中小・ベンチャーならチャレンジしよう!伊藤園カフェインゼロ飲料発表【プレスリリース採点】
坂本宗之祐です。このところ糖質の摂取を減らしています。
なので、ご飯を食べる量は減らし、その代わり豆類やお肉、お魚、野菜を多めに食べています。
グルテンフリー(小麦抜き)をやっていることはこの記事でお伝えしましたが、お米も食べる量を減らしているわけです。
これもまた効果てきめんで、体が軽いです。食後の頭がぼーっとすることもなくなり、とても良い感じですよ。
さて、今回は久しぶりにプレスリリース採点をしますね。
今回取り上げるのは、飲料メーカーの伊藤園さんです。
あっ、いつも取り上げるプレスリリースは便宜上、大企業のものばかりですが、中小ベンチャー企業こそやるべきものですからね。
伊藤園さんが昨日発表したカフェインゼロの飲み物についてのプレスリリースです。引用します。
伊藤園、カフェインゼロのリラックス飲料「リラックス ピーチ」をコンビニ限定発売
爽やかなジャスミンとほのかに甘いピーチ香るリラックスティー
カフェインゼロ・カロリーオフのやさしい味わい
「Relax PEACH(リラックス ピーチ)」
8月22日(月)より販売開始【コンビニエンスストア限定】株式会社伊藤園(社長:本庄大介 本社:東京都渋谷区)は、爽やかなジャスミンとピーチのやさしい甘みが楽しめるリラックス飲料「Relax PEACH(リラックス ピーチ)」を8月22日(月)より新発売いたします。
「Relax PEACH」は、爽やかなジャスミンと香り豊かなピーチを組み合わせた、カフェインゼロ・カロリーオフのリラックスティーです(果汁1%)。ピーチのやさしい甘みとジャスミンのすっきりとした後味は、日常から離れてリラックスしたいシーンはもちろん、リフレッシュしたいシーンにもおすすめです。パッケージは、本製品のシンボル“ピーチとジャスミンの花束”と手書き風の文字を採用し、透明感のあるすっきりとしたやさしい味わいを表現しました。
近年、女性の社会進出の増加に伴い、仕事や子育てなどで忙しい毎日を送るお客様が増加しています。毎日忙しく頑張る女性に向けて「Relax PEACH」を発売し、癒しのリラックスタイムとジャスミンティーの新しい楽しみ方をご提案いたします。
最近のトレンド「カフェイン0」に合わせた商品
新しい商品のストレートの発表ですから、大企業ほど奇をてらった書き方はできませんよね。
だからか正直言って、プレスリリースそのものとしては、可もなく不可もない書き方です。
これをマスコミが「取材したい」と思うかどうか?は、商品のコンセプトそのものにかかってきます。
なので、ここでは商品コンセプトについて触れます。
まず、「カフェインゼロ」というのは、最近のトレンドに沿ったコンセプトですね。
・UCC上島珈琲 2016年春、6種類のカフェインレス商品を発売
・ネスレ日本 15年9月~、カフェイン少量コーヒーを「ネスカフェ原宿」で提供開始
・味の素ゼネラルフーヅ 15年8月、「〈ブレンディ〉スティック カフェオレ やすらぎカフェインレス」発売
この記事で紹介しました。僕もまだコーヒー断ち、続けていますよ。
トレンドに乗った情報を提供すること。これは、マスコミから取材に来てもらいやすくする基本的な手法です。
ビジネスとしても、一定のカフェインレス市場の存在があると分かっているわけですから、こうした商品を市場に投入することは安全策でもありますね。
その他大勢からいかに抜け出すか?
カフェインレスという打ち出しで、トレンドには乗っています。
しかしそれは逆に言えば、他にも同様のカフェインレス商品のライバルがいくつもあることを意味します。
だから、後発ゆえに、本来なら他のライバルとの違いを打ち出したいです。
「ピーチ」ということが、その違いである。と言いたいかもしれません。
しかし、ピーチだけではインパクトがないですね。
ピーチにフォーカスするなら、このピーチの物語を見せることが一つの方法です。
例えば、「震災にめげずに頑張る福島県のモモ農家を支援する!」という側面があるとします。
「震災から5年目のモモシーズン、やっと震災以前の品質に戻りました」などの背景があるとか。
こうすると、これはこれで社会性がありますし、この商品のインパクトがぐっと増します。
ただ、福島県産の農作物には賛否両論ありますね。僕は気にせず食べますが。
大企業としては、無用な摩擦を避けるために、産地を表に出さない選択をすることが多そうです。
大きな企業が「無難」な道を選ぶのは仕方ないかもしれません。
が、チャレンジャーが無難な選択をすることは「埋没」を意味しますからね。
新商品を取り上げてもらう方法
この新商品をテレビや新聞で取り上げてもらうには?という現実的な方法について紹介します。
まず、テレビや新聞が、企業の商品を記事や番組で紹介する場合、どのように紹介しているか?を考えてみてくださいね。
まず、一つの商品をそのままストレートに「いい商品ですよ!」と取り上げることって、まずないですよ。
では、どういう取り上げられ方をするか?
記事や番組では、まず「テーマ」ありきです。
例えば、社会トレンドとして、「最近、若い女の性の間でカフェインレスが人気です」という記事や番組のテーマです。
そして、一つの記事の構成として、例えば
・どういう人がカフェインレスを選んでいる?
・その背景には、どういう理由がある?
・実際の商品A
・実際の商品B
・実際の商品C
・カフェインレスでどんなメリット?
・カフェインレスブームによる他の食品や業界への影響
・今後の見通し
みたいな要素が、必要になってくるなーと取材者側としては頭に浮かびます。
さて、お気づきでしょうか?
つまり、商品紹介は、記事や番組の構成の中のほんの一要素に過ぎない、ということです。
ということは、商品ひとつだけでは、なかなか記事や番組として成立しにくい、ということです。
だから、一つのテクニックとしては、次のような方法が考えられます。
カフェインレスブームを知らない記者らに、ライバル社が出している同様の商品も一緒にお知らせする。
「ほら、うちだけじゃなくて、各社出しているでしょ。このように今ブームなんですよ」
記者の心理としても、「宣伝はしたくない」。というか宣伝はできない、というものがあります。
しかし、一つのテーマに沿った複数の商品を紹介するのであれば、それなりに公平性が出せますし、ブームの証明にもなります。なので、記者は紹介する心理的なハードルが下がるんです。
なので、記者に対しては、自社の商品(サービス)だけに限らず、同業他社の商品も一緒に知らせることは、良い方法です。
伊藤園さんの書き方について
ところで、伊藤園さんの元にリリースに戻ります。
こうした消費者向け商品ではとてもよくありがちなのですが、「形容詞」が多いんです。
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・やさしい甘み
・爽やかなジャスミン
・透明感
・スッキリ
・香り豊か
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こういう抽象的で耳障りの良い言葉が多用されていると、「中身がない」と感じてしまうタチです。
できるだけ形容詞を使わずに、「事実を客観的に知らせて欲しい」というのが、記者の本音です。
僕は新聞記者時代、上司のデスクに「形容詞を使うな!」と怒られていました。
形容詞ってラクなんですよ。手抜きができる言葉です。なんとなくわかった気になる。
取材者としては、例えば「やさしい」なら、具体的にそれはどういうことなのか?を自分の目と感触、それから科学的データで突き止めるべきである、ということです。
・リフレッシュしたいシーン
というのも抽象的ですね。
これも具体的に、例えば「仕事を終えて帰宅して、夜のお風呂上がりにソファに腰かけて飲むのに最適」みたいな、
具体的なその利用シーンがありありと目に浮かぶくらいだといいんですよ。
「いつでもリラックスしたい時に飲んでくださいね」だと、なかなかいつまでも飲まれませんよ。印象に残らないから。
今回の採点:50点
最初にも言いましたが、可もなく不可もない、非常に平均的なリリースですね。
大企業ほど、冒険をしません。無難にまとめようとします。その結果、尖らないんですよね。
大ヒットはしない、でも無難にそこそこ売れればいい、というマインドが日本のどの大企業にも染み付いている気がします。
これから大きく成長したいと考えるチャレンジャーの企業が、こういう商品リリースをやると、箸にも棒にもかかりません。
世の中に大きく広めていきたいのなら、商品・サービスの開発段階から、メディアの評価視点をきちんと盛り込んで、着手するべきです。
昨日、日経MJで「200円カレー」が新潟でヒットしているという記事を読みました。
これは200円カレー、というコンセプトだけで「勝負あり」なんですよ。
案の定、取材が相次いで、どんどん伸びています。
チャレンジャーなら、今までにないコンセプトを打ち出したいですね。
コンセプトの重要性についてはこの記事で紹介しています。参考にしてくださいね。