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記者が教える広報PRの方法

広報PR情報No.1サイト 元読売新聞記者 坂本宗之祐

広報戦略の3フレームワークと立案8手順。戦略の立て方から実行、測定まで徹底解説


最近では、広報に取り組む企業が増えていますが、成功している企業とそうでない企業に大きく分かれています。

その違いを生むのは、「戦略的に広報に取り組んでいるかどうか?」です。

私は読売新聞記者、電通PRコンサルタントを務めたほか、Yahoo!ニュースでも多数記事を書くなど、メディア業界で23年の経験を重ねてきました。

本記事では、私の経験から学んだ成功事例や実践的なノウハウを交えながら、広報戦略の重要性や具体的な立て方、効果測定方法などを徹底的に解説します。

あなたの会社も、この記事で学んだ知識を活用すれば、成功につながる広報戦略を立てることができるようになるでしょう。

 

※この記事は、2021年3月29日に公開しましたが、2023年3月16日にリライトして再度アップしました。

広報戦略とは?企業価値を高める戦略的コミュニケーション

広報で目指すのは、わが社の認知を高めるのはもちろん、「信頼できる」という社会的な評価を高め、熱狂してくれるファンを増やすことです。

その結果、売り上げは向上し、取引先に信頼され、人材も採用しやすくなるなど、多方面でビジネスに加速をつけてくれます。

つまり、企業そのものの価値全体を底上げする点に、広報活動の大きな目的があります。単なる目先の売上アップだけではないのです。

企業の存在理由にかかわる重要な活動であるからこそ、じっくり戦略を立ててコミュニケーションに取り組む必要があります。

 

広報戦略にデジタルメディア活用が必須になった3つの理由

特に昨今の広報戦略は、デジタルの活用が必須となっています。その理由を3つ説明しましょう。

①新聞テレビなど旧来メディアの衰退

かつては、マスコミと呼ばれるテレビ新聞が世の中の情報流通をほとんど握っていました。

だから昔の広報は、テレビ新聞を中心に行えばよかったのですが、昨今はウェブが発達。SNSを手に入れた個々人の動向を抜きに広報はできなくなっています。

 

②生活者の趣味嗜好の細分化

ウェブの発達に伴い、誰でも自由に情報が手に入るようになりました。

テレビ新聞から押し付けられる情報よりも、SNS等を通じて、自分が好きな情報だけを選ぶことができるようになっています。

このため、かつてなら学校のクラスで必ず話題になったようなニュースやテレビ番組は激減し、好みの話題やテーマは人それぞれに細分化されています。

 

③急速なデジタルトランスフォーメーション(DX)の進展

2020年のコロナ禍以降、人と人のリアルな接触が難しくなりました。

このため、日本のあらゆる産業で、デジタル化を進める動きが一気に加速しています。

 

広報戦略は、マーケティング戦略とは違う

よく勘違いされるのが、広報とマーケティングの関係です。

広報戦略は、自社のブランドへの信頼を高めるのが目的です。

もちろん、各種メディアで取り上げられることがブランディングにつながり、結果的にマーケティングを後押しすることはよくあります。

広報の結果、すさまじく売れるケースは確かにあり、この表面的な威力に憧れ、「広報で販促しよう」と試みる企業が後を絶ちません。

しかし、広報によって目先の売り上げを求める企業は、メディアからの信頼を失い、広報は失敗します。

これに対し、マーケティングは売上を促進するものです。マーケティングのキャンペーンは、利益を増大させる効果があります。

しかし、危機に直面した時に役立つのは広報戦略です。社会との信頼がベースにあれば、社会やまわりの人たちが危機の克服を応援してくれるからです。

マーケティング戦略では、危機を乗り越えることはできません。

広報とマーケティングの役割をしっかり区別して、広報戦略に取り組んでいきましょう。

こちらの記事もご参考ください。

・広報PR戦略プランの立て方 世の中を巻き込む情報発信の9ステップ

 

広報戦略で取り組む4つのこと

では、広報戦略で取り組む具体的な4つの内容を紹介しましょう。

 

①会社・組織の評判(レピュテーション)、認知の向上

会社・組織そのものについての理念やビジョンを発信し、それに共鳴してくれるファンを増やしていく取り組みです。

 

②ステークホルダー(利害関係者)ごとの良い関係づくり

会社や組織の周りには、いろいろな利害関係者がいます。それぞれに応じた広報が必要です。

・社内におけるコミュニケーション

・人材採用におけるコミュニケーション

・投資家向けのコミュニケーション(IR)

・地域コミュニティとのコミュニケーション

 

③事業部門ごとの取り組み内容の発信

いくつもの事業部門があるような大きな組織・団体では、それぞれが取り組む内容を部門の当事者たちが発信していく必要も出てきます。

 

④組織全体としての広報意識・文化の醸成

SNSへのおふざけ投稿が瞬く間に拡散して大炎上するなど、現代では、従業員一人ひとりの振る舞いや行動が、広報戦略を台無しにします。

その逆もあります。1人の振る舞いがその組織への社会的評価を劇的に高めるケースもあります。

組織全体で広報意識を醸成し、広報文化を培うことは危機管理としても重要です。

 

戦略的な広報を導入する6つのメリット

広報に戦略的に取り組むことは、あなたのビジネスに多くのメリットをもたらしてくれます。

 

⑴自社のブランディング

広報戦略によってメディアへの露出が増えれば、あなたのビジネスは他との比較を超えた、唯一無二の存在として認識されるようになります。

あなたのストーリーが伝わり、人間味を感じさせることができ、ファンが増えます。

また、広報戦略は、あなたのビジネスのマーケティング活動を強力に後押ししてくれます。

 

⑵見込み客の獲得

ソーシャルメディアやブログ、テレビ、新聞、ニュースサイトなど様々なメディアで自社が取り上げられることで、認知度が上がります。

その結果、あなたの会社の商品サービスを必要とする潜在的な見込み客の目にとまるようになります。

 

⑶人材の採用

あなたのビジネスが各種メディアで取り上げられることで、その分野・業界におけるフロントランナーとして、多くの人々に認知されるようになります。

その結果、「この会社で働きたい!」と希望する人が、あなたの会社の門を次々と叩くようになるでしょう。

さらには、すでに今いる従業員たちの士気も確実に上がります。

すると当然、離職率も下がり、人材採用のコストも低減していきます。

 

⑷投資機会の増加

メディアに掲載されることで、投資機会を求めている投資家たちがあなたのビジネスに注目するようになります。

特に、日経新聞などビジネス界において影響力の強いメディアで紹介されれば、誰しもが「将来有望なビジネスだ」と見なすようになります。

すると、銀行員やベンチャーキャピタルが、「ぜひ資金を提供させてください」と列をなすようになります。

 

⑸危機管理、危機からの回復

ビジネスをやっている限り、大なり小なり危機やトラブルに直面するものです。

しかし、優れた広報戦略があれば、事態が最悪に至る前に、状況の悪化を食い止めることができます。

 

⑹一貫性のある広報活動を継続できる

目標を定めて広報戦略に取り組むことで、「どのような企業として評価されたいのか」という目標や芯を明確にできます。

そもそも広報は長期的な取り組みです。短期ですぐに成果が現れるものではありません。

何事も、成果が見えないとやる気が続かないものですが、広報は成果がすぐ目に見える形で現れにくいため、挫折する企業がとても多いです。

その点、戦略を立てて腰を据えて取り組むことで、ブレずに一貫した活動が展開でき、広報における勝者となる可能性が大きく高まります。

 

広報戦略のフレームワーク

広報戦略を立てるのに役立つフレームワークを3つ紹介します。

 

PEST分析

これは、あなたのビジネスを取り巻く環境を分析するのに役立つフレームワークです。

Pは、政治(Politics/Political)
Eは、経済(Economy/Economical)
Sは、社会(Society/Social)
Tは、技術(Technology/Technological)

こうした観点から、各項目それぞれ3年程度先の将来予測を立てていきます。

 

①政治

ビジネスを規制する法律や、政治の動向はどうなるか?

②経済

景気の動向、所得、為替の変化はどうなるか?

③社会

人々の価値観や、人口見通し、流行はどうなるか?

④技術

ビジネスに影響する技術が生まれそうか?

 

広報は、世の中全体の動きに影響される部分が大きな活動です。だからこそ、この分析はやる価値があります。

 

4P分析

これは、4つの視点で考えるマーケティングの分析手法です。4Pとは以下の通り。

 

・製品(Product)
・価格(Price)
・場所(Place)
・プロモーション(Promotion)

この4つの観点から、差別化できる広報戦略を検討していきます。

 

①製品

どんな特徴、強みがあるか?

②価格

その値付けにインパクトはあるか?

③場所

今までにない場所で売ることはできないか?

④プロモーション

今までにない販促活動ができないか?

 

SWOT分析

スウォット分析、と読みます。これも有名なフレームワークの一つで、広報においても有効です。

・強み(Strength)
・弱み(Weakness)
・機会(Opportunity)
・脅威(Threat)

メディアのニュースになるものは、同業ライバルよりも優位性があるものです。だから、自社の立ち位置を客観的に把握することは広報戦略に役立ちます。

 

①強み

他社にはない自社の強みは何か?

②弱み

克服すべき弱点は何か?

③機会

市場にチャンスがあるか?

④脅威

避けるべき脅威はあるか?

 

広報戦略プラン作成から実行・8つの流れ

さあ、いよいよ広報戦略のプランを立てましょう。最初にやるべきことは、「状況分析」です。

これまでうまくいったこと、いかなかったこと、今後待ち受ける障害は?などなど。

過去を振り返り、自分たちの現状を的確に把握しましょう。その上で構築されたプランほど、実効性が高まります。

8つの流れは以下の通りです。

①この1年の活動を振り返る

②目標と目的を明確にする

③ターゲットを特定する

④世の中をマクロとミクロで把握する

⑤中心的メッセージを作成する

⑥コンテンツを作成する

⑦発信ツールを選ぶ

⑧広報戦術の実行

 

この1年の活動を振り返る

まずはこの1年の広報活動を振り返ります。

どんな情報発信をやりましたか?そしてどんな成果がありましたか?

プレスリリースは何本出しましたか?何人・何社のメディアの記者編集者とどれだけコミュニケーションを取りましたか?

取り上げてくれたメディアはあったでしょうか?その取り上げられ方は、好意的だったでしょうか、それとも批判的だったでしょうか?

ウェブでは、どのような発信をしましたか?オウンドメディアへの投稿は?SNSにはどれくらい投稿し、どれだけの反応を得られたでしょうか。

反応が薄い原因はなんでしょうか?コンテンツの質はどうでしょうか、そもそも発信本数が少なくありませんか?

ウェブサイトでお客様からコンタクトは得られていますか?PV?コンバージョン数、率は?検索エンジンにおける順位は?

…こうした質問を自らに問いかけた後、ライバル社についても同じように分析してみましょう。

自社を分析し、ライバル社を分析すれば、自ずとやるべきこと、変えるべき部分、改善ポイントなどが見えてきます。

 

目標と目的を明確にする

この1年の実績を直視する、そしてライバル社を分析する。これが正しくできれば、進むべき道が浮かび上がって来るはずです。

己を知り、敵を知れば百戦危うからず、と言いますね。

あとは、あなたが何を達成したいのか?を決めましょう。

最初にあなたが達成したい目標・目的を明らかにしておけば、広報戦略を立てるプロセスがスムーズになります。

目標設定には、5つのポイントがあります。これが「SMART」です。

Specific 具体的であること

Measurable 測定可能であること

Achievable 達成可能であること

Relevant 関連性があること

Time-bound 期限付きであること

広報の大目標としては、例えば「商品の知名度を上げる」「会社のブランド価値を高める」などがあるでしょう。

その大目標をもとに、上記の「SMART」にのっとり、数値や日付を具体的に定めていきましょう。

 

ターゲットを特定する

戦略を立てる前に、まずターゲットは誰か?を明らかにしましょう。

広報で目指すのは、ターゲットの人たちと良好な関係を築くことです。

例えば

・既存のお客様

・見込み客

・投資家

・政府関係者

・従業員

・メディア関係者

などなど。

あなたの目標に合わせて、最も適切なターゲットを決めましょう。

ターゲット、いわゆる「ペルソナ」が決まれば、のちのち作成にかかるメッセージが、より相手に深く刺さりやすくなります。

 

世の中を、マクロとミクロで把握する

世の中の状況を、広く、そして深く、注意深く観察しましょう。

広報戦略は、世の中の動きにどうしても左右されてしまうものだからです。

マクロとは、景気動向、政治・法律の動き、社会の変化、テクノロジーの進歩、など。

これらは、あなたにはコントロールできない領域です。

ミクロとは、あなたのお客様、ライバル企業、取引先、流通、その他の利害関係者、そしてメディア、などです。

ここで、上記で紹介した「PEST分析」が役に立ちます。

 

中心的なメッセージを構築する

あなたが定めたターゲットと共有できて、絆と連帯感を深められる、そういうメッセージを構築しましょう。

当たり障りのないメッセージには訴求力はありません。それよりも、あなたの価値観と目指すビジョンを明らかにし、旗を掲げましょう。

中心的なメッセージを作る際、注意すべきは、一方的な自己満足メッセージにしないことです。

ターゲットの人々の心に響くようなメッセージを心がけましょう。

この中心的メッセージを作成する際には、次のような質問を自分に問いかけてみましょう。

「自分のビジネスのミッションは何か?」

「社会に対して、どんな人たちに対して、どんな変化をもたらしたいのか?」

 

コンテンツを作成する

自社のブランディングを高める広報活動において、大きな役割を果たすのが、あなたの「コンテンツ」です。

あなたが業界でリーダーとして認知されたいなら、作成するコンテンツは人々から「優れた情報だ」「役に立つ情報だ」と喜ばれる、教育的な価値がある必要があります。

今まで世になかった専門的な知見や洞察、埋もれていたデータや現場の実態、トレンド、などを世の中に向けて発信していきましょう。

多くの方が、「うちにはそんな特別なネタはない…」と尻込みしますが、そんなことはないんです。必ず、あなたならでは、あなたにしか作成できないコンテンツがあります。

そうした優れたコンテンツこそが、生活者・ユーザーから歓迎され感謝され、評判が高まり、あなたのブランドを強化します。

そして、メディア関係者の目にとまり、影響力の高い新聞テレビで取り上げられるほか、Googleの検索エンジンにも評価され、上位表示されるようになります。

メディアから評価されるコンテンツの作り方は、この無料eブックでも説明しています。

 

発信ツールを選ぶ

プレスリリースはもちろん、ウェブにはSNSを含めて発信手段が無数にあるため、ついここで悩んだり手が止まったりしがちです。

ただ言えることは、「使えるツールは全て使う」です。どこであなたのコンテンツがキーパーソンの目にとまるかわかりません。

実際、広報が伸び悩む企業の多くは、発信の手数があまりに不足していたり、発信手段がとても限定的になっていたりする現状があります。

とはいえ、物理的に全てをカバーするのは現実的ではないですよね。

なので、あなたの広報の目的、狙うターゲット、そしてコンテンツの性質を考慮しながら、最適な発信ツールを選びましょう。

 

広報戦術の検討

発信できるツールはたくさんありますが、整理して検討しましょう。

メディアは大きく分けて、ペイドメディア、アーンドメディア、シェアドメディア、オウンドメディアの4種類があります。

この4メディアを組み合わせたものが「PESOモデル」と呼ばれています。

オウンドメディアとは、自社が所有するメディアのこと。企業のサイトやブログがこれに当たります。

アーンドメディアとは、信用を獲得するメディア。つまり新聞テレビやインフルエンサーなどの第三者です。

ペイドメディアとは、「お金を払う」メディア。つまり広告のこと。

シェアドメディアとは、SNSなどいわゆるソーシャルメディアを指します。FacebookやTwitterなどが代表例です。

 

コンテンツを作成したら、まずはオウンドメディアを使って発信します。

それから、プレスリリースを通じてアーンドメディアに働きかけつつ、自社のシェアドメディアを使いながらウェブユーザーの中で拡散を図ります。

その上で必要に応じて、お金をかけて広告で加速をつけると良いでしょう。

 

広報PR8つの戦術

戦略とは、全体のグランドデザインです。これに対し、実行段階における戦い方が「戦術」になります。

広報では、メッセージを伝えていく対象が社内外に多数あります。このため、取りうる戦術にも以下のように様々あります。

 

⑴メールコミュニケーション

メールはいまだに多くの人々が利用している連絡の手段です。多くの人がソーシャルメディアを使う一方で、メールも日常的に使っています。

「メールマガジンはオワコン」とは、10年以上前から言われていますが、実際なくなっていません。なぜなら今も、書き手にも読み手にもメリットがあるからです。

実際、私も10年近くメルマガ発行を続けており、7600人以上の読者がいます。読者さんに情報提供することで、絆を深める効果は大きいです。

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メールが他の手段と比べて優れているのは、こちらが連絡を取りたいタイミングで即アプローチできる点です。まさに攻めのツールです。

それに対し、ウェブサイトは常に受け身です。相手がわざわざ見に来てもらうのを待つしかありません。

メルマガは、事業の規模の大小を問わず、ぜひやるべきです。

 

⑵各種イベント

イベントには2種類あると考えています。

一つは、純粋にマーケティングを目的としたイベントです。見込みのお客さん向けに魅力的なテーマを掲げ、製品やサービスを宣伝するものです。

そしてもう一つは、社会貢献性のあるイベントです。ここでは参加者から費用を請求したり、直接的に商品サービスを売り込んだりしません。その代わり、社会にとって意義のあるテーマを掲げ、人々への貢献を第一とします。

社会貢献性のあるイベントは、マスメディアが取り上げてくれることがよくあります。その結果、新聞テレビ等で紹介され、あなたのビジネスのブランディングに寄与します。

 

⑶コミュニティとの関係づくり

寄付や慈善事業、環境保護活動、教育活動などを行い、地域社会と良い関係を築くことを図ります。

そうした活動は、顧客の評判を高め、あなたのビジネスへのロイヤリティを高めることにつながります。

大事なのは、目先の損得を考えず、誠実に地域社会への貢献に努めることです。

 

⑷メディアリレーションズ

新聞やテレビ、雑誌、ネットメディアなどの記者・編集者、ディレクターたちと良い関係を築いていくことはとても重要です。

「この会社・広報は信頼できる」と思ってくれるジャーナリストは、あなたの広報戦略のスムーズな展開にとって、大きな財産になります。

あなたのビジネスのメディア露出は増えやすくなり、危機発生時にもメディアが見方となって支えてくれます。

メディアリレーションについては、以下の記事で詳しく説明しています。

・メディアリレーションとは?読売新聞の記者経験から伝える関係づくり3つのポイント

 

⑸インフルエンサーを使ったマーケティング

インスタグラムやTwitterなどのソーシャルメディアで、多数のフォロワーを抱える人気者がいます。それがインフルエンサーです。

彼らを味方につけて、自社の販売にとって有利な情報を発信してもらうのが、インフルエンサーマーケティングです。

あなたのビジネスと相性の良いインフルエンサーを起用できれば、大きな反響を呼び起こすことができます。

昨今のウェブユーザーは、企業からの売り込みを信じなくなっています。その代わり、自分の友人や家族、同僚やインフルエンサーといった個人の口コミを参考にします。

だから、インフルエンサーを用いたマーケティングは、従来のマーケティングに比べて11倍の効果があるという研究結果もあるくらいです。

重要なのは、インフルエンサーとの信頼関係です。金銭的対価よりも、あなたのビジネスに対する共感の度合いを深めていただくことです。

その方が、発信内容もユーザーにより刺さりますし、長期的な関係に発展させることができます。

 

⑹社内広報

社内広報は、社内の情報を従業員の間で共有することで、一体感や連帯感を高める効果があります。

大事なのは、透明性です。社内の一部の人しか知らないことがあると、メンバーの間に不信感が生まれます。そんなことにならないよう、仲間に向けて情報をどんどん提供しましょう。

その内容は、トップのメッセージ、会社の福利厚生、グループ活動の案内のほか、各部門で今取り組んでいる事業内容、関わるメンバーの肉声、思いなど、様々な要素がコンテンツになります。

 

⑺ソーシャルメディア

FacebookやTwitter、インスタグラム(Instagram)など、多くのユーザーを抱えるソーシャルメディアはいくつもあります。

あなたのビジネスにマッチしたSNSを選び、ユーザーに向けて直接メッセージを語りかけていきましょう。

ソーシャルメディアでは、露骨な宣伝をすると嫌われますので注意が必要です。

ここでは宣伝・販売は脇に置いておいて、ユーザーたちとの正直で誠実、人間的なコミュニケーションに努めましょう。

この記事もご参考ください。

・情報拡散!一気に広める方法。SNS×広報PRで最大効果を得る5手順

 

⑻危機管理(クライシスマネジメント)

どんなビジネスでも、何かしら大なり小なり危機に見舞われることでしょう。

そんな時こそ、迅速に、一貫して、戦略的に対応する必要があります。それが危機管理(クライシスマネジメント)です。

私は新聞社の社会部記者でしたが、あらゆる事件事故、不祥事を現場で取材しました。

メディアの報道が世論を動かし、企業に大きなダメージを与えたケースを多数目の当たりにしてきました。

危機管理については、この記事で詳しく説明しています。

 

広報戦略の効果測定のやり方

「広報の成果を測定することは難しい」とよく言われます。それは、広告のように明らかな数字で測りにくいからです。

このため、社内でも「広報がどれだけ業績に貢献しているんだ」という疑問の声が上がり、広報担当が肩身の狭い思いをする、というケースはよくあります。

ですが昨今ではウェブから幅広いデータを取得できるようになっており、広報戦略の効果測定がやりやすい環境が整いつつあると言えるでしょう。

以下に、広報戦略の効果測定・評価に役立つ手法を紹介します。

 

広報の評価レベル13段階

広報戦略の評価レベルについて、スコット・M・カトリップは著書「体系 パブリック・リレーションズ」で、以下の13段階を紹介しています。

<効果>
13 社会や文化の変化
12 言動を繰り返す人数
11 希望通りに行動する人数
10 態度を変更した人数
9 意見を変更した人数
8 メッセージのコンテンツを学ぶ人数

<実施>
7 メッセージや活動に注目する人数
6 メッセージや活動を受け取る人数
5 掲載したメッセージ及び履行した活動の数
4 メディアに配信したメッセージ数とデザインした活動の数

<準備>
3 メッセージや活動をプレゼンテーションする品質
2 メッセージと活動のコンテンツの適切さ
1 プログラムをデザインする基礎となる背景情報の妥当性

 

広報戦略によって、「13 社会や文化の変化」を引き起こすことができれば最高です。

しかし、そこまで至らなくても「4 メディアに配信したメッセージ数」、つまりプレスリリースの配信数は、自分たちでコントロールすることができます。

そのコントロールしやすい数値をベースに、メディアに掲載された数や、それを受け取った人数などで、数値を見える化していきます。

より具体的に、広報戦略の効果測定手法をいくつか紹介しましょう。

 

広告費換算

新聞雑誌に掲載されたら、その記事の大きさを広告費用に当てはめ、金額を算出します。テレビの場合も、番組で露出した時間をCM価格に当てはめ、金額を算出します。

ただ、読者・視聴者は広告CMよりも記事・番組をはるかに信用するため、実際のメディア露出効果は、広告費換算の数倍とも言われます。

 

インターネットでの認知度調査

企業が求めるイメージがどの程度浸透しているのかを、ネットを通じて実施します。専門の業者に依頼して行っても良いでしょう。

 

SNSの調査

投稿の閲覧数、フォロワーの数、シェアされた数など、計測しやすい数値がいくつも取得できます。

 

ウェブサイトのアクセスログの調査

自社サイトのアクセス数はわかりやすい指標になるでしょう。ウェブサイトのアクセス解析ツールは多数あり、訪問者がどこから来てどこを見て、滞在時間はどれくらいか、どこで離脱されたか、など詳細に分析できます。

 

バルセロナの原則

広報戦略の効果測定に関し、もう一つ紹介したいと思います。

スペイン・バルセロナに広報の専門家が2010年集まり、広報の成果測定について話し合いました。その結果生まれたのが「バルセロナの原則」です。2020年に改定され、「バルセロナ原則3.0」となりました。

以前は、メディアの掲載ベースで測定されがちでした。しかしこの新たな原則では、広報成果は「もたらした変化」をベースに測定すべき、だとしています。

7つの原則は以下の通りです。

(1) ゴールの設定は、コミュニケーションのプランニング、測定、評価に絶対的に必要なものである。
(2) 測定と評価はアウトプット(施策の成果)、アウトカム(目標に対する成果)に加え、潜在的なインパクトを明らかにすべきである。
(3) ステークホルダー、社会、そして組織のために、アウトカムとインパクトを明らかにすべきである。
(4) コミュニケーションの測定と評価は、質と量の両方を含む必要がある。
(5) 広告換算はコミュニケーションの価値を測定するものではない。
(6) 包括的なコミュニケーションの測定と評価には、オンラインとオフラインの両チャネルを含む。
(7) コミュニケーションの測定と評価は、学びとインサイトを導くため、誠実さと透明性に基づくべきである

※公益社団法人日本PR協会サイトより引用

 

広報戦略における3つの注意点

広報戦略を進めるにあたって、注意したいポイントを3つ紹介します。

 

①効果測定は、定性と定量でめやすを作る

上記で効果測定の方法を紹介しました。ただ、広報の効果は、数値で表せるものもあれば、そうでないものもよくあります。

「定量」は、数値や数量で表すことができる要素のことを指します。これに対し、「定性」は、数値化できない要素を指します。

定性的な評価とは、ステークホルダーの生の意見や感想などがあります。仮にその数が少ないものだったとしても、内容において非常に重要な示唆を含むケースが考えられます。

広報戦略の最終目標は、良好な関係性の構築ですから、数値ばかりにとらわれず、定性的な観点からも評価・測定する視点を持ちましょう。

 

②社内で広報の意識を統一し、仕組み化する

広報戦略を企業が進める際、ありがちなのが現場の広報担当者だけに丸投げされるケースです。しかし広報戦略は、1担当者だけで進めることは不可能です。

トップが積極的に関与するのはもちろん、社内の他部署の1人1人が広報マインドを持ち、目指すべきゴールと行動を仲間と共有できるよう、仕組み化することに努めましょう。

 

③社会状況を踏まえて、随時アップデートする

社会状況は、日々目まぐるしく変化します。特に2020年のコロナ禍になってからその傾向は顕著です。

広報は、社会との関係づくりに取り組む活動ですから、社会状況に応じてフレキシブルに変化していくことが欠かせません。

だから、最初に決めた広報戦略プランにガチガチに固執したりしないように注意しましょう。

世の中の変化に合わせ、広報戦略を柔軟に対応させていくことが、成功への近道でもあります。

 

広報戦略の成功事例

エアウィーブ

もともとは愛知県の小さな釣り糸製造の会社でしたが、この釣り糸の樹脂素材をマットレスに転用し、販売を開始。

広報活動に積極的に取り組み、オリンピック時に浅田真央選手らが空港で持ち歩いているのがテレビで話題になりました。

JALファーストクラスにも採用され、5年で売上115倍、115億円という急成長を果たしました。

エアウィーブ公式サイト

 

ザクとうふ

相模屋食糧が2012年3月に発売した「ザクとうふ」は、SNSを中心に大きな反響を呼び、爆発的なヒットとなりました。

広告は使わず、秋葉原でガンダムの声優を招いて記者会見を開くなど、話題作りにも積極的に取り組みました。

豆腐業界では、初出荷数5000丁でヒット商品といわれる中、14万丁を出荷。 6年で売上4倍アップ、町の豆腐屋から業界のトップメーカーに上り詰めました。

相模屋食糧公式サイト「ザクとうふ」

 

アナと雪の女王2

ウォルト・ディズニー・ジャパンが2019年11月に公開した映画「アナと雪の女王2」は大きな話題となりました。

自然発生的に人気になったようにもみえますが、実は同社は映画公開の1年近く前から、公開に向けて周到な広報戦略を展開しています。

20回以上にわたるプレスリリースを、様々な切り口、あらゆる機会を捉えて発信し、メディアに情報を提供。

その結果、公開から3日間での興行収入は19億円を突破、観客動員は145万人を数え、大ヒットだった前作の2倍以上の成績を叩き出しました。

その広報戦略は、この記事「アナと雪の女王2の広報PR戦略を考察する」で分析しています。

 

スターバックスコーヒー ジャパン

広告を使わず、多数のファンを獲得し、圧倒的なブランドを確立した最たる例が、「スタバ」でしょう。私もよく利用します。

SNSのフォロワー数が突出して多く、Twitterのフォロワー数は、500万人を超えています(2021年3月現在)。

ただその人気は、SNSが生み出したというよりも、店舗におけるお客様とのコミュニケーションが根本にあります。

スタッフ一人一人がスターバックスを愛し、心のこもった接客をすることがファンを生み出し、そのまま広報活動になっています。

 

・スターバックスコーヒージャパン(公式サイト)

 

広報戦略に挑戦し、改善・向上に取り組もう

私は、広報戦略は経営そのものだと感じています。大きく世の中が変化し、情報が入り乱れる中、人々は信頼できる情報を心から求めています。

これからのビジネスで生き残るのは、そうした人々の心に寄り添い、信頼感のあるメッセージを発信し、コミュニケーションが取れる組織や個人だけです。

これまで、いくつもの企業が広報戦略で飛躍してきました。

そしてこれからは、「飛躍する企業は広報戦略をやっている」のが常識になるでしょう。

あなたの広報戦略が、世の人々を助けられる可能性を秘めています。ぜひこの記事を参考にチャレンジしてください。

そして、世の中の状況は刻一刻と激しく変化していきますから、最初に立てた戦略に固執せず、柔軟に変化させていきましょう。

広報の遂行には、フレキシビリティが欠かせません。

あなたの挑戦が大きな実を結ぶことを心から願っています。

 

この記事は、元読売新聞記者で、元電通PRシニアコンサルタント、株式会社メディア戦略の代表取締役、坂本宗之祐(そうのすけ)が執筆しました。

 

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・雑誌(209)
・ラジオ局、CATVなど(274)

これらの媒体名、所在地をエクセルで一覧にまとめています。

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