PRとは何か?PRの意味や目的を徹底解説!必要な手順も紹介
ビジネスを伸ばしていくには、自社を世の中に発信していくことが欠かせません。
ただ、情報発信の手段やツールがたくさんあって、「どうPRしたらいいだろうか?」と悩んでいませんか?
私は読売新聞やYahoo!ニュースで記事を多数執筆し、電通PRで企業PRの現場も経験しました。
この記事では、そもそもPRとは何か?その意味や、具体的な手法、その目的などについて、詳しく解説していきます。
動画でも説明していますので、ぜひ参考にしてください。
PRの意味とは
PRという言葉は、すっかり日本社会に定着しています。
が、日本のみなさんがこの言葉から受ける印象と、本来の意味合いはかなりズレているように感じます。
この項目では、PRの本場であるアメリカにおける意味合いを説明しながら、PRの本質についてお伝えしていきます。
PRはパブリックリレーションズの略
タイトルの通り、PRは英語の「Public Relations」(パブリック・リレーションズ)の略です。
パブリックとは、公共、あるいは大衆・民衆という意味。リレーションズとは、関係や交渉という意味になります。
ですので、直訳すると「公共(大衆)との関係づくり」となります。
つまりは、双方向のコミュニケーション活動です。
東京経済大学の駒橋恵子博士によると、「組織とその組織を取り巻く人間(個人・集団)との望ましい関係を創り出すための考え方および行動のあり方」とされます。
(https://prsj.or.jp/aboutpr/より引用)
ところが、わが国ではPRというと、一方的に情報を発信する「宣伝活動」という意味で使われています。
「望ましい関係を作る」というより、「いかに販売促進するか?」に重きを置いた理解をしている方が多いですよね。
パブリックリレーションズは、19世期の終わり頃から20世にかけて、アメリカで始まった考え方です。
日本においては、1969年に以下のように定義されました。
公衆に対して理解と支持を得るために行う、目的としたては公衆の利益の奉仕、現実に実行する活動、大衆と継続的に対話し、自己修正をはかるもの
広報との違い
では、PRと広報の間は、どういった違いがあるのでしょうか?
実は、広報という日本語の語源は、上記の「パブリック・リレーションズ」です。
「広報・PR」とセットでよく表現されますが、どちらも同じ意味合いだったのですね。
ただ、2021年現在では、多くの人は以下のように理解しているようです。
・PRは、大衆・一般市民に向けて情報を届け、広く周知するもの。
・広報は、メディアに対して情報を届けるもの。
PRという言葉の方が意味が広く、ある意味で、広報もPRの一部に含まれると言えるでしょう。
広告との違い
広告とPRは混同されがちですが、まったく異なる概念です。
広告は、平たくいえば、お金を使って強引に人に見てもらう取り組みです。
広告にはチラシやテレビCMのほか、街で見かける看板もそうです。
昔からあるものとして、新聞や雑誌の広告などは代表的なものでしょう。
広告には多くの企業が取り組んでいます。が、「企業の都合の良い情報しか載らない」と多くの消費者は気づいています。
また最近、劇的に増えているのがネットにおける広告です。
「本来見たい記事や動画のじゃまをする」「目障りになる」といった理由で、最近は広告を嫌悪するネットユーザーも少なくありません。
ただ、狙ったターゲットに対し、「役に立つ情報」として適切に広告を表示させることができれば、ビジネスの発展にとても効果的です。
PRはどのような目的で行うのか
では、そもそもPRはどういう目的で行うのでしょうか?
会社のまわりには、様々なステークホルダー(利害関係者)が存在します。対象ごとにPRを行う目的をみていきましょう。
消費者や顧客に向けてのPR
まず真っ先に浮かぶのが、消費者・お客様に対するPRでしょう。
PRを行うことで、消費者・お客様にあなたの会社の存在を強く印象づける。
つまり、「ブランディングを図ること」がPRの大きな目的の一つです。
もっと掘り下げると、
「具体的にあなたの会社がやっていること」
「企業理念」
といった部分を理解してもらい、「それは良いですね!」という共感を得ていくことを目指します。
このように、消費者・お客様と信頼関係を築くことで、ビジネス活動を安定的に、スムーズに行えるようになります。
PRによって、自社に対する認知度・信頼度を上げ、「社会的に価値のある企業だ」と認めてもらえるようになるのです。
株主や投資家に向けてのPR
株主や投資家に向けてのPRのことを、IRと言います。
IRとは、Investor Relations(インベスター・リレーションズ)の略です。
インベスターとは投資家のことを指します。
成長を図るスタートアップ企業など、投資を必要とする企業にとっては、IRは非常に重要です。
なぜなら、自社のことを正しく理解してもらい、価値を認めてもらうことなしには、投資を受けることはできないからです。
また、すでに投資を受けた企業が、「投資家の意見を取り入れて経営していますよ」という姿勢をアピールすることも、投資家向けPRであるIRの目的の一つです。
グループ企業や関係企業に向けてのPR
大きな企業グループになると、同じグループ会社でも具体的に何をしているのか?どういう状況なのか?お互いわかりづらくなることがあります。
これでは、せっかくの縁ある企業同士が分断されてしまい、ビジネス機会を喪失することにも繋がりかねません。
そのため、自社と関係のある関係企業に向けて、自社に対する理解を促す意味で行われるPRもあります。
その内容は、自社の理念であったり、経営目標だったり、あるいは福利厚生のような情報など、様々なケースが考えられます。
せっかくのご縁のある企業同士の理解が深まり、好きになってもらうことで、生産性がアップする可能性が高まります。
PRのおもな手法
ここまで、PRの意味や目的について説明してきました。
ではこれからは、具体的にPRはどのような手法を用いて行われるのか?について説明していきます。
プレスリリースを出す
最もオーソドックスなPRの手法が、プレスリリースの発行です。
プレスリリース(press reliease)とは、プレス=報道機関、リリース=発表・公開、です。
つまり「テレビ新聞など報道機関(マスコミ)に対する情報発表」のことを指します。
かつては、この言葉の意味通り、マスコミに対する発表文書のことだけを指していました。
ところが、インターネットの登場により、企業が自社サイトを通じて直接、世の中に発表できるようになりました。
このため、最近は自社サイトにアップする新しい発表文書を、「プレスリリース」と呼ぶ企業も増えています。
プレスリリースでは、印象的なタイトルをつけることが重要です。
それから、写真やイラスト・図表などを盛り込んで、自社の商品やサービスをわかりやすく説明することが求められます。
なお、プレスリリースは広告とは異なり、単なる宣伝にすべきではありません。
なぜなら、単なる宣伝チラシのようなプレスリリースが非常に増えており、メディア側の人々はそうしたプレスリリースを嫌悪するからです。
つまり、単なる宣伝チラシには、誰にも見向きもされないのです。
プレスリリースの書き方については、この記事で詳しく説明しています。
紙媒体による広告を活用する
プレスリリースでは、必ずしもメディアに載るとは限りません。
そこで、広告にお金を出して確実に露出を図ることも一つの選択肢になるでしょう。
紙の媒体(メディア)には、新聞や雑誌のほか、チラシ、ダイレクトメール(DM)、地域のフリーペーパーなどがあります。
新聞に広告を出せば、シニアを中心に幅広い読者層にアピールできます。
また、雑誌の場合は、それぞれ読者さんの属性が明確ですので、アピールしたい層の人たちに効果的に見てもらえます。
チラシやDM、フリーペーパーは、狭い地域に効率的にPRしたい場合に効果を発揮します。
昨今はネット全盛で、パソコンやスマホでもたくさんの広告が乱れ飛んでいます。
ですが、ネット広告よりも、こうした紙媒体の広告PRの方が「信頼性が高い」と感じる人が一定数いるのも事実です。
記者会見を行う
プレスリリースの延長上の話になりますが、記者会見をセッティングして、広くメディアにアピールする方法があります。
ホテルの宴会場や会議室などの会場を用意し、記者たちを呼び集め、自社の新製品や新サービスを発表するのです。
会場やスタッフの準備が必要なため、大がかりなPR方法となります。
記者会見となると、「大企業だけでしょう?」と思われがちですが、中小企業やベンチャー企業が行っても差し支えありません。
ただ問題は、その発表する中身です。
メディアから、「これは面白い!」「ニュース価値がある!」と思ってもらえる内容であれば、企業規模の大小は関係ありません。
逆に、いくら豪華な会場を用意して記者会見をセットしたとしても、肝心の発表内容がつまらないものであったら、いくら記者たちに声をかけても、会見場に来てすらもらえません。
記者会見をやったことのない企業は、ノウハウのあるPR会社やイベント会社に依頼するのも手です。ただ、それなりの費用がかかります。
資金に不安がある企業は、自社独自で記者会見を運営し、開くことも不可能ではないでしょう。
繰り返しますが、肝心なのは発表する案件にニュース価値があるかどうか?です。
最近では、新型コロナウイルス感染症の流行により、会場に多数の記者を集める会見が敬遠される傾向にあります。
そこで、zoom等を用いたオンライン記者会見も増えてきています。
記者会見のやり方については、この記事で説明していますので、参考にしてください。
SNSで展開する
TwitterやFacebook、インスタグラムといったソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を使った発信活動も、PRでよく使われています。
SNSの利点は、ユーザーとの交流がやりやすい点です。フラットで身近に感じてもらいやすいメディアです。
ただ、SNSでは露骨な宣伝活動はユーザーに嫌われてしまいますので、注意が必要です。
役に立つ情報や人柄などを感じてもらう発信にとどめ、ビジネス色は極力控えることでユーザーとの結びつきが生まれ、長期的なPR効果を発揮していきます。
オウンドメディアの開設
オウンドメディアとは、企業によって所有されるメディアのことを広く指します。
自社の広報誌、パンフレットなども含まれますが、ここ5年で導入事例が増えているのは、ネット上の自社ウェブサイト・ブログです。
自社で保有するメディアですから、自社の発信したい情報を自由に余すところなく発信できるメリットがあります。
会社によっては、本業のメディアのような編集部を立ち上げ、本格的な記事コンテンツを数多く投稿していくことで、検索エンジンの上位表示を狙っています。
有名なものでは、トヨタ自動車が開設したオウンドメディア「トヨタイムズ」などがあります。
PRに必要なものとは
ここまで、PRの基本的考え方や具体的な手法についてお伝えしてきました。
では、実際にPRを成功させるには、何が必要なのでしょうか?
以下は、とても重要なポイントですので、しっかり押さえておいてください。
社会の潮流を読む
PRは、「社会の潮流」を読むことなしには実施できません。
最初にお伝えした通り、PRとは、社会との関係づくりです。
だから、対象である「社会」を知ることで、やっとそのスタートラインに立てます。
社会を知ることで、社会貢献のアイデアが生まれます。PRとは、社会に役立つ情報を発信する活動なのです。
多くの人は、「自社のことを一方的に世の中に発信するのがPR」だと勘違いしています。
世の中の流れを無視し、自分たちが売りたいものを必死にアピールしても、ほとんど見向きもされずに終わるのがオチです。
PRしたい商品サービスがあるのなら、
・それがなぜ?今の世の中にとって必要なのか?
という社会的な観点からロジックを組み立て、コンテンツを作り上げることを心がけてください。
これが正しいPRです。
決して、自己満足のPRにならないように気をつけましょう。
消費者の変化を読みつつPRの計画を立てる
世の中は常に動いています。特に昨今は変化が激しく、消費者・生活者の行動や考え方もどんどん変わっていきます。
ですので、消費者・生活者がどの方に変化しているのかを常に読み取り、状況に即応しながらPRを行っていく必要があります。
例えば、2020年から世界的に流行している新型コロナウイルス感染症は、消費者の行動を大きく変えました。
外出が制限され、ネットの通信販売を利用する人がそれ以前と比べ、大きく増えています。
不安になる人が増えているため、買いだめに走る人も少なくなく、突然の品薄に備え、計画的に商品を購入する傾向も強まっています。
だから、「備蓄しておきたい」「何を買ったらいいか知りたい」などという消費者ニーズに応えるPR企画が考えられるかもしれません。
これはあくまで一例ですが、消費者がどのような情報を欲しがっているのか?を常に読み取りながら、時代の先を読み、PRの計画を立てていくべきです。
メディアへの理解
PRを進めていくにあたっては、メディアを正しく理解することが欠かせません。
マスメディアに向けたPRであれば、新聞、テレビ、雑誌それぞれの特性や特徴、求められる情報などを知っておく必要があります。
さらには、一口に新聞といっても朝日や読売、日経などいくつもの新聞があり、求められる情報に微妙な違いがあります。テレビや雑誌はさらに、求められる情報が細かく細分化されています。
それらをきちんと踏まえた上で、各メディアにアプローチを仕掛けていかなければ、成功はおぼつきません。
また、ウェブにおいても、次々と新しいメディアやツールが生まれています。PRを行う上では、そうした変化にも敏感にアンテナを張っておきたいものです。
コミュニケーション力
PRはすでに述べてきた通り、一方的な情報発信ではありません。
相手のある活動であり、相手の意図を踏まえ、やりとりを重ねながら、臨機応変に対応する必要があります。
PRという職種は、AIやロボットの時代にも将来有望だと言われています。それは、PRは本質はコミュニケーション活動であり、人間にしかできないことだからです。
企画立案力
PRで重要なのは、発信するコンテンツの内容です。
いくら発信量を増やしても、肝心なその中身がお粗末なものでは、メディアや生活者たちから見向きもされません。
「おっ!?」と目を向けてもらう違いを生み出すのは、「企画立案力」です。
「こんなの、今までになかったね」と新鮮に感じてもらえるような、企画を継続的に出していく必要があります。
最近面白かったのが、「新卒採用で麻雀大会を開催」しているIT企業の話です。
あまりにも常識から外れているため、テレビなどから注目をされてメディアに露出しています。
そして、有名大学の学生たちが押し寄せています。
これは極端な例ですが、これからの時代は、常識を打ち破る企画立案力がPRの正否を分けていくでしょう。
PRの今後はどうなるのか
PRのあり方は大きく変わりつつあります。それは、IT技術の革新が次々と起こり、デジタル変革が起きているからです。
今だにテレビや新聞などのマスメディアは一定の力を持っているとはいえ、これからはデジタルを無視してPRを進めることは不可能です。
こうした技術革新に対しては、敏感にアンテナを貼り、変化に迅速に対応していく必要があるでしょう。
さらには、世に流通する情報がどんどん増える一方、受け取る側の生活者・ユーザーたちの見る目はかなり肥えてきています。
いい加減な情報、不誠実な情報はすぐに見抜かれてしまいます。
ですので、これからの時代は、信頼性の高い「質の高いコンテンツ」を生み出していくことが生き残りのカギとなります。
ただ、大きな変革期にあるとはいえ、PRの本質は今も昔も変わりません。
それは、生活者からの理解を深め、共感を得る、という点です。
技術や手段は今後もどんどん変わっていくことでしょう。
しかし、相手にするのは「人」であるということを忘れなければ、きっとあなたはこれからも良いPRができるはずです。
まとめ
PR活動は、2020年代ますます重要性を増していきます。
エゴな情報発信、売りつけようとする宣伝情報は、人々に見抜かれ、受け入れられなくなっていくからです。
その代わり、消費者・生活者の人たちは、信頼できる企業や個人を探し求めています。
誠実に、正しい情報の発信に努めていけば、あなたの会社はきっと社会から信頼を勝ち取れるようになります。
その結果、あなたのビジネスもうまくいくようになります。
あなたの事業がうまくいき、情報の受け手たちも喜ぶ。ひいては、世の中全体にメリットが及んでいく。
ぜひ、そんなPR活動を進めていただきたい、と考えています。
この記事は、元読売新聞記者で、元電通PRシニアコンサルタント、Yahoo!ニュースに多数記事を書いた坂本宗之祐(そうのすけ)が執筆しました。
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