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記者が教える広報PRの方法

元読売・電通PR メディア戦略No.1専門家 坂本宗之祐

メディアリレーションとは?記者から信頼されるために必ず知っておくべき3つのこと


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メディアリレーションとは、直訳すれば「メディアとの関係」。つまり、新聞社やテレビ局、雑誌、ネットメディアなどの記者やディレクターら担当者とつながりを持ち、信頼関係を築く、ということだ。

広報担当として、公式な記者会見や発表会、メディア懇談などを開くケースがあるだろう。

が、こうしたセレミニーでの表面的なコミュニケーションの巧拙よりも重要なのが、「メディアリレーション」だ。

なぜなら、根っこの部分で、記者から「この会社、広報は信頼できる」と感じてもらえるかどうか?によって、長い目で見て広報活動の成果に大きな差が現れるからだ。

あなたもぜひメディアと良い関係を築いてほしい。

そのために、元新聞記者の立場から、メディアリレーションを築くポイントをこの記事で紹介していきたい。

メディア側も、あなたと仲良くなりたい

私は新聞記者だったが、メディアの側からしても、取材対象と「信頼関係が築けているかどうか?」は、仕事で成果を出せるかどうか?を分ける大きなポイントだった。

というのも、メディアにとって良い情報を得られるかどうか?が、記事や番組の質に大きく関わってくるからだ。

特に記者は、自社だけの「特ダネ」が欲しい。その意味でも、取材対象と信頼関係ができていれば、「あなたにだけこの情報を教えます」と言ってもらえる。

だから、あなたが記者らと「良い関係を築きたい」と思っているのと同様、記者らもあなたと「良い関係を築きたい」と思っているのだ。

 

メディアと広報の間で、すれ違いが生じる原因

ただ問題は、記者やディレクターらは、「営利企業のあからさまな宣伝はできない」という点にある。

メディアは特定の企業だけを取り上げたいのではなく、「社会の課題」について取り上げたいのだ。

ここに、メディアと広報の間で、コミュニケーションの齟齬が起きる大きな原因がある。

あなたは「メディアを使って宣伝したい」と思っているかもしれない。

しかし、メディアは「宣伝には使われたくない」と思っている。

だが、根本的にはメディアもあなたと良い関係を築きたいと思っている。そして、社会にとって役に立つ記事や番組を作りたい、と考えている。

そのことは心に留めておいてほしい。

 

ポイント1:マスメディアの理念を理解して、信頼関係を築こう

ではここから、具体的にあなたがメディアリレーションを築くポイントをお伝えしていこう。

まず、ぜひマスメディアの理念を知っておいていただきたい。

そこを理解しておけば、記者たちがどういう情報をニュースとして取り上げるべきだと考えているか、手に取るように分かるようになる。

では、順番に説明していくことにしよう。

 1−1 マスメディアは社会を良くしたいと考えている

報道マスコミは、一言で言えば、「社会をより良くする」ことを目指して、日々の報道活動を行なっている。

日本新聞協会の倫理綱領には、次のような文言がある。

豊かで平和な未来のために力を尽くす

次に、朝日新聞綱領を引用する。

一、不偏不党の地に立って言論の自由を貫き、民主国家の完成と世界平和の確立に寄与す。

一、正義人道に基いて国民の幸福に献身し、一切の不法と暴力を排して腐敗と闘う。

(以下略)

報道機関にはいまだ正義を志向する文化が根強く残っている。

KADOKAWA・DWANGO代表取締役社長の川上量生さんは次のように語っている。

「日本にいろんな組織がありますけど、新聞業界ほど営利企業らしからぬ、いいことをやるっていう文化が残っている組織はないんですよ」

(※ニューズピックス記事 2015/4/22より)

 

 1−2 現場の記者は社会の役に立つ活動を評価する

特に、現場の若い記者の多くは、利潤の追求とはかけ離れた価値観で日々の仕事に取り組んでいる。

つまり、ジャーナリストとして「社会のために役立つ記事を書く」というのが彼らの動機付けとなっている。

一般の営利企業の方々には信じられないかもしれないが、マスコミの記者たちに「稼ぐ」「儲かる」という発想はほぼ一切ない。

だから、記者が取材するかどうかを判断するのは、それを記事にすることで社会の役に立つかどうか?という点にかかってくる。

 

 1−3 記者は利にさとい企業を嫌う

上記のように記者たちには、一般企業では当たり前の「稼ぐ」思考が一切欠落している。むしろそうした考え方を「卑しい」ものとして、低く見る傾向がある。

彼らには「武士は食わねど高楊枝」というプライドがある。形而上的な思考を好む。

だから、企業の「稼ぐ」思考が露骨ににじみ出た広報やPR会社の担当者とは、話が全く噛み合わないことがお分かりいただけるだろう。

 

ポイント2:マスメディアが取材する仕組みを知ろう

では次に、記者たちが情報をキャッチし、取材し、記事になるまでの流れを知っておこう。

 

 2−1 情報のキャッチ

新聞社やテレビ局が情報をキャッチするのは、概ね次のようなルートがある。

 ・プレスリリース: 郵便、ファクス、メール等で情報が届く

 ・電話: 電話で情報提供を受ける

 ・記者クラブへの情報提供: 記者クラブで情報の提供を受ける

 ・記者個人の情報網からのキャッチ: それぞれの記者が自らの情報網から端緒を掴む

 

 2−2 取材

上記の各ルートから届けられた情報について、記者各人がそのニュース価値を見極め、取材するかどうかを判断する。

現場の記者がその判断に迷った場合、上司であるデスクにその判断を仰ぐことになる。

記者は、自分が手にした情報が、次の2つのどちらかに該当するかどうかに強い関心がある。

 その1:特ダネ(スクープ記事)

ライバル各社を出し抜いて、自社のみの独占記事として放たれる記事。これを書くことを多くの記者は目指している。

上記の情報経路で言えば、多くは「自分の独自情報網」から、この特ダネはもたらされる。

だから記者は、自分の独自の情報網を構築したいと考えている。

「タレコミ」と呼ばれる情報提供が特ダネになることもある。これは電話やメール、郵便などで会社に寄せられるものだ。

特ダネを連発していると、その社にはタレコミが増える。「あの社に持ち込めば記事に仕上げてくれるのでは」と期待する人が増えるからだ(最近の週刊文春に顕著にみられる)。

一方で、記者クラブへの情報提供(投げ込みと呼ばれる)や、各社一斉配信のファクスの場合、記者は「各社みんな知っている情報だ」と判断する。

この場合、スクープ記事をものにしよう、というほどのインセンティブ(動機付け)は記者にわきにくい。

 その2 特オチ

記者たちは特ダネをものにしたいと考える一方、特オチに対して強い恐怖を抱いている。

特オチとは、特ダネの逆で、ある記事が「自社だけ載っていない」という状態のことを指す。

特ダネ記事を書くのは並大抵ではない。大勢のライバル記者を出しにく必要があるからだ。だから、特ダネ記事が書けないだけで、記者の評価が大きく損なわれることは少ない。

だが、特オチは話が別だ。「よその記者はみんな知っているのに、お前だけ知らないとは何事だ!」と、記者としての能力が上司に疑われてしまう。

そして人事評価を大きく下げてしまう。だから記者は、特オチを非常に恐れる。

 

 2−3 記事掲載の権限を握る「デスク」によるチェック

さて、特ダネにせよ、各社横並びの記事にせよ、記者が書いた原稿は、最初に「デスク」と呼ばれるベテラン記者がそれをチェックする。

デスクは概ね現場で15年以上の経験を積んだベテラン記者で、40代が多い。後輩記者が書いた原稿がニュースとして世の中に知らせるに値するものか?をチェックする。

デスクはただ単に原稿を添削する存在ではない。現場の記者に指示を飛ばす司令塔だ。取材の不足を感じれば、再取材を命じる。

また、原稿を全く異なる切り口から再構成し、着眼の違う記事に作り変えてしまうこともある。

だから、いくら現場の記者が「良いネタだ」と考えて原稿にしても、デスクがその原稿を通さなかったら、永遠にそれが記事として掲載されることはない。

 

 2−4 部長クラス、編集局幹部によるチェック

デスクを通った原稿は、9割方はそのままニュースとして世の中に届けられる。

だが、稀に「待った」がかかることがある。デスクよりも高い役職にある部長クラスや編集局幹部が、その記事について注文をつけることがある。

その場合は、現場の記者に再取材・書き直しが命じられたり、場合によっては掲載が見送られたりすることもある。

だが、よほどセンシティブな記事でない限り、この段階で掲載を止められるにまで至ることは滅多にない。

ポイント3:メディアリレーションを築く3つの行動

報道機関の仕組みを理解することで、どう取り組めばメディアリレーションを築けるか、が見えてくるかと思う。

具体的にやるべきことは、次の3つだ。

 1 社会性のある情報をデザインする

自社利益のことしか考えない広報は、確実に行き詰まる。ジャーナリストのように自社を客観視し、社会の一員として発信する。

商品サービスについてもストレートな宣伝ではなく、その社会的な価値が伝わるよう情報の加工を行う必要がある。

 2 プレスリリースを継続的に発信する

あなたの会社がトヨタのような超有名企業でもない限り、自ら情報を発信していかなればマスコミから目を向けてもらえない。

だからプレスリリースは必ず送るべきだ。それも粘り強く継続すること。大量のリリースの中でもいずれ記者の目にとまる。

 3 記者との個人的な関係を築く

記者は、前述の通り自分だけの特ダネを書きたい。そのために独自の人脈を築きたい、と考えている。

だから、あなたは記者と個人的な関係を築けばいい。そして自社の話に限らず、役立つ情報提供を続ければ、記者は必ずあなたを大事にしてくれる。

 

言うまでもなく、最も重要なのは1だ。自社が言いたいことありきの発信を続けていては、マスコミに関心を持ってもらえる可能性は限りなく低い。

まずは、ニュース価値のある情報をつくること。その上で、報道機関・記者との接触を地道に続けていけば、あなたの会社はその他大勢の会社から一歩も二歩も抜け出せる。

 

メディアリレーションを築くための注意点

メディアと信頼関係を築く、と言っても、単に「仲良くなる」だけを目指すわけではない。

いくら仲が良くても、提供いただける情報にニュース価値がなければ、取り上げようがない。

私の場合、以前からの友達がある組織の広報担当になり、「友達だから記事にして当然でしょ」と言わんばかりの対応をされたことがある。

「友情を人質に取られた」ように感じて、苦しかった。

正直に言って、友達なのでできる限り記事にはしたい、と思った。

が、そもそものニュースバリューが、自社の媒体の基準に達していないものは、どうしても取りあげようがない。それが現実だ。

だから、社会性、ニュース価値がある情報提供をしていただきたい。

それが分からなければ、率直にメディアの人に「この素材は、どうしたら報道価値が出るでしょう?」と尋ねてみてもいい。

価値のあるネタを持っている、その上で、気持ちよく付き合える人柄の人物であれば、記者にとって最高のパートナーになれる。

 

記者が付き合いたい広報担当者とは?

(1)質問したら、それにすぐ対応してくれる

取材で質問を投げかけたら、すぐに答えてくれる方がいい。

自社のことは知らないことだらけ、という担当者が広報だと、記者は困る。突っ込んだ質問にもある程度、すぐ答えられる知識と能力のある方が望ましい。

もしすぐに答えられないことがあっても、すぐに社内に手配して回答を速やかに出そうという誠意ある姿勢は、記者に伝わる。

誠実に、正直に付き合って欲しい。

(2)顔が広い、人脈を紹介してもらえる

メディアの人は、情報こそが飯のタネだ。だから、価値ある情報をノドから手が出るほど欲しい。

価値あるレアな情報ほど、人を直接介してもたらされる。

だから、記者は多くの人脈を持っていて、そうした人脈を紹介してくれる人を好む。

「自分には大した人脈はない」と嘆く必要はない。今あなたが持っている人脈を、記者に提供しよう、という姿勢を示すだけでも、記者にはとてもありがたく感じる。

 

(3)記者の立場に寄り添ってくれる

広報担当の方は、社会と自社の間をつなぐ窓口のようなものだ。いずれの視点も持っておくことが望ましい。

自社の利益代弁ばかり主張して、記者の声に耳を貸さない広報担当者は、記者から真っ先に嫌われる。

その逆に、記者からの要望があった時、社内に投げ返して対応を求める度量のある広報担当者を、記者は信頼するようになる。

 

まとめ:メディアリレーションは、記者の理念を理解せずして成立しない

マスコミ・報道機関は、世の中をより良くするために、読者・視聴者に有益な情報を届けたいと考えている。

そのために、記者たちは心身に強いストレスを受けながら、取材の現場を日々駆け回り、歯を食いしばっている。一般の人が思っているよりもはるかに泥臭い仕事なのだ。

広報を「お金がかからない宣伝」と安易に考えていると、痛い目を見る。

営利企業であるからこそ、自社の宣伝をしたい気持ちは痛いほどよくわかる。

しかし、記者たちは宣伝はしない、その代わり社会について取り上げる、という根本を理解しておいてほしい。

社会の役に立とう、という姿勢さえ崩さなければ、あなたはマスメディア記者ときっと良い関係を築けて、世の中に良い影響を広げていける。

広報と記者は、どちらが上でどちらが下、ということはない。お互いにそれぞれの役割があって、対等な立場だ。

お互いの仕事を理解しあって、良い関係を築ける記者と広報の方が増えてほしいと心から願っている。

 

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