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記者が教える広報PRの方法

広報PR情報No.1サイト 元読売新聞記者 坂本宗之祐

広報PR戦略プランの立て方 世の中を巻き込む情報発信の9ステップ


広報プランを立てたい、と考えたものの、やり方がわからずに頓挫する方は少なくない。

効果的な広報戦略プランは、あなたのブレない情報発信を支えてくれる礎になる。

この記事では、広報戦略プランの立て方の流れを9つに分けてお伝えする。

私は全国紙の新聞記者として11年、Yahoo!ニュースに記事を提供する記者として2年、活動した。

ぜひ正しい広報戦略を立てて、必要としている方に情報を届けてほしい。

動画でも分かりやすく説明している。

 

(※この記事は、2019年1月23日に公開しましたが、2021年5月31日にリライトして再アップしました)

1 自社をジャーナリスティックな観点から分析する

まず最初に申し上げたいことがある。

あなたが「広めたい」情報が、そのままメディアで広まることはない。

ほとんどの企業・広報担当者には、「ジャーナリスティック」なマインドと視点が欠けている。

その代わりに「自社を宣伝したい」という意図ばかりが先走っている。

広告と同じ感覚で、広報をやろうとすると100%失敗する。

「自社が宣伝したいことありき」で広報・プレスリリースに取り組み、大失敗する企業を数え切れないほど見てきた。

なぜうまくいかないのか?

そこには自社利益の追求という意図が強くにじみ出ており、メディアが報じる社会性が欠落しているからだ。

そうしたプレスリリースを何度も送り、記者から嫌われ、「迷惑業者」の烙印を押される会社はかなりの数に上る。

メディアに取り上げてもらいたいなら、あなたはメディアのニーズに寄り添う必要がある。

記者・編集者が求めているのは、一言で言えば「社会の役に立つ情報」だ。

だから、あなたの会社を取り上げてもらいたいなら、社会性のある要素を徹底的に洗い出すこと。

自社目線からではなく、メディア目線から逆算して、自社の情報を整理すること。

これが一番最初にやってほしい作業だ。

次の(1)(2)に取り組んでほしい。

 

(1)自社の存在意義を言語化する(理念、志)

メディア向けの広報活動においては、「社会の役に立つ」「社会に貢献する」というスタンスを打ち出すことが欠かせない。

だから、まず最初にやるべきことは、自らの事業の社会性を客観的に見つめて、それを明らかにすることだ。

あなたの事業はそもそも、何のために世の中に存在しているのか?どういう役割を社会の中でになっているのか?

世の中に、何を実現していきたいのか?

この根本部分を突き詰めてほしい。

(もちろん、「金儲け」だけが目的なのは論外。メディアの取材対象から真っ先に外される)

 

(2)特異性のある事業コンセプトを固める

自分たちは何のために存在しているか?何を目指すのか?

その土台部分が固まったら、次に「事業コンセプト」を定めていく。

会社としての理念を体現するために、具体的にどういうコンセプトで事業に取り組んでいるのか?を端的に語るものだ。

このコンセプト設定に特異性がなければ、ニュースとして情報流通のルートに乗っていくのはかなり難しくなる。

というのも、例えば、

・勉強を教える学習塾

・野菜を売る八百屋

これでは、「当たり前」過ぎて、メディアの記事・番組でニュースになるのは、かなり難しい。

そこで、次の2つを盛り込みたい。

1 社会の役に立つ

2 今までにない活動

 

コンセプトの設定は極めて重要だ。この記事を参考にして欲しい。

記者がプレスリリースを取材するかどうか?を決める決定的なポイント  

 

コンセプトとは、平たく言えば「誰のために、どんなメリットを提供するのか?」という一文で表現できる。

社会性があり、なおかつ記者の取材意欲を掻き立てるような「キラーコンセプト」を、最初の段階で構築しよう。

初期段階でこれができていれば、その後の広報活動ははるかに展開しやすくなる。

ここまで述べてきたように、

1 会社としての「理念、志」

2 ユニークな事業コンセプト

この2つが最初の段階で固まっていれば、あなたのビジネスの広報活動は、はるかに進めやすくなる。

 

2 広報企画の立案

こうして、社会的意義とキラーコンセプトを明確にすることは、樹木に例えると、どっしりした「幹」を打ち立てるのと同じ意味がある。

しっかりした幹ができてから、四方八方に枝を伸ばし、葉を茂らせる。つまり、具体的な広報ネタづくりに入っていく。

プレスリリースを一発勝負で成功させようというのは、無理な相談だ。1本の枝、一枚の葉っぱしかない樹木が、まったく目立たないのと同様だ。

じっくりと葉を茂らせていく、地道な取り組みをやる覚悟が必要となる。

つまり、プレスリリースは、長い目でコツコツ続けていく活動だと考えてほしい。

そのために、企画の「数」がどうしても必要になってくる。

現在、日本中で誰もが知る某有名ネット企業は、わずか10数年前は社員20人程のベンチャー企業だった。

その頃から、年間90本のプレスリリースを出していたという。東証一部の大企業となった今でも、年間150本のリリースを発信している。

それだけの数のプレスリリースを可能にしているのが、「企画の数」出しまくる努力と工夫だ。

 

3 プレスリリースの作成

企画ができたらプレスリリースの作成に入る。サイズはA4で、基本構造は下記の通り。

スクリーンショット 2016-08-02 15.45.34

プレスリリースの書き方については、この記事で詳しく説明しているので参考にして欲しい。

 

ただ、これまでのお話をお読みいただき、

・プレスリリースの書き方だけで、取材を獲得するのは難しい

ということを、多少なりともご理解いただいていると思う。

プレスリリース以前に、理念やビジョンを言語化した上で、実効性のある企画を打ち出さなければならない。

つまり、メディアの記者たちは、あなたの本質をじっくり見極めにくる。

小手先の言葉選び・テクニックで騙されるほど、甘い人種ではない。

情報に極めて厳しい目を持つ“情報のプロ”だ。そして彼らは、人間の目利きでもある。

プレスリリースは、SEOのようなコンピューター相手とは全く違う。

また、就職試験やオーディションのような一発勝負とも異なる。

メディアPRは、本質的に「小手先で攻略できる」ものでははない。

ライティングのノウハウは、きちんとした幹・土台があった上で初めて意味を持つ。

 

4 自社メディアの整備

プレスリリースの作成と並行して必ずやるべきことがある。

それは、ブログやホームページなど、自社メディアを整えておく、ということだ。

その理由は3つある。

(1)マスメディア記者らの情報収集習慣の変化

(2)記者・ディレクターの取材決断の後押し

(3)パブリシティ効果による売上の最大化

 

一つずつ見ていこう。

(1)マスメディア記者らの情報収集習慣の変化

まず1つ目。最近は質の低いプレスリリースが多数、メディアに届くようになっている。

だから、メディアの記者・ディレクターたちはプレスリリースを敬遠気味となり、情報収集の主戦場は、ウェブ空間に移りつつある。

つまり、多くの新聞テレビの記者やディレクターは、ウェブ上で情報の収集・ネタ探しを行なっている。

だから、あなたの会社がウェブ上に質の高い情報を発信していくことは、もはや不可欠といって良いだろう。

メディアの記者・ディレクターに「この企業はこの分野のプロフェッショナルだ」と認知され、取材が自然と来るようになる。

さらにもちろん、潜在見込客の獲得というメリットも享受できる。これはいわゆる、最近注目を集める「オウンドメディア」の構築にあたる。

オウンドメディアは、ジャーナリスティックな視点を持つ担当者がいる会社ほどうまくいく。

なぜなら、客観的な視点で読者に有用な記事を徹底して追求することで、読者に対して高い信頼性を与えることができるからだ。

 

(2)記者・ディレクターの取材決断の後押し

2つ目。プレスリリースを受け取った記者は、「取材しようか、どうしようか?」と迷った時、ほぼ100%、その対象についてネット検索でリサーチするからだ。

その際、必要十分な情報を備えたあなたのサイトがあれば、記者は欲しい事前情報を得ることができ、安心感につながる。

そして、取材の獲得につながる可能性が一気に高まる。

プレスリリースは、せいぜいA4判1〜2枚が限度だ。それ以上書いてもまず読まれない。

プレスリリースに盛り込めない情報を、サイトに掲載することで、より説得力と安心感を与えることができる。

 

(3)パブリシティ効果による売上の最大化

そして理由の3つ目。

もし首尾よく取材され、マスメディアで取り上げられた時の状況を想像してほしい。

記事や番組を見た人々が、あなたの会社を知り興味を抱いたら、どういう行動をとるだろうか?

そう。ほぼ間違いなくスマートフォンに手を伸ばし、すぐさま検索をかけてあなたの会社を調べ始めるだろう。

この絶好の機会を逃してはならない。彼らをあなたの会社の見込み客にしていくために、「受け皿」を用意しておくべきだ。

もし、せっかくメディアで大きく取り上げられたにもかかわらず、受け皿となる自社メディアが貧弱だったら非常にもったいない。

大量のアクセスがサイトに押し寄せているのに、それらの流れはザルのように流れ、露出効果は一発の打ち上げ花火で終わる。

だから、メディア露出の前に、大量のアクセスを逃さない受け皿となるサイトの同線を整備しておくことはぜひやってほしい。

特に、メールアドレスを取得できるランディンページ(LP)を用意しておきたい。

 

(参考)検索上位になる方法。広告なしでビジネスが加速&安定する最強メソッド

 

 

5 送り先のメディアリストの選び方

「プレスリリースは、配信サービスを使わないと送れない」と思い込んでいる人が多いが、全くそんなことはない。

プレスリリースは、自社から直接メディアに送ることができる。むしろ、成功率を高めたいのなら、自社による配信をおすすめする。

大量生産・大量消費の時代はもはや終わった。それはプレスリリースでも同じことだ。

効果がないどころか、メディア側から「迷惑業者」のらく印を押されるリスクすらある。

送り方は、新聞テレビといったマスメディアであれば基本、郵便で良い。

それでは、郵送の送り先はどうしたら分かるのか?

それは簡単で、マスコミの連絡先一覧が載っている本が、書店やアマゾンで購入できる。

・広報マスコミハンドブック(2022年版)

 

これを一冊買って、手元に置いておこう。

これらには、テレビ局、新聞社、雑誌、その他諸々のメディアの住所、電話番号といった情報が網羅されている。

これを見ながら、自社とマッチしそうな媒体をピックアップしていく。

送り先のメディアは読み込み、内容をリサーチしよう。そのメディアの読者層・視聴者層をつかんでおきたい。

そして、そうした読者・視聴者が「どういう情報を求めているか?」を考え、仮説を立てる。

そこから逆算して、「自分がどういう情報を提供すれば良いか?」が見えてくる。

送り先となる「メディアリスト」は、自社で地道にこつこつ構築していくことで、やがて大きな財産となる。

その方が長い目で見て確実に成果が出る上、コストもはるかに抑えられる。

プレスリリースの送り方は、こちらの記事で詳しく説明している。

 

6 メディアへのアプローチの実践(郵送、電話、訪問)

プレスリリースを単なる宣伝ツールと勘違いし、質の低い情報を次々とメディアに送る企業が増えている。

こうしたこともあり、プレスリリースを送るだけで取材が決まることはいっそう難しくなっている。

このため、「送って終わり」ではなく、メディアの記者や編集者、ディレクターらと実際にコミュニケーションを取る重要性が増している。

アプローチの流れには様々なパターンがあるが、オーソドックスにはまず最初にプレスリリースを送る。

その送り方も、これまで述べたように業者任せではなく、自らメディア側ときちんと向き合う姿勢を示すやり方で、だ。

ファーストコンタクト(最初の接触)は広報にとって、極めて重い意味を持つ。人は第一印象で9割を判断するからだ。

これは、メディアPRに限らず、人間関係全般に言える。

プレスリリースの送付がそのファーストコンタクトであるなら、「数打ちゃ当たる式」の送り方が、いかに愚かな戦略か?小学生でも分かるだろう。

 

リリースを送った後は、

・電話をかける

・直接、メディア社を訪問する

・記者クラブで説明(レクチャー)する

などの方法で、記者と名刺交換し、直接話をする機会を求めていく。

そして、記者やディレククターらと個人的な関係を長期的な視野で築いていただきたい。

お互い顔を知っている関係者の一覧。これが真の「メディアリスト」だ。

誰でも手軽に手に入れられる、ネットで拾い集めただけの送り先に、大した価値はない。

 

7 取材当日までの準備と心構え

プレスリリースを送り、記者と話ができ、取材が決まったとしよう。

慣れない方は、当日まで気持ちが落ち着かないかもしれない。初めての取材であればなおさら、緊張することだろう。

「当日までに何か準備をしなければ!」と焦る気持ちもわかるが、慌てる必要はない。

取材すると決めたということは、記者は事前の調べで、あなたの会社に「一定のニュース性があるであろう」と認めたということだ。自信を持とう。

想定問答を作る必要などはない(不祥事の取材を受けるといった、危機管理が必要な取材対応なら話は別だ)。

相手は取材のプロなので、必要な情報をあなたから上手に引き出してくれる。

取材は生き物といえる。取材の会話のやり取りの中で、自然に引き出された言葉を記者は好む。

逆に、用意された型通りの言葉しか出てこないような取材になると、記者はガッカリする。

国会答弁を想像してほしい。ほとんど用意された原稿の棒読みで、生きた言葉がない。だからつまらない。

官僚的な会社ほど、型どおりの言葉しか帰って来ない。記者時代、何度も頭を抱えたことがある。型どおりの受け答えだけでは、良い記事は書けないからだ。

あなたは自分の言葉で、素直に正直に、記者の質問に答えてほしい。

注意すべきなのは、見栄を張ってウソをついたり、隠し事をしない、ということ。記者らメディアの人々は、ウソや隠し事を最も嫌う。

なぜなら万一ウソを信じ込み、そのまま記事や番組にして世の中に広めたら、大変な責任問題になるからだ。

ウソを社会に報じてしまう。これほどメディア人にとって怖いことはない。

たとえ些細なことでも、ウソをついていたことが後日露呈すると、記者は「今後一切、その会社を取材しない」と固く決意する。

そうした会社を取り上げることは、危険極まりないからだ。

だから、取材対応は、素直な気持ちで正直に話すことを心がけてほしい。

 

8 取材・掲載後のフォロー

取材も終わり、記事掲載、番組放送が無事に終わったとしよう。

それらを目にした一般の人々や、知り合いから、様々な反響が寄せられることだろう。うれしい瞬間だ。

が、ここで気を抜かないでほしい。このメディア露出を単発で終わらせずに、次につなげる意識を持とう。

まず、取材をしてくれた記者に、きちんとお礼を伝える。

理想的なのは手書きの手紙。そうでなくても、最低限は電子メール。あるいは、記者が忙しくないであろう時間帯を見計らって、電話をかけるのも良いだろう。

記者は、あなたが考えている以上に、自分が書いた記事の反響をとても気にしている。

私も新聞記者時代、自分の記事が世の中にどういう影響を与えたか、いつも気になったものだ。

記者は、取材相手を記事で好意的に取り上げたつもりでも、掲載後に相手から何の連絡もないと不安な気持ちになる。

「あれ、記事にご不満だったのかな?」「何か事実の誤りや、失礼な部分があったかな?」などと気をもむのだ。

そこで、取材相手から「素晴らしい記事にしていただき、ありがとう!」と連絡があると、ホッとすると同時に喜びを感じる。

さらに、「記事のおかげで、こういう反響がありましたよ」と伝えられると、「ああ、この記事を書いてよかった」と充実感に浸ることができる。

このように取材相手に素直に喜んでもらえると、記者は「また再びこの方と一緒に仕事がしたい」と考える。

これが人情というもの。

このように掲載・放送後はきちんとメディアの方へのフォローを怠らないようにしよう。

 

9 効果の検証、改善点の洗い出し

広報・プレスリリースは結果にかかわらず、1度や2度で終わらせず、コツコツ続けることに意味がある。

1度や2度、送っただけで一喜一憂しないこと。広報は継続が重要だ。淡々とジャーナリスティックに社会的な意義のある情報を発信し続けよう。

プレスリリースは、企業活動の経過報告のようなもの。一見、反応がなくても記者たちはプレスリリースに目を通している。

正しい方向性のプレスリリースをコツコツ送り続けることで、記者の御社に対する認知は高まり、マインドシェアが徐々に高まる。

(言うまでもなく大事なのは、リリースの内容だ。宣伝が先走ったリリースは、送るたびに悪印象を強める)

一喜一憂しないとはいえ、リリースを送ることによって、何がしかの結果が現れる。

何も反応がなかった、取材が来た、といった結果を直視し、「何が良かったのか?」「何が悪かったのか?」を整理、分析していく。

広報・プレスリリースは、外部要因に左右されることがよくある。

プレスリリース自体がいくら素晴らしくても、記者・メディアの側の事情で取材できないことはよく起きる。

たまたま、その時大きな事件や事故が発生するなど、他の取材に忙殺されている時は、他のプレスリリースを取材したくてもできないのだ。

逆に、記者たちの取材ネタが枯渇している時は、「イマイチかな?」と自信のなかったプレスリリースでも取材が来ることもある。

そうしたメディア側の状況は、こちらではコントロールしようがない。

だからこそ、結果に一喜一憂せず、自らやれることのみにフォーカスする。そして、改善を繰り返していく。

 

まとめ

ここまでを振り返ると

1 自社を社会的(ジャーナリスティック)な観点から分析する

2 広報企画の立案

3 プレスリリースの作成

4 自社メディアの整備

5 送り先のメディアリストの選び方

6 メディアへのアプローチの実践(郵送、電話、訪問)

7 取材当日の心構え

8 取材・掲載後のフォロー

9 効果の検証、改善点の洗い出し

 

プレスリリースを成功させるには、当事者の根本的な「あり方」が極めて重要になる。

人に貢献する、社会に役立つ、というスタンスがあるかどうか?

ジャーナリスティックな観点からの情報発信ができているかどうか?

これがないまま、小手先のテクニックを弄すれば弄するほど、メディアからの評価は低下する。

まずは、活動の理念をきちんと持ち、それを言葉にしていただきたい。

それから、記者やディレクター、編集者らと直接、話をする機会を持つよう努める。

彼らは情報と人間の目利きだ。直接、話をすれば、本気の想いは汲み取ってくれる。

彼らとの接点を増やし、間合いを詰めていただきたい。

これをやることで、数百万部もの発行部数の新聞や、何百万人もの人の目に触れるテレビで取り上げてもらえる道が着実に開けていく。

 

なお、以下の記事で広報戦略づくりに有効なフレームワークを詳しく説明している。

・広報戦略8つの手順と3フレームワーク。戦略立案から実行、測定まで徹底解説

 

 

BtoB企業の広報PR戦略の進め方

あなたはもしかしたら、「BtoB企業の広報は難しい」と思い込んでいないだろうか?しかし、そんなことはない。

「BtoBは難しい」というのは、広告業界人の理屈に過ぎない。彼らの話を真に受けている広報の人が多いことに驚く。

私からすれば、BtoB企業の広報は全く難しくない。

むしろ、新聞テレビといった報道メディアにとって、BtoB事業は興味をそそられる。

なぜか?「人々が知らないこと」の中にこそ、ニュースが眠っているからだ。

はっきり言って、広報に関して言えば、BtoC企業であろうとBtoB企業であろうと、大した差はない。

いずれもやることをやれば、メディアに次々と取り上げられるようになる。

基本的には、BtoB企業の広報戦略も、上記で示した9つのステップに沿って取り組めばいい。

とはいえ、BtoB企業ならではのボトルネックもある。注意点を以下に記していこう。

 

1 難しい専門用語を、わかりやすい言葉で表現する

BtoB企業に限った話ではないが、多くの会社は「自社がやっていること」の発信ありきで、広報を行っている。それでは、一部の業界の人にしか理解できない。

そうではなく、生活者あるいは世の中の目線から、彼らが理解できる言葉で発信していく必要がある。

私は新聞記者時代、「中学生やおばあちゃんでも分かる文章を書け」と上司のデスクに教え込まれた。

それでは具体的に、BtoB企業の専門的なことばを分かりやすく説明できるテクニックを紹介しよう。

 

 1-1 類語辞典で分かりやすい言葉を探す

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類語辞典では、一つのことばについて、同じような意味を持つ別のことばをいくつも出してくれる便利なものだ。

例えば、「ペルソナ」という言葉がある。やや専門的な言葉で、中学生やおばあちゃんには理解し難いだろう。

これを類語辞典で調べると

・イメージ 
・ 心象
・ 表象
・ イマージュ
・ 写象
・ 心像

など、様々な表現が出てきた。これらの中から、文脈に合わせて適切な言葉を選んで盛り込むだけでも、伝わり方が違ってくる。

 

類語辞典(シソーラス)は、ここですぐ使うことができる。

 

 1-2 抽象度を下げる(具体的に表現する)

多くの専門的な職人が、素人を寄せ付けない雰囲気を漂わせる。「あなたにはわからないだろう」とばかりに、無意識的・意識的に難しい抽象語を使いたがる。

職人の矜持は、時に心地よく感じられることもあるが、広報PRにおいては、障害になることが多い。

これを伝わりやすくするには、意識的に「より具体的な言葉に置き換える」のが有効だ。

例えば、

・真摯で誠実な対応

これは抽象的な表現だ。この抽象度を下げると、どうなるか?

・目をまっすぐ見て、深々と頭を下げる

少し具体的になった。さらに具体的にすると

・目を4秒間合わせて、腰を90度の角度に折ってお辞儀する

 

違った言葉で、抽象度を下げる例を説明しよう。

生物 ー> 動物 ー> 哺乳類 ー> 猫 ー> アメリカンショートヘア

 

右に進むに従って、より具体的になって行くのがお分かりいただけるだろう。

言葉が抽象的であればあるほど、マスコミ記者には「中身がない」と感じられる。

具体的なリアルを知りたい、というのがマスメディアの取材者たちの本音だ。

BtoB企業の広報は、抽象的な言葉を使いがちだ。

だから、できるだけ「具体的な言葉で記者に伝える」ことを強く意識しよう。

 

 

 1-3「そもそも、どういうこと?」を自問する

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BtoB企業の人はどうしても、社内や業界内に閉じていることが多い。だから、自分たちを客観的に俯瞰できなくなっている。

これが広報活動にとっての大きな障害になっている。

BtoB企業は、素人目には難しい事業モデルかもしれない。

しかし、そもそもその事業は、誰に、どう役に立つ仕事なのか?

このビジネスの根本を見つめ直すことで、自らの会社や業界を客観視するのに役に立つ。

自社を客観視し、社会にとっての意義を改めて言葉にしてみよう。

私は記者時代、複雑な事象を数多く取材した。その深みに入りすぎると、本質を見失う恐れがいつもあった。「木を見て森を見ず」ということだ。

だから、時折立ち止まって、「そもそも…」という言葉を自分に投げかけた。

すると、頭の中で絡まった糸から一歩離れて、物事の全体像を眺めることができた。

 

 

 1-4 たとえ話、比喩表現を用いる

これは、相手の頭の中に鮮やかなイメージを抱かせ、強く印象付けるのに抜群の効果がある。

例えば、「建物の強度を調べ、どれだけの地震に耐えられるかを判定する」という事業があったとする。

これを、次のような比喩表現にすると、はるかに伝わりやすい。

お家の健康診断

「健康診断」という言葉を知らない日本人は、ほぼいないだろう。

 

また、かつて野球の優れた投手について、次のような表現がスポーツ紙などでよくみられた。

九州のダルビッシュ

下町のダルビッシュ

 

ダルビッシュ、という有名な投手に例えることで、「長身で、スケールの大きな投球をする投手であろう」というイメージを一瞬で伝えることができる。

このように、あなたの会社のビジネスモデルや商品サービスについて、「日本人なら誰でも知っている言葉」を用いて説明できないか?考えてみよう。

 

 1-5「最終の消費者はだれ?」をイメージする

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BtoB企業は、法人が取引相手なので、どうしても木を見て森を見ない発想に陥りやすい。

だが、最終的には御社の製品は、どこかで一般の生活者にその利益をもたらしている。

例えば、建設資材をゼネコンに買ってもらう仕事だとする。お客さんは、ゼネコンだ。

その先を想像してほしい。ゼネコンは何を作っているだろうか?それが巨大ダムだったとする。

ダムの発注者は、国土交通省だろうか。一見、生活者は関係なさそうだ。

しかし、そのダムができることによって、洪水に悩まされてきたある地方都市の下流域の人々がそのメリットを享受する。

御社の取引相手は法人だとしても、どこかで必ず生身の人間との接点がある。

そのメリットを享受する最終の消費者から逆算して、御社の情報を編集すると、より具体性が増して伝わりやすくなる。

 例えば、消費者に身近な「スマホ」あるいは「自動車」との関わりがあるなら、そこからストーリーを組み立てるといい。

 

 

2 メディアの人と接触する 

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BtoB企業のビジネスは、確かに普通の人にはわかりにくい。

このわかりにくい話を、紙に並べた活字(プレスリリース)だけで理解・納得させよう、という考え自体が間違っている。

記者や編集者などメディアの人は忙しい。専門用語が満載の長文をじっくり読んでくれるのは余程のことがない限りない。

だから、BtoB企業の広報ほど、メディア記者・編集者と実際に会って話をすることが不可欠だ。

話し言葉で説明すれば、専門知識の乏しい一般メディアの記者にも、かなり伝わる。

相手の反応を見ながら話せるし、理解できなかった点はすぐ相手が質問してくれる。

実際に会って話すためには、取り上げてほしいメディアに連絡し、面会のアポを取ろう。

 

 

3 企画の提案を行う

メディアの人と面会のアポを取るにしても、手ぶらでいきなり「会いましょう」と頼んでも、なかなか難しい。

そこで、お土産となるネタを用意しておく必要がある。それが、企画案だ。

メディアの担当者が身を乗り出すような企画を作るには、ターゲットの新聞、テレビ、雑誌を研究すればいい。

月刊誌なら、1年間のバックナンバー各号を調べ、各月の企画内容をチェックする。

月刊誌は、3ヶ月前にはもう企画を固めていく。だから、今が3月なら、昨年6~7月の誌面にどういう企画をしていたか?チェックする。

今年も全く同じ企画をする可能性は高くないが、かなり参考になる。

その雑誌が取り上げる可能性のある切り口の企画を考え、「貴誌でこういう企画はいかがでしょうか?」と持ちかけるのだ。

雑誌に限らず、テレビの情報番組などメディアの人々は、常に企画、ネタを求めている。

これなしにはどのメディアも成り立たない。

だから、あなたがドンピシャの企画を持ち込めば、非常に感謝されて、メディアで取り上げてもらえることになる。

 

まとめ

素晴らしい想いや技術を持った会社や人々が、多数、日本中にまだまだ埋もれている。

そして、専門性の高い話ほど、記者が敬意を払わずにいられないプロフェッショナリズムが息づいている。

だが、真面目な職人肌の会社ほど、自社を世の中にアピールすることについて億劫だ。

BtoB企業はもっと、自社の仕事の誇りや楽しさを発信してしかるべきだ。その発信自体が、社会に対する貢献となる。

BtoB企業の社員さんは、職人的で真面目なため、あまり外向的でない印象を受ける。そして、情報発信に工夫がない。

極端にいえば、「知られていなければ、存在しないのと同じ」だ。

埋もれている価値を掘り起こし、良いニュースを世の中に増やしてほしい。 

 

 

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