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記者が教える広報PRの方法

広報PR情報No.1サイト 元読売新聞記者 坂本宗之祐

調査リリースって何?書き方は?元新聞記者がPRで成功する8手順と極意5つを説明します【事例も紹介】


新聞記者11年の間に、調査リリースをもとに新聞記事を200本以上は書いてきました。

こうした調査リリース(=調査結果を載せたプレスリリース)は新聞社テレビ局にたくさん届きますが、「ニュース価値なし」として捨てられるケースがとても多いです。

せっかく調査を行なったのに、誰にも見向きもされなかったら悲しいし、もったいないですよね。

この記事では、広報PRの一環で行う「調査リリース」で失敗しないように、私の記者経験を元に調査リリースの成功法を解説しますので、最後までじっくりお読みください。

調査リリースとは?

調査リリースとは、企業や組織がアンケートなどの調査を行い、その結果をプレスリリースにまとめて公表するものです。広報PRの手段の1つとして広く行われています。

調査リリースは、単にデータを広く知ってもらう以上の価値があります。社会に対して新しい洞察を提供することで、企業のブランドイメージを高める効果が期待できるからです。

調査内容はさまざまで、市場のトレンドや消費者行動の分析など、幅広いテーマで自由に設定できます。

 

調査リリースで重要なこと=ニュース性

大事なのは、ただ漫然と調査をして結果を並べるのではなく、調査結果が今まで人々の知らなかった「気づきや発見を示せるかどうか?」です。

つまり、調査結果に「ニュース性」がなければ、新聞やテレビなどはその調査リリースを記事や番組で報道することはありません。

メディアに取り上げてもらえなければ、せっかく調査リリースを実施しても、その効果は1/3、1/4あるいはもっと低くなってしまいます。

 

調査リリースを成功させるカギとは?

各種メディアで取り上げてもらい、調査リリースの効果を最大限に発揮するためには、結果のニュース性とともに、「調査の信頼性」にあります。

情報のプロであるジャーナリスト達が、「この調査は客観性があり、信頼できる」と感じてもらうことが、調査リリースの成否を大きく分ける、というわけです。

ただ実際は、企業が出す調査リリースの多くは信頼性に欠ける、とメディアの人々から認識されています。

調査リリースでは、読み手が関心を持つようなデータの選択、視覚的に理解しやすいグラフやチャートの使用、そして調査結果が持つ意味や影響をわかりやすい言葉で説明することが必要です。

調査リリースは、単に情報を発信する手段ではなく、その企業や組織の思考や価値観、さらには社会に対する貢献度を示すツールとしても機能します。

読者やメディアが興味を持ち、共有したくなるような調査リリースを作成することができれば…

企業の知名度向上はもちろん、その分野における権威としての地位を確立できるようになるでしょう。

 

記者は調査リリースをどう思っているか?

「動機が不純な調査リリースがすごく多いな…」と、多くの記者が感じています。

調査って、本当は客観的でニュートラルなものでしょう?

なのに、「自社を宣伝したい!」という不純な動機でアンケートを実施して、

「“客観的でニュートラル”を偽装しているよね」

と多くの記者から見抜かれているのです。

記者らジャーナリストは、情報を見抜くプロです。

不純な動機、つまり「自社を宣伝したい!」という意図で行われた調査アンケートというのは、0.1秒でわかります。

なぜなら、企業のポジショントークが並び、自社中心に語られているからです。

記者が知りたいのは、「今の世の中がどうなっているか?を示す客観的なデータ」です。

だから逆に、客観的な調査によって抽出された信頼性の高いデータは、記者にとって、「今の世の中」を客観的にとらえる有効なツールになり、テレビや新聞で紹介してもらえます。

 

調査リリースの書き方・8つのステップ

ではこれから具体的に、調査リリースを作成するステップを8つに分けて説明します。

 

ステップ①調査の目的、ゴールを明らかにする

まずは、何の目的で調査を行うのか?を明らかにしておきましょう。

調査リリースですから、調査することだけが目的ではないはずです。

「調査結果を広く多くの人々に知ってもらう」のは当然として、

知ってもらうことで、あなたのビジネスにどういう影響をもたらしたいのか?何を目指すのか?というゴールを設定しましょう。

 

ステップ②調査のテーマを決める

ゴールを決めたら、では具体的にどんなテーマで調査アンケートを実施するのか?について具体的に検討します。

例えば、ダイエットのビジネスをしている企業なら当然、やせることや健康にまつわるテーマが検討対象になります。

ただ、そうした調査はこれまでにたくさんありますから、「今までの調査にない独自性=オリジナリティ」を考える必要があります。

自社のビジネスに関係があり、なおかつ今までにない切り口でテーマを設定することを目指しましょう。

 

ステップ③調査方法を決める

テーマが決まったら、次は具体的なアンケートの調査方法を考えます。

今、最もポピュラーなのは、インターネットを使ったアンケート調査です。低コストで短期間に、多くの人にアプローチできるメリットがあります。

それから、手間と労力はかかりますが、対面で聞き取りを行うという方法もあります。コストもかかりますが、1人1人の本音を引き出しやすく、精度の高い調査になりやすいメリットがあります。

スマホやネットに不慣れなシニア層をターゲットにするなら、電話や郵送によるアンケートが有効かもしれません。

調査のテーマや対象を考慮しながら、ベストな調査方法を決めましょう。

 

ステップ④アンケート項目を作る

アンケートに応じてくれる人に投げかける質問項目を作ります。

ここは調査リリースにおいて、最も重要な作業と言っても過言ではありません。

なぜなら、質問がうまいかヘタか?で、調査結果のクオリティが大きく左右されるからです。

だから、アンケートの項目は、「ニュースとなる調査結果」を導き出すことを想定して作りましょう。

ダイエットの調査なら、「現代日本人のダイエット状況について、まだ世の中にあまり知られていない事実」を掘り起こそう!という意図をもって、質問内容を考えるのです。

社会にとって価値のある統計データをゲットすることを目指して、アンケート項目を作成してください。

くれぐれも「あなたはやせたいですか?」のような、聞くまでもない質問をしてはいけません。お互い時間のムダになってしまいます。

質の高い質問項目を作るには、今の社会トレンドを正しく把握しておく必要があります。

毎日、ニュースや新聞に目を通し、日頃から社会の動きにアンテナを張っておきましょう。

 

ステップ⑤調査を実施する

③で決めた調査方法でもって、調査を実施します。「期間」と「調査する人数(目標)」を決めておきましょう。

インターネットを通じたアンケートは手軽で、コストも昔と比べるとかなり安くなりました。

ただ、いくら低コストでも、統計的に有為なアンケートでなければ意味がありません。

手軽なネット調査を提供しているサービスはいくつもありますが、各社の強みや得意分野はそれぞれ異なりますので、慎重にサービスを選んでください。

【調査リリースの作成で使えるサービス】

・Googleフォーム

オンラインで無料で使えるフォームのサービスです。アンケートを簡単に作成できます。また、回答をリアルタイムで分析できるメリットもあります。

自社独自でカンタンなアンケートを実施したい方にはとても便利です。

 

・マクロミル

マーケティング調査の草分け的な企業です。年間30,000件、取引社数4,000社を超える豊富なリサーチ実績(同社サイトより)があります。

 

・Freeasy

500円からネットリサーチができるセルフ型アンケートツール。業界で初めて、AIによる調査モニターの品質管理を行なっているとのことです。

 

ステップ⑥データを集計、整理する

アンケート結果の生データが出そろったら、そのデータを整理・集計しましょう。

集計を整理する方法として、2つの観点があります。

(1)単純集計

「運動は週に何回していますか?」という質問に対し、「毎日」「2、3日に1回」「週に1回」「ほとんどしない」「全くしない」という回答それぞれの数字を算出するもの。

(2)クロス集計

「運動は週に何回していますか?」という質問と、回答者の年代「10代」「20代」「30代」「40代」「50代」「60代以上」をかけ合わせて、それぞれの年代別に回答数を算出するもの。

クロス集計を行うと、年代によって回答の傾向の違いを浮き彫りにすることができて、よりリアルに世の中の実態をとらえやすくなります。

 

ステップ⑦最もニュース性のある回答結果を突き止める

単純集計で全体の傾向を大きくとらえつつ、クロス集計でより具体的な個々の状況をじっくり見極めていってください。

それらの回答結果で、「これは意外だ」「発見だ」「新しい知見が得られた」と感じられるデータを突き止めてください。

それが、調査リリースを公表する際の「目玉」となります。

「どれも甲乙つけがたい」とか、「特段これといった発見がない…」という場合でも、どれか1つを選び出すことを強くおすすめします。

なぜなら、調査リリースを発表する際のタイトルが

A 60代以上のシニアの2人に1人が週1回以上、運動していると判明

B ダイエットについてのアンケートを実施しました

では、AとBでメディアの反応が天と地くらい違ってくるからです。

 

ステップ⑧プレスリリースの執筆

ステップ⑦で「目玉」を決めたら、それをタイトルに配置します。

そして、リード文(導入文)は以下のように記載します。

ーーー
○○○○○についての調査を実施しました。その結果、○○○○○○が判明しましたのでお知らせします。
ーーー

このリード文に続けて、本文に以下の情報を記載しましょう。

・調査リリースに必要な情報

1、調査の時期(例:2024年3月1日〜31日まで)
2、調査の方法(例:インターネットを通じたアンケート)
3、調査対象の属性(例:小学生の子供を持つ日本全国の親)
4、調査した母数(例:n=1000人)
5、回答数
6、アンケート項目数と、各質問の具体的内容
7、各設問ごとの回答数、回答内容

そして、ビジュアルでも理解しやすいように、必要に応じて円グラフや棒グラフ、折れ線グラフなども記載しましょう。

 

なお、プレスリリースの書き方についてはこの記事をぜひご覧ください。

(参考)・マスコミ取材お願いする依頼文の書き方と例文。元読売新聞記者がプレスリリース徹底解説します

 

記者が教える!調査リリース3つの重要ポイント

1、調査リリースはアンケート項目(質問)で9割決まる

アンケートの項目づくりは、「ニュースとなる調査結果」を想定して作りましょう。

多くの調査リリースのアンケート項目を見ると、とにかく思いつきや当てずっぽうで作られたとしか思えない、思慮の浅い質問が多いです。

記者から見れば、「その質問、する意味あるの?」と感じられるのです。

調査リリースが成功するか?は、どんなアンケートの質問をするか?で決まります。

ですので、質問は練りに練って考えてください。

では、どういう考え方で、質問を作ったら良いのか?

必ず「仮説」を立ててじっくり考えましょう。

・○○○○と考えている人が世の中に多いのではないか?

・○○○○という回答が半分以上あれば、面白いニュースになるのでは?

…という具合です。

この仮説を立てるコツは、「政府の政策立案者」あるいは「ジャーナリスト」「大学教授など研究者」になったつもりで考えることです。

ほとんどの調査リリースは、企業の自社視点から抜け出せていません。

だから、多くのメディアから「客観性に乏しい」「信用に足らない」と判断されてしまっているのです。

繰り返しますが、調査リリースはアンケート(質問項目)で9割決まります。

 

2、調査リリースは「タイトル」が極めて重要

調査リリースを発表して、見る人の興味を引くことができるか?は、「タイトル」で決まります。

ここも練りに練って考えてください。

 「○○○○○調査のお知らせ」

ではダメです!

「調査をしました」だけでは、ニュースになりません!こういう調査リリースのタイトルが本当に多いです。

調査で分かった「ニュース」は何なのか?これをタイトルでバシッと打ち出してください。

「猫を飼って収入アップした人が74%に上ることが判明」

…のような感じです。

つまり、今回の調査で判明したデータの中で、「特にニュース性が高い」と思われる部分をタイトルで打ち出すのです。

こうすることで、見る人の興味を引きやすくなります。

 

3、データの客観性が何より重要

せっかく調査を行なっているのに、客観性が疑われる調査がとてもよくみられます。

わかりやすいのは、最近問題になっている「ナンバーワン広告」。

「わが社が○○○○の調査で、競合他社と比べてナンバーワンでした!」

というもの。

純粋に、客観的な調査でもって「1番だった」のなら何も問題ありません。

しかし実際は、その多くが

「自社をナンバーワンにするという“結果ありき”の、いかがわしい調査」

であることが明らかになっています。

ですので、「その調査、本当かよ?」とあらぬ疑いをかけられないように、調査を行う場合は、徹底して客観的な立場でアンケート等を実施するべきです。

記者は、

・「企業が自社宣伝の目的でやってるな」
・「自社商品がいいという結論に誘導するアンケート項目だな」

と感じたら、怖くて怖くて、とても記事にできません!

ですので、客観性の乏しい調査リリースは、100%失敗します。

調査リリース作成について2つのアドバイス

①ニュースの見極めは慎重に!

プレスリリースは、タイトルで決まります。タイトル部分で、読み手に「ニュース性」を感じさせなければなりません。

しかし、調査リリースに限ったことではありませんが、大多数のプレスリリースが

「ニュースはそこじゃないよね…」

というところをタイトル部分に持ってきています。

仮に素晴らしいアンケート調査ができたとしても、プレスリリースのタイトルづけが間違ってしまえば、すべてが台無しになってしまいます。

くれぐれも、調査結果のどこがニュースなのか?について、慎重に検討してください。

 

②アンケート項目作りからメディア関係者に相談しよう

調査リリースといっても、そもそも「ニュース性」がなければメディアでは取り上げようがありません。

ニュースつまり驚きや発見、意外性があるような調査結果をメディアは求めています。

その驚きや発見、意外性のある調査結果をゲットできるかどうか?は、アンケートの調査項目を適切に作れるかどうか?にかかっています。

調査結果が、「そりゃそうだろ…」という目新しさも何もない内容だったら、意味がないのです。

例えば

「健康のために運動したい、と考えている人が84%」

という調査結果があったとします。

「健康のために運動したい、と考えている人が多いのは当たり前だよね」

と思いませんか?これではニュースにはなりません。

こうした調査結果を、堂々とプレスリリースして撃沈している調査リリースはとても多いです。

これは、アンケート項目を作った時点で失敗しています。

調査リリースで失敗しないためには、メディア関係者に「どんな情報が欲しいか?」を事前に聞いておくと良いでしょう。

 

調査リリースで大事なのは「客観性」!

記者は上記のように、とてもシビアです。

さらには最近の若いウェブユーザーも、情報の客観性にとても敏感になっています。

彼らは、ステマのような宣伝目的の情報をとても嫌います。

だから、「宣伝目的だな」と思われたらアウト。

「“客観的でニュートラル”を偽装した宣伝」は、今の時代にとても嫌われます。

特に調査リリースにおいて、ここは大きなポイントです。

調査リリースと謳いながら、その内容は自社に都合の良いデータの羅列だと露呈してしまったら、メディアからはもちろん、消費者からも信用を失いますので注意しましょう。

 

調査リリースの事例5選

・日本生協連

 

・森下仁丹

 

・ヤクルト

 

・日清食品

 

・東京商工リサーチ

 

まとめ

なぜ調査リリースは「メディアから取り上げてもらいやすい」と言われているのか?

それは、純粋な調査統計データは、「客観的な情報」だからです。

メディアはいつも「客観的な情報」を求めているのです。

だから、いくら調査リリースを書いて配信したからといって、「客観性」が乏しい調査だったら、誰にも見向きもされません。

だから、自社目線の強すぎるアンケート調査になってしまわないよう、くれぐれも気をつけてください。

逆に言えば、「客観性の高い情報」であれば、特に調査リリースでなくてもメディアが取材に来て記事で取り上げてくれます。

あなたはぜひ、「客観性の高いプレスリリースを作る」ことを念頭においてチャレンジしてみてください。

優れた調査リリースを作れるようになれば、通常のプレスリリースからもメディアの取材が入りやすくなります。

この記事を何度も読み返しながら、ぜひ調査リリースの質を高めていってください!

 

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