか、消防やごみ処理、上下水道の整備、公園や公民館など、
住民がより便利で快適な生活を送れるような行政の取り組みについて、住民間で不公平が生じないように広く情報の周知を図る必要もあります。
⑵移住・定住、観光客誘致の促進(人を呼び込む)
最近特に自治体広報で求められるのが、地元住民以外に向けた、対外的な広報です。
この数十年、高速道路網や新幹線などの交通インフラが全国で一気に整備が進んだこともあり、人々の行動範囲は大きく広がりました。
このことは、地域住民を都市部に流出させ、地域経済の衰退を招きましたが、逆に言えば、都市住民を地方エリアまで呼び込むチャンスも出現しています。
インターネットの普及、コロナ禍によるリモートワークの普及もあり、地方へのUターンIターンも増えつつあります。
そうした移住者や観光客を呼び込むために、地域や自治体の特色や魅力を広く知ってもらう広報活動の重要性はますます高まっています。
⑶地域経済の活性化(お金を呼び込む)
自治体の明るい将来展望を描くために、人を呼び込むことと共に欠かせないのが、安定した財源の確保です。
そこで効果的なのが、外部からの企業の誘致です。かつて多くの自治体は大型工業団地などを開発して工場を誘致し、税収と雇用の確保を図りました。
最近は、製造業の海外流出もあり、脚光を浴びるようになったのがIT系の企業の誘致です。既述のテレワーク普及もあり、地方への本社移転も進んでいます。
こうした企業誘致のほか、地元企業の販路拡大や、地元特産品の販売促進などにも、広く外部に広報を行う重要性が高まっています。
自治体広報は、メディア戦略で飛躍できる!
現代は、あらゆる情報発信の手段があります。ですので、ついいろんな手段に目移りしてしまうことでしょう。
しかし、自治体広報を考えた時に、その戦略の中心に据えるべきは「新聞テレビ向けのパブリシティ」であると私は考えています。
つまり、新聞テレビの記者を巻き込み、ニュースで取り上げてもらう「メディア戦略」です。
「ウェブが使える時代になぜ?」と思われる方も多いと思いますが、合理的な理由があります。
その理由を以下に挙げます。
①自治体は、新聞テレビ記者から信頼されている
新聞テレビは古いメディアで、その重要性は低下しているという指摘が増えています。
しかし、自治体は、新聞テレビの報道機関向けの広報において、大きなアドバンテージを持っています。
つまり、新聞やテレビから根本的に“取り上げられやすい”のです。
私も新聞記者時代、営利企業よりも、「公共性の高い自治体を記事にする」という優先順位が常に頭の中にありました。
新聞テレビも自治体も、「公共の利益の実現」を目指している点で、同じゴールを共有する同志、仲間なのです。
ところが、自治体職員の方の多くは、このアドバンテージを理解しておらず、新聞テレビの報道記者をうまく使えていません。
「非常にもったいない!」といつも感じています。
報道機関には、企業からプレスリリースが大量に届きます。しかし民間企業のプレスリリースには記者の関心は低いです。多くが社会性に乏しいからです。
しかし、自治体のプレスリリースは公共性・社会性が高く、「新聞やテレビのニュースで取り上げる大義名分がある」と判断しやすいのです。
そして、新聞やテレビで紹介された記事や番組について、市民は「記者が客観的な視点で報じた情報」として読んでくれます。
だから、人々に高い信頼性とインパクトを与えることができます。
②ウェブでの発信は競争率が高く、埋もれやすい
SNSやYouTubeなどを通じて発信する自治体が増えています。もちろん悪いことではありません。
しかし、SNSやYouTubeなどといったウェブで発信することは、天才的な個人や、予算をふんだんに使える大企業などと「全く同じ土俵」で戦うことを意味します。
つまり、ウェブの世界は強力なライバルがしのぎを削り合う“レッドオーシャン”です。
この舞台で突き抜けて、多くの注目を集めるコンテンツを制作し続けるのは並大抵なことではありません。
特にこの数年は、SNSやYouTubeで発信されるコンテンツのレベルが大きく上がっています。
付け焼き刃で素人の担当者がSNSやYouTubeに取り組んでも、大きな成果は望みにくいです。
どんな勝負事でも言えることですが、勝利を収めるためには、自らの有利性を活かせる舞台・土俵を選び、そこで戦うべきです。
その意味でも、自治体は全ての発信者が横一線でフラットに競争させられるSNSやYouTubeよりも、新聞やテレビの世界の方がはるかに勝ちやすいです。
③全国どの地域にも新聞やテレビの記者が存在する
全国47都道府県の隅々まで、新聞記者やテレビの記者は存在します。そして、どの新聞社・テレビ局も、市町村単位ごとに担当記者を決めています。
つまり、あなたの自治体を担当している記者は、新聞テレビ各社にいます。
例えば、私は読売新聞の駆け出し記者時代、大分県北部の1市4町村が担当でした。これらの自治体で起きるニュースは、全て私の責任でした。
「県庁所在地や大きな都市しか、新聞やテレビの記者は取材しない」
と思い込んでいるローカル自治体の職員の方はかなり多いです。しかしそれは全くの誤りです。
あなたの自治体がこれまで、なかなか取材されていない原因は、あなたたちが記者に対して情報を発信していないからです。
駆け出しの私の場合、受け持ちエリアで最大都市の中津市がどうしても取材の中心でした。しかし、「他の4町村をもっと取材したい」という気持ちは常に持っていたのです。
ですが、ローカルの4町村まで足を運ぶきっかけになる情報がなかなかありませんでしたし、たまに4町村の役場に出かけても、職員さんが積極的にメディア対応する雰囲気はありませんでした。
だからどうしても足が遠くなってしまい、必然的に出稿する記事も少なくなったのです。
しかし、今となって思えば、「ローカル地域にも相当なネタがあった」と感じています。
記者は誰しも、「埋もれた情報を掘り起こしたい」という本能があります。
あまり知られていないローカルなエリアほど、「まだ埋もれた情報があるはずだ」と記者は潜在的に関心を持っています。
ですので、記者たちに取材の呼び水になるような、ちょっとした情報提供を行うことをぜひやってみてください。
あなたが想像しているよりもはるかに、記者はあなたの地域に前のめりになって関心を示してくれるはずです。
ある市における住民の情報取得媒体の調査結果
日本広報協会が、ある自治体の住民に、「どのメディアから市の情報を得ているか?」調査した結果があります。
以下のような結果でした。
市広報紙 83.7%
議会だより 46.9%
家族・友人・知人との会話 41.2%
新聞記事 39.7%
公共施設などでのポスター・パンフレット・チラシ 31.6%
フリーペーパー 31.3%
テレビ番組・報道 22.4%
市ウェブサイト 13.9%
※日本広報協会「自治体の広報活動調査からみた自治体広報紙の必要性」より
ここで注目すべきは、「市のウェブサイトよりも、はるかに新聞テレビ等の報道が見られている」という事実です。
上記にはありませんが、SNSに至っては惨憺たる結果でした。市のツイッターから情報を得ている住民は0.8%、フェイスブックは0.7%、という結果だったのです。
この自治体はたまたま極端に低い結果だったのかもしれませんが、こうした自治体は他にも多数あるのは間違いありません。
こうしたことからも、私は自治体広報の戦略の中心に据えるべきは「新聞テレビ向けのパブリシティ」(メディア戦略)だと考えています。
自治体の規模別・広報PR戦略
自治体、と一言で言っても、東京都のような一つの国家にも匹敵するような巨大組織もあれば、人口数百人ほどの小さな町や村まで、その規模は大小様々です。
ですので、そうした自治体を規模に応じて3つに分け、各々にふさわしい広報戦略のあり方をお伝えしたいと思います。
(1)都道府県・政令市レベル(人口100万人程度〜)
このクラスの自治体はすでに高い知名度・ネームバリューがあります。
ですので、組織として何らかのアクションを起こした際には、黙っていても世の中に広く知られるニュースに比較的なりやすいと言えます。
しかも、これらの自治体には必ず「記者クラブ」が存在し、常に新聞テレビラジオの記者が役所内に常駐しています。
その意味でも、他の自治体と比べてかなりアドバンテージがありますから、積極的にこの環境を活用すべきです。
ただ、注意点があります。それは注目度が高いがゆえに、もし不祥事や事件・事故が発生した場合は、ネガティブな情報を一瞬で世の中に広められてしまう、という点です。
ですので、このレベルの自治体広報においては、ポジティブな情報を届ける「攻めの広報」とともに、
ネガティブな情報の連鎖=炎上を食い止める「守りの広報」にも意識的に取り組む必要があります。
大切なのは、日常的に記者と丁寧なコミュニケーションを心がけ、相互の信頼関係を育んでいくことです。
そのためにも、メディアや記者の差別をしてはいけません。
私がかつて担当したある自治体では「日経新聞を重視する」と打ち出して、記者クラブの大半の記者から総スカンを食いました。
媒体や記者によって差別することなく、どの社も公平にリスペクトした広報対応を重ねていきましょう。
(2)中核市レベル(人口数十万人程度)
このクラスの自治体は、県内レベルであれば高い知名度があります。
このため、何かアクションを起こせば、県内のテレビや新聞で報道してもらうことは、そこまで難しくありません。
記者クラブも役所内にあり、定期的に新聞テレビの記者が出入りしているため、彼らと接触も図りやすいはずです。
ただこうした自治体の問題は、多くの情報発信が県内レベルにとどまってしまい、広域での情報の拡散がなかなかできない点にあります。
ですので、中核市レベルの自治体が広報を強化するためには、地元メディア記者との関係を大切に育みつつも、県外メディアにもコネクションを広げていく地道な活動が欠かせません。
まずは、地元にいる記者との関係を大切に育んでください。
「県外に発信したい!」ばかり先立って、地元の記者を軽視してしまい、結果的に地元の記者から軽視されるようになったケースは、実は少なくありません。
今あなたの地域にいる記者1人1人を大切にしましょう。
いずれあなたの地域の強力な応援者になり、彼らが県外にも発信してくれる記事や番組を作ってくれるようになります。
それからプレスリリースや情報発信にあたって重要なのは、情報コンテンツの中身です。
県外メディアにも「これは希少なニュース価値がある」と認めてもらえる情報コンテンツの開発を並行して進めていきましょう。
(3)上記以外の市町村レベル(人口千〜10万人未満)
全国どの県にも、人口規模の少ない小規模自治体が複数あります。
しかもこうした地域の多くでは人口減少が顕著に進んでいるため、最も広報に取り組む必要性・緊急性が最も高い地域だと言えるかもしれません。
こうした自治体こそ、今すぐ報道機関に対する広報PRを始めるべきです。
はっきり言って、この規模の自治体は戦略を立てる必要すらありません。今すぐ発信を始めましょう!
「あらゆる動きを広報ネタにする」と考え、プレスリリースに落とし込み、県内の報道機関に知らせ始めてください。
「何もしていない自治体」はありません。だから何かしら発信できる小ネタがあるはずです。
「ウチみたいな小さな自治体が発信しても無理」
こういう思い込みが、いちばんの障害です。今すぐその思考を消し去りましょう。
近隣の県庁所在地、あるいは中核市を探せば、必ず誰かしら新聞テレビの記者は存在します。そして彼らは、あなたの地域からの情報を待っているのです。
新聞テレビの報道機関はどの社も、「過疎問題」に強い関心を持っています。「地方創生」という大義名分もあります。
ですので、小規模自治体を「報道で応援したい」というニーズは強くあります。
「うちには大したネタはない」と自己判断しないでください。あなたの視点と記者の視点は180度違います。
今すぐ情報提供を開始しましょう。そしてそれを一過性に終わらせず、発信を継続してください。
いずれ必ずや、あなたの地域を応援してくれる記者が現れるでしょう。
自治体広報のメディア戦略5ステップ
1、現状の把握
まずは現状で、どのような広報活動ができているのか?を整理しておきましょう。
どんな広報媒体を使い、どんな情報をどれくらいの頻度で発信できているでしょうか?
いつでも連絡が取れる記者ら報道関係者のネットワークはどれくらいあるでしょうか?
うまくいっている点、うまくいっていない点をしっかり洗い出して客観視してください。
どうしても、うまくいっていない点に目が行ってしまいがちだと思います。しかし、負の側面ばかりに目を向けてはいけません。
必ず、小さくてもうまくいっている点もあるはずです。その点も評価することで、前向きに次のステップに進みましょう。
2、目的の明確化
現状をある程度把握できたら、次にやるべきことは、広報によってどのような目標を達成するのか?という点を明確にすることです。
・住民の満足度を高めるために、住民向け広報に取り組むのか?
・移住や転入を促し、定住人口を増やすために広報に取り組むのか?
・企業の誘致を進めるため?
・観光客の流入を増やすため?
・あるいはその全部?
あなたの自治体の置かれた状況を勘案しながら、自治体のトップも交えながら、広報の目的ははっきりさせて意思統一を図りましょう。
3、メッセージの言語化
広報の目的が決まったら、次に考えるべきことは次の3つ。
①誰に対して?
②具体的に何を伝え
③具体的にどんな行動(アクション)を促すのか?
この3点を具体的に検討しながら、あなたの自治体が発信すべき「コアメッセージ」を作り上げていってください。
①市外に住む20代の夫婦に対して
②当市の優れた交通アクセス(電車で東京から最速35分)を伝え
③市HP内に設置した移住相談フォームへの登録を促す
などといった感じです。
4、利用する媒体の選定
伝えたいメッセージとそのターゲットが決まったら、その目的を達成するために最適なメディア(媒体)は何か?を検討します。
若い人向けには、動画やSNSが効果的であるケースは多いでしょう。
ただ、若い人向けだからといって、新聞テレビといった古いマスメディアを避ける必要はありません。
新聞テレビの記者が書いた記事は、Yahoo!ニュースなどのオンラインニュースサービスを通じても、広く人々のスマホに情報が届きます。
社会性の高い情報ほど、新聞テレビでは取り上げられやすいですので、ぜひ積極的に新聞テレビに情報を提供しましょう。
5、達成目標の設定
かつては、「広報の効果測定は難しい」というのが定説でした。ですがオンライン化・デジタル化が進んだ今、メディア露出の効果測定は以前よりもやりやすくなっています。
ですので、例えば
・メール登録者●人
・月間PV数●●
・申込数●●件
など、仮定の目標値を設定しておけば、ただ闇雲に情報を出すだけよりも張り合いが出るでしょう。
(もちろん、担当者に過度の負担がかかるようなノルマにしてはいけません)
自治体広報がメディア戦略を遂行する際の5大重要ポイント
自治体が広報を進めていくに当たり、大事なポイントを以下に5つ紹介していきます。
住民との双方向コミュニケーション
ともすれば行政の広報は、一方通行の情報発信に陥りがちです。
住民に喜ばれる行政運営と広報を行なっていくために、住民が何を求めているのか?について、敏感に耳を傾けましょう。
日本広報協会が、ある市の住民に対して実施したアンケートの結果があります。
市の情報に対するニーズを尋ねたところ、以下のような順位と割合が出ました。
1 健康・福祉・医療介護 76.4%
2 防犯・防災 47.8%
3 環境・ごみ・リサイクル 45.7%
4 観光(観光名所・イベント) 33.4%
5 各種証明・届出(税・戸籍など) 30.4%
6 教育(子育て・学校) 30.3%
7 市の施策、計画 26.5%
8 生涯教育(講座・サークル活動) 25.4%
9 住まい・上下水道 23.6%
10 都市計画・道路 23.1%
※日本広報協会「自治体の広報活動調査からみた自治体広報紙の必要性」より
もちろん地域によって住民のニーズは異なりますが、上記は参考になると思います。
あなたの地域の住民がどのような情報ニーズを持っているのか?調査することは有意義でしょう。
首長と広報部門の密な連携
多くの自治体を取材してきて感じるのは、自治体によって、広報に対する意識があまりにも違いすぎる、ということです。
ある市長はメディア出身で、極めて情報発信に関心が高く、広報担当者とも毎日のように意見交換しながら戦略的な広報を行なっています。
ところが一方で、トップに情報発信の意識が乏しく、広報の職員に「良きにはからえ」と丸投げしているケースも少なくありません。
トップである首長と広報担当者が、同じ熱量で一所懸命に広報に取り組んでいるケースはかなり稀といえるでしょう。
自治体の広報は、トップ1人だけではできませんし、かたや現場の広報担当職員だけがいくら頑張っても限界があります。
政府を見れば、総理大臣を支える官房長官がいかに重要な存在か?分かるはずです。
連日、官房長官は政府のスポークスマンとしてメディアの前で記者会見して情報を発信しています。
その官房長官と総理大臣が常日頃から情報を共有し、同じ方向を向いて足並みを揃えていなければ、行政はスムーズに運営できません。
情報コンテンツの開発
情報とは、むやみやたらに発信すれば良い、というものではありません。
現代のように、これだけ情報が爆発的にあふれている時代は、凡庸なコンテンツを発信してもすぐに埋もれてしまいます。
受け手の目も肥えてきていますから、他の情報発信との違いを打ち出す必要があります。
そのために必要なのが、人々の興味関心を惹きつける情報コンテンツの開発です。
・他にはない
・今まで聞いたことがない
・常識を超えている
このようなイベントや行政施策、企画を立てられないか?職員同士で知恵とアイデアを発想し合いましょう。
職員間の広報マインドの醸成
私の経験上、どの自治体にも100%、宝の山のような情報がたくさん埋もれています。
いわば、どの地域にもネタは絶対にあるのです。
なのにどうして、多くの自治体は情報発信がうまくできていないのか?それは、個々の職員たちの広報への意識が乏しいからです。
せっかくの良い情報を、意識的・無意識的に眠らせているのです。
これからの自治体は、一人ひとりの職員が情報発信の当事者である意識を持つことが極めて重要です。
(※杉並区広報戦略より引用)
情熱を込めて発信し、その頻度を増やす
広報には様々なテクニックやノウハウが、確かにあります。
しかし、広報の正否を最終的に決めるのは、そうしたテクニックやノウハウではありません。
情報を発信する人の“熱意”“熱量”です。そしてそこから派生する発信の頻度です。
いくら優れた情報でも、人の熱い想いがなければ、その伝達力は大幅に低下します。
逆に、情報自体のバリューが多少低かったとしても、そこに関わる人に「これを伝えたい!」という熱い思いがあれば、その情報は広まっていくものなのです。
「お役所仕事」という言い方があります。業務を杓子定規で型通りに行う様子を皮肉った表現です。
こと広報に関しては特に、「お役所仕事」は御法度です。
自治体が抱える主な広報の課題5つ
私はこの20年余り、多くの企業団体の広報活動を見てきましたが、自治体に特徴的に見られる課題として以下の5つを感じています。
1、定型業務のルーティン化
多くの自治体広報は、業務がルーティン化されています。
例えば、広報紙の毎月の発行、ホームページの更新、業務担当課からのプレスリリースの配信、などです。
広報に限らず、やるべき作業を効率的に進めることはもちろん大切なことです。ところが、自治体が行う広報の大きな意義や目的を見失い、ただ目の前の作業をこなすことに追われてしまうケースは少なくありません。
2、一方通行の啓発広報
広報とは本来、情報を発信する側と情報を受け取る側、双方のやり取りによって成立するコミュニケーション活動です。
ところが、まだ多くの自治体では、「住民に知らしめる」というお上マインドが抜け切らず、一方的な発信に終わっているケースが見られます。
インターネット以前のように、人々が受け取る情報手段が極めて限られていた時代ならいざ知らず、今の時代には、こちら側から一方的に情報を与えて「知らしめる」「啓発する」という姿勢で広報をやってもうまくいきません。
なぜなら、情報の受け手には無数の選択肢があります。自分達が読みたくもない情報をすすんで読みにくるほど、ヒマではなくなっているのです。だから、一方的な情報の垂れ流しは今の時代には通用しません。
3 前例踏襲の繰り返しによる閉塞感
戦略的な広報で効果を上げるには、世の中の流れを敏感に捉え、臨機応変に対応していくことが求められます。
「前例踏襲」ほど、広報戦略において無意味なものはありません。なぜなら、前例があること=目新しさがない、ということです。
目新しさのない情報は、人々の耳目を集める「ニュース」には、到底なり得ません。
自治体の多くの職場では、前例を踏み越えることを相互で牽制し合うような雰囲気があります。
広報においては結果、無難な情報の発信を繰り返し、「結局何も変わらない」という閉塞感が漂っています。
4 顔の見えない、無難な発信
自治体が、「我が街の魅力を発信しよう」となると、不思議なことに判で押したように
・美味しい食べ物
・美しい景色
といったもののオンパレードになります。
正直言って、美味しいもの、美しい風景は、日本中どこにでもあります。ですので、そうした発信を見てもほとんど印象に残りません。
人の顔や熱い思いこそが、他の街にはないオンリーワンの情報素材になり得るのに、それらを表に出す自治体はほとんど見たことがありません。
その街で暮らす人が顔を出し、熱い思いを語る勇気を持つべきです。
5 事業担当職員の低い広報意識
広報の担当部署の職員は、一所懸命、情報発信に取り組んでいたとしても、その意識が組織全体に行き渡っていないケースはかなり多いです。
それぞれの事業課では、自分たちの仕事をやり切ることだけで頭がいっぱいで、それを対外的に発信する広報への重要性に対する認識が乏しく、「わかる人にだけわかってもらえれば良い」と考えているのです。
広報活動は、切れ目なく情報発信とコミュニケーションを人々と積み重ねる必要があります。
そのためには、すべての職員が「情報を伝えるまでが仕事」である意識を持つように努めることが重要です。
なおかつ、広報部門にその自治体におけるあらゆる部署の情報がスムーズに集まる仕組みづくりも必要になります。
お金をかけず、知恵を出せ!!
自治体が行う情報発信で、人気キャラクターとコラボしたり、代理店に丸投げしたりすることで、一時的な露出を増やして満足しているケースがあります。
もちろん利用できる外部のリソースをうまく使うことも大切ですが、自治体職員は、知能労働者です。
あなた方は難関の試験を突破して採用された優秀な頭脳の持ち主であるはずです。
そうした頭脳を持つ方こそが、知恵を生み出すことを求められるのが、他ならぬ広報活動です。
広報活動を成功させるのに、コストは必須条件ではありません。
お金をかけて行う発信は、ある意味で誰でもできる広告発注であって、お金の多寡が勝負を分けます。
広報は、資本力ではなく、知恵の力さえあれば、小さな自治体でも大きな組織団体に勝てる世界です。
あなたの存在意義を発揮して、あなたの故郷に唯一無二の価値を生み出すことができるように、ぜひ脳に汗をかいてください。
自治体広報戦略の事例
戦略的な広報に取り組んでいるいくつかの自治体を紹介しましょう。
①東京都杉並区
杉並区では、「5つの具体的戦略 Five strategy」として、以下の5つを掲げています。
戦略1 広報媒体の見直しによる区政情報の効果的な発信
戦略2 複数の広報媒体を組み合わせた「伝わる」情報発信の推進
戦略3 区民等との双方向コミュニケーションによる情報発信の充実
戦略4 全庁における統一的・一体的な広報活動の推進
戦略5 職員の広報マインドアップ
※杉並区広報戦略「区民に『伝わる』広報活動の戦略的な進め方」より
②長野県塩尻市
塩尻市が策定した広報戦略には、「職員一人ひとりが広報媒体となる自治体へ」というサブタイトルが掲げられています。
そして、「情報発信は、各担当課の協力なくしてはできません」と明確に打ち出し、職員一人ひとりの奮起を促している点が特徴的です。
同市では、以下2つの戦略を軸に据えています。
戦略Ⅰ 効果的・効率的な情報発信体制の構築
戦略Ⅱ 市役所全体の情報発信力の強化
※塩尻市広報戦略より
同市の広報戦略では、「デジタルファースト広報」を掲げつつも、新聞テレビなど外部メディアに対するパブリシティも重要視し、プレスリリースの強化も目指しています。
③大阪府堺市
堺市の広報戦略の中心部分を引用します。
広報戦略① 堺市の全ての情報が集約された基幹媒体を構築(市HP)
広報戦略②‐(1)「広報さかい」を再構成しリニューアル
広報戦略②‐(2)観光誘客、企業誘致、移住促進のため、ターゲットへのプレゼン支援やプロモーションの企画・実行
広報戦略③ スマホを前提にSNSの機能拡充やアプリ開発の可能性を検討
※堺市広報戦略より
広報紙やホームページ等ウェブの発信に力を入れる方針で、報道機関に向けたパブリシティに関する言及はほとんどありません。個人的には大変もったいない印象です。
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